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195.壮大な計画

「げえっ、こんな計画が……」

「え、どれどれ?」

 色々と書類の束が出て来るので、とにかく何かの手掛かりになればと部屋の中で見つけた大きな袋に色々と詰め込んで行く賢吾と美智子。

 その中で賢吾が木製の上等な造りの机の引き出しを開けてみると、そこから衝撃的な事が書かれている書類を見つけてしまった。

「えーと……魔術都市イズラルザの地下にある魔力の供給プラントから魔力を極秘裏にこの砦に引っ張り、砦に装着されている魔導砲を起動させてまずは魔術都市イズラルザを破壊する。それからこの砦を破壊して証拠を全て消し去り、王都の地下で製造中のもう1つの魔導砲を起動させて王城の中庭から砲撃し、一気に王城を内部から近衛騎士団、そして王族もろとも破壊し尽くす……やっている事がムチャクチャね」


 そもそもそんな大規模な工事をしていたら普通にバレバレじゃないのかとか、明らかに色々と無理がありそうな計画だが、その計画書(?)の束にはまだまだ続きがある。

「それから……万が一王城を破壊し切れなかったとしても王族を抹殺する為に培養した魔物を王都の各地に潜ませておき、王族の追撃用として準備をしておく。そしてこの計画が成功した暁には、もう1度ランディード王国の復権を約束してその新たな国王としてレメディオスが就任し、覇権を握って国力を拡大していずれは世界を1つに統一するまで付き合って欲しい……」

 これじゃ計画書じゃ無くて嘆願書だよ、と何処か呆れた目でその計画書を見つめる賢吾の横で、美智子が顎に手を当てて今まで見て来たこの世界の記憶から何を計画しているのかを自分なりに口に出して確認しながら纏め始めた。

「つまり主犯はレメディオスだと。そのレメディオスはあの地下の大きな……魔導砲だっけ? それを作ったりここにも同じ様に設置されている魔導砲を起動させてそこの魔術都市を壊滅させたりして、最終的には王国を滅ぼすのが目的らしいわね」


 賢吾も頷いて続ける。

「ああ。しかもそのレメディオスが書いたと思うこの計画書の文面にある、ランディード王国って……聞いた事が無い国の名前だな。でもこの復権がどうのこうのって書き方からすると、昔このシルヴェン王国と何かがあって滅ぼされたか、それともこの世界の地図に載っていない国なのか……いずれにせよ、そのランディード王国ってのが今回の一連の事件と何か関わりがあるって事じゃ無いのかな?」

 もしそれが事実なら、もはや個人レベルで太刀打ち出来ない様なかなり大きな計画をレメディオスは企てているのがこの計画書から読み取れる。

「と、とにかくこの事を早くエリアス達に知らせないと!」

「ええ、そうね!」


 その計画書の他にも色々と証拠になりそうな物をかき集めて袋に詰め込み、さっさとこの砦から脱出するべく歩き出そうとした賢吾と美智子の目の前で、ガチャリといきなり出入り口の扉が開いた。

「!?」

「なっ!?」

 まさかまだ残党が残っていたのか!? と身構える地球人2人の前に姿を現したのは、残党でも何でも無い見知った顔であった。

「あ、やっと見つけた……君達がこれ全部やったの?」

「何だ、エリアスとエルマンか……」

 敵じゃなくて良かったと安堵して胸を撫で下ろす賢吾と美智子にそう尋ねるエリアスだが、すぐさま否定の返事をその2人がする。

「いやいや、俺達はここまでするつもりなんか無かった。1度地下に閉じ込められて、それで脱走したらこんな感じになっていたんだよ」

「は? どう言う事だよ?」


 訝しげな視線を向けるエルマンに対し、今までの事をなるべく簡潔に話し始める美智子。

「最初は順調にこの中に侵入して、見張りも退けて上手く地下まで行ったのよ。だけど事前にここに潜入する事が何処からか漏れていたみたいで、そこで待ち伏せをされていたの。そして私達は捕まって地下の牢屋に閉じ込められたんだけど何とか脱出して、階段で1階に上がってみたら既に砦の中はこの状況だったわ」

「じゃあ、この砦の中にまだ誰かが居るって事か?」

 美智子は真剣な目でエルマンに対して頷いた。

「ええ。と言うよりも私達はこの惨状を作り出した人間と出会ったのよ」

「そうなのか?」

「うん。それと1つ聞きたいんだけど、貴方達……ここには床の矢印を目印にして来たの?」


 美智子の質問にエルマンとエリアスはお互いに顔を見合わせ、そして頷く。

「ああ、俺達は床に矢印が描かれていたからおかしいな、と思ってそれを辿って来たよ」

「それで俺とエルマンでここまで来たら君達が居たんだけど……あれも君達がやったんじゃないって言うの?」

「そうだよ。そもそもあの沢山の死体は武器で切られていたし、俺達はこれ位しか武器が無いからな」

 そう言いながら賢吾が懐から美智子の自作のノコギリを取り出して見せれば、エリアスもエルマンも納得した表情を見せた。

「確かにそんなんじゃ、あれだけの傷をつけるのは到底無理な話だろうな」

「で……ここに来るまでのその矢印の話と大量の死体を君達がやったんじゃないとしたら、一体誰がやったんだい?」

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