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19.王都に向けて2

 料理が運ばれて来てからは、その数々の料理に対して訝しげな視線を送る賢吾。

 肉とか野菜の類は分かるのだが、中には何か得体の知れない動物の頭部を丸焼きした様な料理がドーンと置かれている。

 その横ではドロドロとした灰色のスープだか下水だか分からない色合いで強烈な臭いを発する汁物が湯気を立てていて、思わず賢吾は顔をしかめてしまう。

 そして、大きさで言えばミニ電気ポットレベルでクラリッサが1人で食べ切れるとは到底思えない、明らかに「動いている」何かの卵が注文されていたりする様相だ。

 それ等を目の当たりにした賢吾は、用意されているフォークとナイフが全然進まない。

「……あれ、食べないの?」

「いや、食いたいんだが……見慣れない料理ばかりで戸惑ってる」

「大丈夫よ。人間が食べられない物を出す訳が無いでしょ」


 クラリッサのそのセリフを聞いて、賢吾は「頂きます」と呟いてからまず目の前にあるサラダから手をつけ始める。

 紫色のサラダは地球でも良く見かけるので、そこまでの抵抗感は無い。

「どう、美味しい?」

「ああ……」

 異世界に来てしまった最初の時は、現実を受け入れられないが為に色々とオーバーリアクションになりがちだった賢吾だが、地球で暮らしていた時は普段からリアクションが薄い方なのである。

 なので今の状況でも、このサラダが別に美味くない訳では無いので賢吾はそう返事をしただけだった。

「……何か、美味いのか美味く無いのか貴方の反応だとハッキリしないわね」

「別に食べられない味と言う訳じゃ無いからな」

 その後も肉料理に魚料理、それから見慣れぬスープや何かの生物の頭部を丸焼きしたもの等を賢吾は胃の中に収めていく。


 最終的には見慣れない料理でも、意外と食べてみると美味しかったらしい賢吾の口から「美味かった」と言うセリフが出て来たのでクラリッサも安心した。

 こうして腹ごしらえも済んだのだが、この世界に関しての話の続きはまだあるらしい。

 食べてからすぐ動くのは体調が悪くなる原因なので、少し休んでから出発するまでの間にその話をクラリッサは始める。

「話してないのは後……ああ、この世界の成り立ちかしらね」

「そう言えばそうだったな」

 食事の為に1度片づけてしまったものの、せっかくテーブルの幅一杯に広げられるサイズの大きな地図がある訳だし、食事も終わったので再度地図を広げて現時点で聞きたい事を色々聞いてみる。


「この世界の名前はエンヴィルーク・アンフェレイアって言って、大きな1つの大陸から成り立っている世界よ」

 両手のひらでザラザラと音を立てながら地図を撫で回し、続いて人差し指である1点を指差す。

「で、ここがさっきも話した通り私達のシルヴェン王国。この世界は色々な国があるけど、実質的にはその中の9つの国がこの地域の覇権を握っているわ」

「9つの国?」

 説明が良く分からないので、その辺りを賢吾はもう少し詳しく突っ込んでみる事にする。

「ええ。リーフォセリア王国、ルリスウェン公国、ソルイール帝国、魔術王国カシュラーゼ、イーディクト帝国、エレデラム公国、アイクアル王国、ヴァーンイレス王国、エスヴァリーク帝国って言う9つの国で、後は大小様々な国がこの世界には存在している構図ね」

「んー、例えば何処かの帝国が幾つかの国を束ねる存在になっているとか?」

「そうそう。エスヴァリーク帝国は大小20の国を束ねている事で有名で、領土としてのラインを地図に引く時もこうやって……」


 クラリッサは地図と一緒に荷物の中から取り出しておいた羽根ペンとインクを使い、地図にザザッと描き込みを始める。

「こうなって、こうなって……で、ああ、後はこっちか。それでここがこうなって……うん、これ位の広さになるわ」

「なかなか広いんだな」

 そのインクで提示された領土としては、世界地図の右下の部分にある陸地を半分位まで囲んでいるものだった。

「それを考えると、このシルヴェン王国って余り大きくは無いみたいだが……」

「貴方の言う通りよ。でも私達シルヴェン王国だって最近は軍備力とかに力を入れたり、他の国ともっと取り引きを増やしたりして力をつけて来ているのよ」


 国が小さい、と言う事は認めつつも領土の拡大を狙っているのは賢吾にも理解出来たが、シルヴェン王国の大きさがどれ位になるのかと言うのをもう1度確認しておく。

「それは良いんだけど、この国全体の大きさってどの位なんだ?」

「ここはね……」

 クラリッサは赤いインクを荷物の中から取り出してそれをペン先につけ、領土の範囲をまた描き表わして行く。

 ややピンクがかった赤のラインで示された領土は、賢吾の予想を遥かに下回る程の狭さだった。

挿絵(By みてみん)

「……狭くないか?」

 思わず本音がポロリと出てしまうが、クラリッサは言われ慣れているのか首を縦に振って自分の国が小さいと言う事をもう1度認める。

「だから小さいって言ってるじゃない。今のこの世界地図には9つの国の領土しかラインで描いてないけど、シルヴェン王国はこのアイクアル王国の領土の中にあるのよ。他にもこうした小国が沢山あって、それを大国がそれぞれ囲ってるのよね」

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