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164.立て続けのバトル

 もう1つの通路へと進んだ美智子は、後ろを振り返ってあの男が追いかけて来ていない事に気が付いた。

 それから賢吾の姿も見当たらない。

(あれっ……ま、まさか賢ちゃんは逆の方向に行っちゃったのかしら!?)

 しかし、この世界に来てからトレーニングを積んで来ているとは言えまだまだ初心者の自分が賢吾の元に向かっても、それはただの足手纏いで終わってしまうだろうと判断して美智子は通路の先へと足を進ませる。

(地下だからかも知れないけど、何だか陰気臭い所ねえ)

 そう考えてみると、この屋敷の地下に迷路の様なこんなに巨大な通路が造られているのも不思議な気がする。

(ここってレメディオス団長の屋敷なのよね? でも幾ら元近衛騎士団員で今の第3騎士団長だからと言っても、たった1人の財力でここまでの規模の通路を造れるものなのかしら?)

 騎士団長と言えば確かにそれなりの財力を有しているのかも知れないが、それでもその財力には限度がある幡豆なので不自然さが拭えない。


 モヤモヤとしたそんな気持ちを抱えながら歩く美智子だったが、その通路の突き当たりにある曲がり角を曲がった時、いきなり誰かに手首を掴まれる。

「っ!?」

 抵抗する間も無く引きずり込まれ、そのまま地面に倒される美智子。

 何とか力を振り絞って起き上がろうとする美智子だが、そんな彼女の目の前に長斧の先端が見えた。

「はっ……!?」

 斧の先端からゆっくりと目線をその持ち主の方に向けてみると、細身で黒髪の男が長斧を持って美智子を見下ろしていた。

「立て、女」

 その声に従って美智子はゆっくりと立ち上がる。

 その男は騎士団の制服を着込んでいる事から騎士団員だと分かるので、思い切ってここで質問をしてみる美智子。

「貴方は……王国騎士団の騎士団員ね? レメディオスは何をしようとしているのよ?」

「うるせぇ。さぁ、さっさとそっちに行け!!」


 長斧を突きつけたままその長斧を振って指示する騎士団員だが、美智子は咄嗟に長斧を素早く右腕で押し退けて騎士団員の股間を全力で蹴り上げる。

「てやぁ!」

 長斧を触った時にあの光と音と痛みの現象は出なかったので運が良かったが、股間を蹴り上げられた筈の騎士団員は無反応だ。

「え……?」

 鎖かたびらか何かでも股間に入っているのか、と不思議に思いつつ騎士団員の顔を見上げる美智子だったが、次の瞬間……。

「ぐおおおお……て、テメェええええ……!!」

 顔を歪めて股間を抑えて前屈みになるその騎士団員。


 やっぱり騎士団員には効いていた様で、思わず前屈みになった男の顔面に今度は頭突きを食らわせ、それでよろけた男にプロレスの中継番組で見た事のある見よう見まねのダッシュからの跳び蹴りをかまして、後ろの壁に背中から叩き付ける。

 確かに体格は美智子よりもあるものの、見るからに細身の男はその衝撃で長斧を手から落としてしまった。

 地球において、最近少し太ってショックを受けていた体重がこんな所で役に立つとは……と驚きながら美智子は騎士団員とバトルスタート。


 通路の先は改装中の小部屋になっており、至る所に使えそうな物が落ちている。

 まずは傍に落ちているレンガを両手にそれぞれ1個ずつ持ち、前屈み状態から立ち直れていない騎士団員の顔面に叩き付ける。

「ぐお、おがぁ!」

 怯みながらも懸命にパンチを繰り出す騎士団員だが、大振りなので美智子は今までのトレーニングを思い出しながらかわしてレンガの1つを投げつける。

「とりゃあ!」


 更に騎士団員に向かってジャンプし、彼の頭にレンガを振り下ろす。

「ぐわぁ!」

 レンガの殴打で怯んだ騎士団員だが、同時にそのレンガが砕けてしまったので美智子は拳を構える。

 そのまま騎士団員へと走り寄り2発パンチを男の腹に入れ、続けて男の側頭部にハイキック。

 だが、やっぱりそれなりの体格差もあるのだろう。

 女のパワーでは余り効かない様で、思いっ切り騎士団員に前蹴りを食らって美智子は再び地面に倒れ込む。

「ぐえっ!」

 着ている緑のTシャツに黒ずんだ靴跡がついたのを、荒い息を吐きながら見下ろす美智子に騎士団員が駆け寄り、その身体を引っ張り上げて石の地面へと美智子を投げ飛ばす。


「ぐえあ!」

 投げ飛ばされた自分に再び走り寄って来た男を視界に捉えた美智子は、何か攻撃を繰り出される前に騎士団員の足を自分の足で蹴りつけて転倒させる。

「うおっ!」

 更に転倒した騎士団員の顔面が足の前に来たので、勿論その顔面にも右足でキックを入れる。

 立ち上がった美智子は、立ち上がりかけている騎士団員に対して柔らかい股関節とトレーニングの成果を活かしたハイキックを繰り出して怯ませ、続けて騎士団員に飛び付きつつ頭に膝蹴り。

「ぐぇう!」


 しかし、やはりパワー不足は否めないらしい。

 体勢を立て直した騎士団員は近づいて来たその美智子の首を両手で掴んで持ち上げて、後ろの壁にガンガンと美智子の頭を打ち付ける。

「うぐ、あがっ!」

 このままではまずいと思った美智子は、力を振り絞って右足を騎士団員の側頭部に叩き込む。

 だけどそれでも首から手が離れないので、今度は騎士団員のアゴに下から膝を振り上げる。

「あぐぉ!」

 流石に急所への攻撃は効いた様で、自分の首から手が離されたのを確認した美智子は地面に倒れた騎士団員の頭に思いっ切り前蹴り。

 更に立ち上がろうとする騎士団員の頭に、再びそばに落ちているレンガを使って何度も何度も彼の頭に振り下ろせば、そのまま騎士団員はズルリと崩れ落ちて絶命した。

「はぁ……終わった……」

 良くこんな奴を倒せたなと自分でもびっくりしながら、美智子は死闘を終えて一息つく為に座り込んだ。

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