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169.宝石の謎

 ドアの先はまたもや階段になっており、今度は上りだ。

 そして気がつくと、賢吾がポケットに入れていたその宝石の輝きがさっきより増している気がした美智子。

「あれ、さっきより賢ちゃんのそのポケットが輝いてる気がするわ」

「本当か?」

「うん。こっち側に来てから強くなった気がするんだけど、気のせいかしらね?」

 もしかしたらもっと場所を移動すれば何かまた宝石に反応があるかも知れない、と考えた2人は再び足を動かして階段を上り、宝石の光を頼りにして反応のある場所を探す手段に出た。

 が、その手段はすぐに行き止まりに当たってしまった様である。

「……あれ?」

「え、ここで終わりなの?」

 階段を上がった先に設置されているドアをそっと開けてみると、人気ひとけの無い執務室の様な場所に出た。

 それこそ、あのレメディオスの執務室に雰囲気が似ている気がする。


 執務室の中には両開きのドアがあり、そこをゆっくりと開けてみると最初に出たあのエントランスの階段に繋がっているのが分かった。

「あれ、ここって最初の?」

「と言う事は俺達、あの地下をずーっと進んで来て最終的に戻って来たって事になるのか」

 自分達の歩いて来たルートと部屋の位置関係が掴めたのは良いが、問題はまだある。

 ポケットの中に入っている宝石が何を意味して輝いているのかと言う事と、この執務室(?)の中にも何かがあるかも知れないので色々と探す、と言う事だった。

 だが、宝石の事に関してはさっぱり分からない賢吾と美智子。

「何か、国宝がどうのこうのって話を聞いた気がするんだよな」

「あー、何かそれ言ってたわね……あの2人」


 とにかくまずはこの宝石がもっと輝きそうな場所を執務室内で探すものの、それでも光が強くなって行くポイントは見つからない……。

「おかしいなぁ」

 そう言って首を傾げる賢吾に、美智子がこんな提案を。

「なぁ、1回下に戻ってみないか?」

「え? うーん……良いけど」

 下に戻ってみれば宝石の輝きが弱くなるかも知れない。

 何故なら美智子曰く、あの大部屋での戦いを終えて階段を上り始めてから輝きが増した、と言うのだからその逆のルートを辿れば輝きが弱まる筈だと賢吾は考えた。


 しかしまだ敵が居るかも知れないので、美智子にはここの部屋の探索を出入り口のドアのカギを掛けた上でやって貰い、賢吾はその間に下に戻って確かめる事にする。

 2人一緒に下に戻って、復活していた敵にやられた……なんてのは余りにもお粗末過ぎる未来だからだ。

 そうして下に戻って来た賢吾は、ポケットの中の様子を確認しつつ今度は階段の前にある扉のを開けて進んで行く。

 すると、ポケットの中の宝石の光が足を進めるに連れて段々と強くなる。

「お……お? こっちか!」

 だが、その予想は合っている様で間違っている様だ。

 未だに敵がうめき声を上げている室内を一通り回ってみたのだが、足を進ませている内にその違和感に気が付き始める賢吾。


(あれ、ちょっと待てよ……これって場所は関係無いのか?)

 一通り室内を歩き回ってみて、確かに宝石の輝きは増している。

 だがそれは場所では無くて、何か別の要素が絡んで輝きを増す原因となっている様なのだ。

 一体何なんだろう、と思いながら更に部屋を回ってみる賢吾だが、その時また1つの違和感を覚える。

(……うめき声がさっきよりも聞こえなくなっている……?)

 部屋に戻って来た時は多数の敵のうめき声がまるでゾンビ映画の様に聞こえて来ていたのだが、自分が部屋を一通り回ってみた後には明らかにその声が小さくなっているのに賢吾は気が付く。

 それに、倒れている敵の顔色にも生気が無くなって来ている。

(お、おいおい……ちょっと待て。俺達ってそこまでのダメージを負わせたつもりは無いんだが……)

 棚の下敷きにしたり顔面を壁にぶつけたとは言っても、流石に生気が無くなる様なダメージの与え方はしていない筈だとさっきの戦いを思い出して悩む賢吾。


 なのに、自分がここに戻って来てから明らかに倒れている敵達の様子がおかしくなっている。

(何だ、何が原因なんだ?)

 自分のしている事と言えばこの部屋の中を歩き回っているだけの筈なのに、それだけでどんどん生気を失う様な事になるのだろうか?

(俺が歩き回れば回る程、この倒れている敵達から生気が無くなって行く。だけど今まではこんな事は無かった)

 だとすれば、考えられる原因はこのポケットに入っている赤い宝石。

 その宝石の輝きがどんどん増しているのであれば、明らかにこの宝石と生気が無くなるのが関連しているとしか思えない……とまで考えて、ふっ……と賢吾の中に1つの予想が生まれる。

(ま、まさかこの宝石って……!?)

 その仮説が正しいとすれば、もしかしたら自分はとんでもない物を拾ってしまったのかも知れない。

 だったら証拠として持って行きたい所だが、この宝石が「他人に害を与える国宝」だとするのならここで投げ捨てて行くのが得策の様な気がしないでも無い賢吾。

(どうすれば良い……どうすれば!?)

 その迷いが、賢吾があの男を抱えて入って来たジグザグの通路から突然現れた人影に気が付くのが遅れる原因となってしまった。

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