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166.もうパンパンですわ

 バチィィィッ!!

「うはっ!?」

「きゃあ!?」

 久し振りに味わった、あの光と音とそして痛みの謎の現象。

「久々に来たわね、これ……」

「と言う事は、身に着けるのはやっぱり駄目みたいだな」

 そろそろこの現象がどう言う時条件で発動するのかを2人は知りたいのだが、あいにくここは敵の本拠地の真っ只中なのでそれを教えてくれそうな人物は居なかった。


 しかし、あの部屋で見つけたこの宝石ではこの現象は起こっていない事にも同時に気が付いた賢吾と美智子。

「そういや、この宝石だけは触っても何とも無いよな?」

「そうね。このアクセサリーとかあの武器とか防具とかとはまた違うのかしら?」

「俺に聞かれても困るな。とにかく誰かそう言う説明をしてくれる人を探したいんだけど、その前にこの持ち物が段々かさばって来てるから、この先の何処かで持ち物を入れる袋を手に入れよう」

 触っても不気味な程に沈黙したままのその宝石だが、それはそれで賢吾も美智子も躊躇無くポケットにしまい込む事が出来るのでありがたい。

 だが、それ以外に奪い取ったアクセサリーの類は総じて身に着けようとすると駄目だった。


 アクセサリーは小さいのだが、美智子はサイドと尻側にポケットの付いているスカートで賢吾は白に近いクリーム色のズボンと言う格好なので、そのスカートのポケットか賢吾の着ている上着のポケットにしかしまう事が出来ない。

 タダでさえ賢吾のズボンのポケットには財布とスマートフォンが入っているので、もう容量が一杯一杯なのだ。

 なので必然的に美智子のポケットにスマートフォンと一緒にしまう事になるものの、これ以上は賢吾が自分で言っている通り何か袋が欲しい所である。

 だが、それはまだ先の話になりそうだ。

 今はまだポケットにねじ込めるだけの物しか手に持っていないし、紙の資料だって美智子がスカートとパンツの間に挟んでおいてくれて何とかなっている。


 なので今はまだ大丈夫だろうと判断し、美智子が先に立ち上がった。

「……行くのか?」

「ええ。この部屋にはもう何も無いみたいだしね。それに何時また何処で敵に襲われるか分からないんだから、少しでも先に進んでおいた方が良いでしょ」

「確かに。それじゃ行くか」

 賢吾も立ち上がってズボンの尻の部分をパンパンと払い、その改装中の部屋を抜けて更に奥に進み始めた……その時だった。

「あれっ?」

「ん?」

「け、賢ちゃん……ポケットが何だか赤く輝いてないかしら?」

「えっ?」


 美智子が指差すその先を見てみると、あの赤い宝石を入れているポケットが何と赤く輝いている!

「な、何だこりゃ……?」

 今の今までこんな事は無かったのに、何で突然光り輝いているのだろうか?

 その光の源であるポケットの中の宝石に恐る恐る触れてみるものの、特に何も起こる気配は無かった。

「大丈夫……みたいだな」

「でも何で光っているのかしらね?」

「分からない。だが、何かの原因がある事は確かだろうな」

 しかしそれを確かめる術は今は無いので、とりあえず光り輝いている事だけは頭の中に入れておきながら先に進む賢吾と美智子。


 だが、さっきの騎士団員を美智子が倒した部屋から続いている通路を進むと、その先で今度は別の違和感を覚える事になる。

「……ん!?」

「えっ、な、何よこの臭いは……!?」

 鼻を突く異臭。

 それも生ゴミとかの生優しいレベルでは無く、血の臭いや何かが腐った臭い、薬品の臭い等も混じっているのが2人にも分かる程に強烈な臭い。

 マスク代わりに手で口と鼻を覆い隠し、顔をしかめて嫌な臭いに耐えつつも通路の先へと進んでみれば、そこには大きな部屋への出入り口があるのが分かった。


「あの部屋よね、この臭いの元は……」

「間違い無いな。さっきのあの薬品漬けみたいな物が沢山あった場所と似た様な臭いにも感じるんだが、そうだったら恐らくあそこでも何かが栽培されているとか生成されているとか……?」

「その可能性は高いわね」

 どうやら、地下に何かの生成工場らしき部屋があるらしい。

 そしてその部屋の近くまでやって来たと言う事は、敵の本拠地の最深部まで乗り込んで来た証拠でもある。

 それと同時に賢吾がある事に気がついた。

「なあ、この宝石……さっきよりも少しずつ強く光ってるんだけど」

「え、また?」

 さっきの出来事を思い出して美智子はぎょっとした顔になるが、賢吾の持っている宝石はそれ以上光が強くなる事が無い。


 それを見た美智子が1つの結論に達する。

「それ、車のナビゲーションシステムみたいな物なのかな」

「……そうだとしたら、俺達を日本まで導いてくれると良いのだが」

 曖昧な返事をする賢吾に、今度は美智子が尋ねる。

「それ、何時から強く光ってたの?」

「さっきからみたいだな。俺達が合流した部屋を出た時からここに来るまでの間だ」

「そう……とにかく少しずつ進んでみて、どうなるか試してみましょうよ」

「ああ、そうだな」

 だがその前に、まずこの臭いの原因になっているあの部屋の様子を探るのが先だろう。

 一体何が自分達を待ち受けているのだろうかと思いつつ、臭いを我慢して2人はその部屋にどんどん近づいて行った。

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