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190.現実の脱出ゲーム

 それから5分後、地球人の2人は地下の牢屋に投獄されていた。

「はぁ……」

「ふぅ……」

 もはやため息しか出て来ないこの状況。

 上の方では今頃エルマンとエリアスが暴れ回ってくれていると良いな、と思いながらこの状況をどうやって脱するかを考えていた。

 そもそも何故賢吾と美智子がこんな状況になっているのかと言えば、それは5分前にまでさかのぼる。

「本当にスムーズ過ぎると思ったのよね……」

「……まさか待ち伏せされていたなんてな」

 遠い目をしながら牢屋の天井のドス黒いシミを見つめる2人の頭に、その時の光景がフラッシュバックして来た。


「良し、この先がその部屋だな」

 相変わらずスムーズに進んで来た2人はようやく最深部まで辿り着く事に成功したのだが、待ち伏せでもされていたら嫌なのでまずはドアを少しだけ開けて用心深く部屋の中の様子を確認する。

 しかし、その部屋の中は照明が落とされて真っ暗だった。

「暗くて良く見えないな……」

「本当ね。でも地図で言うとこの部屋にその魔力の膜を解除する為のスイッチがあるって書いてあるわよ」

「うーん、とりあえず踏み込んでみるか?」

「ええ……」

 スマートフォンをライト代わりにして、用心深く慎重にゆっくりと中に踏み込む賢吾と美智子。


 だが、その判断が全ての間違いだった。

「今だ!!」

「っ!?」

 何者かの叫び声が聞こえたかと思うと、突然頭の上にわさわさした感触の何かが降って来た。

「うっぷぇ!? な、何よこれ!?」

 身動きが取り難くなるこの感触は、はるか昔に何かで経験した事が2人共にある様な気がした。

 しかし今はそんな事を思い出している場合では無い。

 だからこそさっさとこの状況から抜け出そうと思っていた矢先、突然部屋の照明が点いた。

「うっ……」

「え……え!?」

 照明の眩しさに思わず目をつぶって腕で顔を覆った2人がその後に見た光景は、心の中で「終わった……」と即座に呟いてしまうレベルのものだった。


「よおし、これで掛かったな!」

「後はレメディオス団長を待つだけだ!!」

 部屋中に待ち受けていたのは、事前にレメディオスから連絡を受けて2人を誘い込む為に色々と準備をしていた騎士団員達だったのだ。

 そして賢吾と美智子の上に降って来たのは黒いネット。

 まだ幼稚園だか小学生の時だったか忘れてしまったが、運動会の障害物競走でこう言うネットの下を潜って競争していた記憶が蘇ったのはそのせいだったのだ。

 だが、今の状況は競争では無く捕縛されているのでもう逃げられない。

 そのまま数の暴力には勝てないまま、ハンドメイドのブラックジャックもポケットのスマートフォンも全て没収されてしまい同じく地下にある牢屋へと放り込まれた。


 そしてこの囚われの身になってしまったので、2人は自分達の油断を嘆いて後悔していた。

「これじゃあの船の時と一緒だぜ……」

「でも、まだ縛られてないだけ良かったでしょ」

「そりゃそうだけど、ここに使えそうな物は今度は無さそうだぞ?」

 牢屋の中を見渡してみると、排泄用の穴とボロボロの吊りベッドが1つ。この牢屋はどうやら1人用らしいので、待遇もかなり劣悪な環境らしい。

「うーむ、でもここからどうにかして出ないとスマフォもあの吸魔石……だったか? あれも取られたままだしそもそも膜のバリアも解除出来ていないし、全然ミッション失敗だろう」

「そうねえ……」


 何故ここで騎士団員達が、それも賢吾と美智子の手で見張りを既に殺されていると言うのにその2人を殺さないのかと言うのはそのレメディオスの指示を仰ぐのが必要だかららしい。

 だが、それよりも確実に自分達を生かしておきたい理由がレメディオスにはあるのだろうと賢吾も美智子も内心では思っている。

「あの隠し通路を発見されてその通路の先で色々と秘密を探られて、屋敷まで全焼させられた上にロルフとクラリッサの正体を見破って、俺達がここまで逃げて来たと言う事で……絶対俺達を自分の前に引きずり出すつもりなんだと思うぞ」

「うん……私もそう思うわ。騎士団員ってのはプライドが高いってあの騎士団の総本部で暮らしていた時に聞いた事があるし、元々近衛騎士団員だったレメディオスはその傾向が人一倍強いみたいだし? で、近衛を辞めたとは言えまだあの人は騎士団長じゃない? となればプライドの高さは継続される可能性が高いから、自分の手で私達を殺すって言う願望を持っても不思議じゃないわよ」

「そんなに冷静に物騒な事を言われると、かなり不安になるから止めて貰えないかな……」

 何にせよ、レメディオスがここに来る前にさっさと逃げなければ真面目に殺されてしまう未来しか見えないので脱出を図る。

 しかし、ここからどうやって脱出すれば良いのか今の2人には簡単に思いつかなさそうである。

 パソコンやスマートフォンで簡単に遊べる密室からの脱出ゲームが現実にやって来てしまったらしいが、それにプラスして賢吾と美智子には時間が無い。

 早くしなければここにレメディオスが来てしまって、後は処刑までの道を一直線に進むだけなのでまずは何か使える物が無いかを2人は探し始めた。

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