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194.ヒント

「せっかく俺がヒントを用意したと言うのに、ここでああだこうだ話していたら話が進まないだろう」

「ん?」

 ヒントってまさか……と床の矢印を再度見てから茶髪の男にまた目を向ければ、彼は無言でそして真剣な目で頷く。

「ヒントって何の事よ? これに沿って行けば何かが分かるって事?」

「少なくとも私はそうしたつもりだがな。それにあの茶髪の男が時間が無い、時間が無いってしきりに言っていただろう? だったら早く行動した方が良いんじゃないのか?」

「えっ?」

 目の前に居る中年の男とはまた違う茶髪の男、そして時間が無いと言う発言内容からすると思い当たる人物はただ1人。

「も、もしかしてエリアスに会ったのか?」

「ああ。退屈そうにしていたな。待ちくたびれているだろうからここの中で成すべき事をして早く行ってやれ。邪魔者は俺が全て片づけておいたからな」


 何処か労わるかの様な口調だが、今の話からするとこの男はエリアスやエルマンが言っていた膜のバリアを抜けてこの中に入り、更にこれだけの騎士団員をこの短時間で殺せる実力を持っている事になる。

 その考えをまずは美智子が口に出し、戸惑いを全面に出した目で男に尋ねる。

「あ……貴方、一体何者なの?」

 実際これだけの騎士団員を相手にして、男は返り血でびっしょり濡れているがその身体には数か所の傷しか負っていないレベルだ。

 更に言えば何も武器を所持していない事から、恐らくは素手でこの状況を作り出したか、あるいは騎士団員達から武器を奪い取ってそれで対処したのだろうと察しが付く。

 考えれば考える程この男の実力が未知数だと思えてしまうので、頭がこれ以上混乱する前に賢吾も美智子も正体を聞いておきたかった。


 それに対し、男は実にシンプルな答えを返した。

「俺は神だ」

「え?」

 男がそれだけ言った途端、室内だと言うのに突風が吹き荒れて思わず賢吾も美智子も顔を腕で覆う。

 そして風が収まって目を開けてみれば、既に男の姿は何処にも無かったのであった。

「き、消えた!?」

「私は神……信じたくは無いけど、この現状を見れば……」

 いきなり姿を消してしまった男が立っていた場所と、再び静かな空間が訪れた通路の中を見比べて賢吾と美智子はうろたえる。

 だが、あの男の言う通り確かに時間がかなり経過しているのでさっさと行動するべきだろうと足を動かし始める2人。

「あの人……俺は神だって言う前に邪魔者は俺が全て片づけておいたからって言ってたけど、それが本当ならこの中の騎士団員はもう既に全員息が無いって事になるんじゃないの?」

「そうかも知れないな。それにわざわざこうして足元に矢印を道しるべに残してくれたって事は、そこに行けって言うあの男からのメッセージなんだろう。だったら、今はこれしか俺達が進む道は無いだろうから素直に行ってみるだけだ」


 男の残したヒントの矢印に従って進んで行くと、またもや道が左右に分かれていたのでまずは地下に繋がっている右の通路へと足を進める。

 その先には、自分達が待ち伏せに遭って捕まってしまったあの地下の部屋があった。

 どうやら最初にこの部屋に入った場所とは両側から繋がっていたらしく、自由に左右のドアから行き来が出来る様になっている構造だ。

「ここも酷いな……」

 最初に待ち伏せしていたであろうあの騎士団員達が、部屋のあちこちで血まみれでピクリとも動かなくなってしまっている。

 その部屋の奥にあるサーバーシステムの様な装置についている赤いボタンを押してみれば、シューンと音がして何かのシステムが停止した様だ。

「これでバリアが解除されたのかしらね?」

「だと良いが。それじゃ一旦戻って今度はもう1つの通路に進もう」


 そのもう1つの通路の先は階段になっており、上ってみるとまた矢印が地面に血で描かれている。

 今度は道が分かれると言う事は無く、どうやら砦の最上階の部屋に続いているらしいので2人は一目散に矢印に沿って進む。

 そしてまた階段を上ってその先の通路を進んで辿り着いたのは、豪華な装飾がされている上等な扉の前だった。

「ここが最上階らしいな」

 邪魔者は全て排除したとあの茶髪の神(自称)の中年の男は言っていたが、もはや癖になってしまっているのかゆっくりとその扉を開けて中の気配を確認する。

 その部屋の中では、今までの騎士団員達とは明らかに違うレベルで豪華な服装をしている男が既に死んでいる事から、この砦に常駐している指揮官か将軍かと言う所だろうと賢吾と美智子は察した。

 そしてここで矢印が終わっているので、あの茶髪の神(自称)はここを目指して進めと言うヒントを与えて去って行ったらしい。

「ここに何かがあるって事で良いのかな」

「どうやらそうらしいわね。色々とあの男は胡散臭いし敵か味方かも分からないけど、こうやってヒントを与えてくれたって事はこの部屋を調べて何かを探せってメッセージでしょ」

 だったらさっさと探しましょう、とあのレメディオスの執務室の時と同じく色々と部屋の捜索に手を付け始めた2人は、この後に衝撃的な物を発見する!!

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