184.ま~だやるのぉ~?
賢吾と美智子は左右に分かれて的を絞らせない様にしながら、カラス鳥人の出方を窺う。
なのでカラス鳥人はまず、思いっ切り賢吾に肉薄し彼の腹目掛けてミドルキック。
「ごっ!」
だがカラス鳥人にもそのキックの隙をついて後ろから美智子が体当たりして来たので、その体当たりを食らったカラス鳥人は吹っ飛んだ。
「うおが……」
体当たりされて、地面が剥がれて小さな段差になっている場所に運悪くつまづいたカラス鳥人は転んで腹を打ち付ける。
そんなカラス鳥人の後ろでは賢吾と美智子が、彼が立ち上がって来るのを待ちつつ話している。
「な、何故ここにこのカラス男が居るの?」
「俺に聞かれても困るけど、ここでこの男から色々聞き出せば良いだろう」
「分かったわ賢ちゃん!」
だからと言ってこの状況で「はい降参します」と言う訳が無いので、カラス鳥人は腹をさすりながら2人に向き直った。
「ふーむ、それなりにチームワークはあるのか」
「幼馴染だからね。それよりも貴方は何者なのよ!?」
「まだ教えられないな」
「なら力尽くでも聞き出してやるぞ!!」
賢吾と美智子は再びカラス鳥人に向かう。
「はっ!」
先に向かって行くのはさっき彼に蹴られた賢吾だったが、今度はカラス鳥人が武器を使わずスライディングで一気に賢吾の足元に飛び込み、立ち上がりつつ前蹴り2発で賢吾を転ばせる。
「ぐう!」
一方からは美智子が左ミドルキックを放って来たが、そのミドルキックはしっかりと両手でカラス鳥人がガード。
それでも美智子は柔らかい自分の股関節を使って、果敢にキック主体の攻撃で攻める。
「りゃっ!」
今度はハイキックが来ると察知したカラス鳥人は、そのハイキックを屈んで避けつつ、足のバネと背中の翼で跳び上がり、更にさっきのお返しで左ハイキックを美智子の右側頭部に食らわせる。
そこから鳥人の浮遊体勢を活かした空中からのキックで美智子に追い打ちを掛けようとしたカラス鳥人の横から、賢吾がスピードのあるジャンピングニーを放って来て空中から叩き落とされてしまう。
「ぐほっ……!!」
カラス鳥人は地面に叩きつけられた。
だが、そこそこの高さがあると言ってもそこまで高くは無い部屋で、しかも攻撃しやすい低い位置から落ちたのが幸いし、素早くリカバリーして立ち上がる事が出来たカラス鳥人。
そんな彼の腹に今度は美智子の左キックが入る。
「ぐっ!」
怯んだカラス鳥人に対して美智子はタックルで追い打ちをかけようとしたが、それをカラス鳥人は男と女の体格の違いで逆に止めてやる。
「がっ!?」
カウンタータックルで地面にうつ伏せに倒れ込んだ美智子を見た賢吾は、美智子に意識が向いているカラス鳥人に足払いを仕掛けて素早く転ばせる。
「ぐう!」
その間に美智子も体勢を立て直して再びカラス鳥人に向かう。
カラス鳥人はなるべく賢吾か美智子のどちらかと密着する様にして、自分に迂闊に攻撃を繰り出せばどちらかもう一方の相手が巻き添えになる様に仕向けて戦う。
案の定、賢吾になるべく密着する様に戦うカラス鳥人に迂闊に攻撃を繰り出せない美智子と、密着して来られてなかなか間合いを取れない賢吾の構図が出来上がっていた。
上手く攻撃を受け流してブロックし、ちょっと食らいつつもカラス鳥人は後ろから攻撃をして来る美智子を後ろ蹴りで腹を蹴ってぶっ飛ばす。
次に、前から来る賢吾の攻撃をブロックしてからその賢吾の右腕を左腕で挟んで攻撃出来ない様にしてから、空いている右腕で全力の肘落としを彼の頭に入れた。
「ぐお!!」
怯んだ賢吾に今度は膝蹴りを入れ、後ろから立ち直って来た美智子に向けて突き飛ばして、止めに2人を纏めてミドルキックでぶっ飛ばす。
「うぐぅ……」
美智子は倒れ込んだが賢吾は何とか持ち堪える。
カラス鳥人はそんな賢吾に接近して、右の肘を頭に何度も何発も気絶するまで賢吾の頭に落とし続けるのであった。
「がっ!」
ドサッと倒れ込んだ賢吾を見て、何とか起き上がった美智子が再び向かって来たが、今度は自分から美智子の腹目掛けて飛び込みつつ腹に膝蹴り。
更に頭を掴んでから3発膝蹴りを入れ、3発目で美智子が後ろによろけた所に回し蹴りを右足で彼の側頭部へ。
「ぐふっ!」
その衝撃で思わず地面に四つん這いになった美智子を、カラス鳥人はロングバトルアックスの柄の方で殴りつけてこのバトルにフィニッシュを決めた。
「……まだまだだな」
何の感情も罪悪感も持たない淡々とした口調で、簡潔に感想を述べるカラス獣人は自分の背中にバトルアックスを引っ掛けて持ち運べる様に固定した。
なかなか良い戦いをしていたものの、最終的なリザルトはカラス鳥人の勝ちで終わったこの地下室に近づいて来る足音があった。
「こっちだ、急げ!」
「出入り口を固めろ!!」
大勢の声にカラス鳥人が反応し、続いて地面に倒れてまだ呻いている2人を見下ろして頷いた。
(今ここに向かって来ている奴等を片付けて、後は外の連中に任せるとしよう)
カラス鳥人はその手に闇のエネルギーを凝縮した球体を生み出し、地下通路の突き当たりに向かって投げつけた。
「ぎゃああっ、な、何だぁ!?」
「め、目が見えねえ~っ!!」
通路に分散した闇のエネルギーを食らって悶絶する騎士団員を確認し、カラス鳥人は賢吾と美智子を両脇に抱えて低空飛行で脱出を始めるのだった。