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179.地図の意味

 そのままワイバーンでの飛行を続ける事およそ15分で、3人は1つ目の目的地に辿り着いた。

 地図で言えばあの南西の坑道の更に奥地になるらしい。

 初めてここに辿り着いた時は既に夜になっていたので一旦野宿で夜を明かした記憶があるものの、今回はまだ夕方ちょっと手前なので時間にはまだ余裕がある。

 しかも今回向かうのは南西の坑道では無く、その更に南側にある何かの施設らしい。

「ひょっとしたらこれ、国境ギリギリの場所じゃないのか?」

 広げた地図を指差して賢吾が訪ねれば、賢吾の左前に立っているエリアスは彼の方を振り返らずに肯定した。

「そうだ。そしてこの施設に入るには恐らく君達の力が必要になるんだと思う」

 そう言うエリアスの目の前には、得も言われぬ威圧感を纏っている大きな石造りの建物があった。

「ここって何の施設だ?」

「ここは王国が管理している、魔物の培養施設だよ」

「え?」


 魔物の培養と言えばあのレメディオスの屋敷の一角でも色々とやっていたみたいだったが、目の前の4階建ての大きさの建物からしてみるとかなり大掛かりな作業を行っているらしいと見える賢吾と美智子。

「ま、魔物の培養って……そう言えばあの屋敷で手に入れた資料にもそんな事がチラッと書いてあったけど、まさかそんな事を王国が主導しているって言うの?」

 てっきり第3騎士団が主導していると思っていた美智子だったが、内容の修正がエリアスから入る。

「厳密に言えばそれは少し違う。主導しているのは国王に反感を持っている者達だ」

「反感って……じゃあ、反乱を企てているって事なのか?」

 いわゆるクーデターって奴か、と賢吾が聞けばエリアスは首を縦に振った。

「そうだよ。その為にここで魔物を培養しているんだ。国境ギリギリの所なら人目に付き難いし、そもそも王国騎士団の団員達が絡んでいるんだから幾らでも虚偽の報告をして「異常無し」ってする事も出来るからな。俺もあの地図が無かったらこんな場所に魔物を培養する施設があるなんて気付かないままだっただろう」


 しかし、それとは別に気になる事が地球人の2人にはあるので美智子が聞いてみる。

「それはそうとして、何でここに私達を連れて来たのよ? その茶髪の男が言うには私達の協力が必要だって話だったけど、まさかこの施設の話をしているのかしら?」

「そう……だと思う」

「だと思うって……何だか曖昧な返事だな」

 あきれた表情になる賢吾だが、わざわざ自分達の協力が必要だと言い残して去って行くと言う事は良いにせよ悪いにせよ、何かの意図があるのかも知れない事は確かだろう。

「もしかして俺達の存在が目障りだから、ここで待ち伏せして一気に潰しに掛かるとか?」

「それとも、私達に本当に協力して貰いたいからここまで連れて来る様に言い残したとか……?」


 2人揃ってエリアスに疑問をぶつける賢吾と美智子だが、ブンブンと首を横に振って拒絶反応を示すエリアス。

「俺に聞かれても分からないよ。でも、連れて来た理由の推測なら出来ない事も無い」

「へー、じゃあ言ってみてよ」

 意味も無く連れて来たんだったらその茶髪の男はぶっ飛ばされても文句は言えないかもね、と心の中で思いつつ美智子はエリアスの理由を賢吾と一緒に聞いてみる事にする。

「君達に見えているかどうか分からないけど、あの建物には緑色ドーム状の膜が掛かっているんだ」

「膜?」

「……その反応からするとやっぱり見えていないみたいだね」

 エリアスの言う通り、そんな緑の膜なんて地球人の2人にはさっぱり見えない。

「えーと、その膜が建物を覆う様に掛かっているって言うのか?」

「まさしくその通りだよ、異世界の人間。あの膜は外部からの侵入者を完全にシャットアウトする為に防壁魔術で張られているんだろう。膜が壁となって施設を守っているから外部の攻撃も防いでしまうし、今の俺がその膜の先に進もうとしても膜をどうにかしないと無理だろうな」


 そこまでエリアスが言った時、賢吾がその先の言いたい事に気が付いた。

「そうか、俺達にはあの膜は見えていないから、もしかしたら膜の効果もまるで無い。だから俺達に先に中に入って貰って、膜を張っている原因を突き止めてそれを潰して来て欲しいって事……か?」

 その賢吾のセリフに、エリアスは満足そうに頷いた。

「今までの経験からやっぱり分かっているみたいだね。最初に俺と出会った時に、俺は姿を消す魔術を使っていたけどそれが君には効果が無かった。それからあの女頭目が魔物を使って待ち伏せをしていたって前にイルダーから聞いたけど、その時も同じく魔物の姿がハッキリ見えていたそうじゃないか」

「はいはい、つまり私達にまた泥臭い事をしろって言うんでしょ?」

 若干投げやりな態度で美智子がそう言うものの、既に危険な目なら何回も遭って来ているしもう騎士団の元に戻れない以上、自分達に選択肢は無いと言う事だった。

 そして最後に、地図の印について賢吾が思った事を呟く。

「その地図の印の1つがここなら、残りの2つも同じ様な事になりそうな気がするな……」

「それに関してはイルダーとエルマンをそれぞれ調査に向かわせているから、何かあれば鷹を飛ばして貰う様にしている。それじゃ頼んだよ」

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