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185.手掛かりの心当たり

「……っ!?」

 意識を失ってしまった賢吾が目を覚ますと、そこは見慣れないテントの中だった。

「あっ、賢ちゃん!」

「あ、あれ……美智子? ここは何処だ?」

 キョロキョロと周りを見渡し、自分が意識を失う前とは明らかに違う状況に置かれている事に気が付いた賢吾は美智子に状況の説明を求める。

 しかし、美智子も訳が分からないらしい。

「ううん、私もさっき目覚めたばかりだから分からないわ。テントの外は森になっているみたいで、すっかり夜になっちゃってるわ」

「そうか……とりあえず夜の森は危険だから、今はここでじっとしてここで夜が明けるのを待とう」

「そうね」

 大自然の、しかも異世界で魔物が闊歩している場所を生身の人間2人で歩く事程危険なシチュエーションは無いので、大人しくここは夜が明けるのを待ってから行動する事に決める。


 だが、そこでふと賢吾が気が付いた。

「……おいちょっと待て、そこにあるランプって誰がつけたんだ?」

 賢吾が指差す先には、地面に無造作に置かれているガラス製のランプが1つだけポツンと。

「ああこれ? これは私が目覚めた時からここに置いてあったわよ。この状態で」

「って事は、誰かがここに居たって事になるんじゃないか?」

「あ……そうか」

 寝ぼけていてどうも頭が回っていなかったらしい美智子もその事実に気が付く。

「そうなると、私達を誰かがここまで運んだのよね?」

「だな。それにしてもあの時、俺達が気絶した後に何があったんだ?」


 今の時点では色々考えられるが、最も可能性が高いのは騎士団員に拘束されて何処かに放置されてしまったケース。

 しかし、拘束されるにしては妙に待遇が立派な気がするので違和感がある。

 次に考えられるケースとしてはエリアスに助け出されてここまで連れて来られたのが今の状況、と言うものだがエリアスが1人であの広い施設内を進んで来られるとは余り考えられなかった。

 幾らワイバーンがついているとは言え、自分達が魔術師を脅して放置した上に騎士団員に虚偽の報告までして地下室まで行ったからこそ、あの後は絶対自分達の存在がばれた上に血眼になって騎士団員達が自分達を探し回っていたのだろう……と推測する賢吾と美智子。

 気絶してしまったので結局それは分からずじまいなのだが、ここでもう1つの事実に美智子が気が付いた。

「……あれ?」

「どうした?」

「これ……カラスの羽根よ。あの戦った時にもしかしたら私のシャツにくっついたのかも」


 それを聞いて賢吾がもう1つのケースを考えてみる。

「もしかしてなんだけど、あのカラスの男が俺達を助けてくれた……?」

「そ、それが本当なら一体あのカラスは何をしたかったのかしらね?」

「俺達の実力を試すとか言ってたけど、ポジション的に何処の組織の所属になるんだ?」

 以前あのカラス鳥人と出会ったのはエリアスの屋敷。

 そのエリアスの屋敷では何とか彼を倒して難を逃れた訳だが、騎士団の総本部に戻った時にレメディオスに聞いた時にはカラス鳥人の存在は知らなかった。

 エリアス追撃部隊の選考会にも参加していなかったらしいし、とすればあの男のポジションはエリアスの仲間なのかも知れないと考える美智子。

「うーん……もしかしてエリアスの仲間とか?」

「そうなのかな……?」

 とにもかくにもあのカラス鳥人が関わっているのは可能性としてかなりあると思うのだが、最初エリアスの屋敷の時も今回の研究施設の時も、急に現れたと思ったら襲い掛かって来るのでタチが悪い存在だ。


 そして2人にとって、カラスと言えば忘れられない出来事があった。

「ねえ、まさかと思うんだけどあのカラス鳥人って……最初に私達に襲い掛かって来たあのスマートフォンを強奪した、あのカラスと何か関係があるのかしら?」

「それは……偶然じゃないのか……?」

 確かにカラスの繋がりはあるけれど、でもファンタジーな世界だからカラスの鳥人が居ても不思議では無いと賢吾は考える。

 しかし、美智子はそれ以外にもう1つ共通点があると言う。

「でもさ……行動が似てる気がしない?」

「行動?」

「うん。最初に私達がカラオケに行く前に出会ったあのカラスは、いきなり空から現れてスマートフォンを掻っ攫って行ったでしょ。そして今回のカラスのあの男は、2回ともいきなり襲い掛かって来たじゃない? 2回目はちょっとセリフを挟んだけど、それでもいきなり実力を試したいとか言ってさぁ。そう考えてみると、何だかとても無関係には思えないのよねぇ……」


 そう言われてみれば賢吾も何だかそんな気がする。

「じゃあ、もしかしたらあの男が地球に帰る手掛かりを持ってるかも知れないってのか?」

「それは分からないけど、考えてみればこの世界に来てからカラスって見た事が無い気がするのよ」

「……見落としてるだけかも知れないが……」

 しかし、あの男が2回もこうして自分達の前に現れて襲い掛かって来るのは何かしらの意図があっての事だ、と賢吾も美智子も考える。

 騎士団の回し者かも知れないし、また別の勢力のメンバーかも知れない。

 あの男を捕まえて何かしら地球に関係する手掛かりを見つけられれば良いのだが……と考えていると、テントの外から翼が羽ばたく音が聞こえて来た。

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