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191.美智子、本領発揮

 まずはもう1度、何か使えそうな物が無いか2人で牢屋の中を調べてみる。

 ベッドはボロボロで塗装が剥げて来ており、大きな板として表面が剥がれたのを無理やりクギで留めているらしい。

「本当に脱出ゲームみたいだな……」

「あ、これ使えるかも」

 まず美智子が見つけたのが、部屋の隅に置かれている金属製のトレイ。

 食事を運ぶ為の物らしいが、かなり使い込まれていてこれもまたベッドみたいに塗装の一部が剥げてしまい今にも剥がれてしまいそうだ。

 それから木製の吊りベッドには、申し訳程度の寒さ対策としてトレイやベッドと同じく汚くてボロボロでカビくさいシーツを発見。

 その吊りベッドの留め具のクギも突き出て危ないので、これ幸いとばかりに外してみる。

 後は天井の片隅に、火のついたロウソクを取り付けている燭台がぶら下がっている。

「今の所、使えそうなのはこれだけらしいわね」

「何とか脱出出来ないもんかなー……」


 美智子は集めた色々な材料を見てしばし考え込む素振りを見せつつ、幼馴染に牢屋の外に見張りが居ないか見て来て欲しいと頼む。

 要望に従って賢吾が牢屋の外を見に行ってみるが、通路の奥に眠そうにあくびをして気の抜けた警備をしている騎士団員しか居ない。

「おい美智子、俺達完璧に馬鹿にされてるみたいだぞ」

「え?」

「普通は牢屋の傍に見張りを立たせるだろ? でも俺達を捕まえて嬉しいのか通路の奥に1人しか居ないぞ」

「……ああ、それなら行けそうね」

 何かを納得した表情を見せ、ニヤリと笑った美智子がアクションを起こす。

 まずはロウソクの明かり位しかこの場所に無い為、小さくても良いので明かりを作る事にする。


 しかしロウソクのある燭台はなかなか高い場所に設置されているので、賢吾に頼んでボロボロのシーツの一部を引きちぎって布切れにして貰う。

「これで良いか? 余り大きくちぎれなかったからもっと大きく……」

「ううん、逆にこの方が都合が良いわよ」

 そう言うと、美智子は次にベッドの板の一部をなるべく細長く賢吾と手伝って剥がす。

 その板は人が1人寝られる縦のサイズなので、少なく見積もっても1m60cmはあるだろうか。

 これだけあれば十分なので、美智子はロウソクの下でその板の先端にシーツの切れ端をグルグルと巻き付けて結ぶ。

 それから布の部分を突き出す様にして板の先端をロウソクの火の部分に近づけ、着火させてみると「たいまつ」の完成だ。

「明かりは出来たわ。余り大きく作っちゃうとこの火の明かりで色々やってるのが外にバレちゃうから小さくちぎってくれて助かったわよ」

「お、おう……」

「じゃ、これ持ってて。次のステップに行くわよ」


 偶然の産物で作り出されたそのたいまつを賢吾に持たせ、手元を照らして貰う様に指示した美智子は次に金属製のトレイを手に取った。

 そのトレイの剥がれかけている金属部分をグイっと引っ剥がし、1枚の小さな金属の板にする。

 それに今度はさっきのベッドの板を留めていたクギを押し付け、隙間が出来ない様に細かく中心に穴を開けて行く。

「リズム良く……うん、こんな感じかしらね」

 クギを使って中心に縦のラインを作った美智子は、それをインスタントラーメンについている火薬とスープの袋の切り取り線の様に中心から折り曲げてパキッと折った。

 その断面を見てみると上手くギザギザした刃が出来ているので、美智子は即席の「ノコギリ」を作り出したのだ。

「おー……」

 思わず賢吾も関心。

 昔から手先が器用だとは知っていたが、まさかこの場面でそれが活かされる事になるとは思っていなかった。


 その2つになったノコギリを美智子が1本だけ持ち、牢屋の扉に掛かっている南京錠を外しに掛かる。

 たいまつは部屋の隅に明かり代わりに置いておき、賢吾は通路の先の見張りの様子に気を配る。

「大丈夫。完全に居眠りしてる」

「分かったわ。……ええと、ここを切れば……」

 ギコギコと慎重に、見張りが起きない内に、しかし音を余り立てない様にと言うシビアな条件の中で美智子は少しずつ南京錠を切って行く。

 その間に賢吾はベッドのシーツを再びちぎって端と端を縛ってロープを作り、敵に遭遇した時の為に武器を作っておいた。

 それから懐にもう片方のノコギリを隠し持ち、同じくいざと言う時の武器として使える様にしておく。


 後は特に無さそうだし、美智子がギコギコと切っていた南京錠も何とか終わった様なのでさっさと脱出しに掛かる2人。

「良し、開いたわ!」

「なら行くぞ!」

 火事になったら困るのでたいまつを消してから脱出した2人は、まず居眠りしている騎士団員が脱獄に気づかない様にする為にノコギリを使って首を掻き切って永久に眠らせる。

 その騎士団員のそばにあるドアに張り付き、ドアの向こうの様子を目と耳と気配で確認。

「今度は大丈夫かしら?」

「ああ。見張りはこっち側だけみたいだし、このドアの向こうは上の階に続く階段になっているから大丈夫だ」

 でも、見張り交代の騎士団員がもしかしたら来るかも知れない。

 そこで見つかってしまえば今までの脱獄の為の苦労全てが水の泡なので、そうならない内に……とさっさと2人はドアを開けて階段を上り始めた。

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