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159.探索

 2回も続けてこうして敵に襲われてしまった上に、今の槍使いの男はレメディオスからどうやら自分達の事を聞かされていたらしいとその口振りから賢吾は汲み取る事が出来た。

 となるとここでこのままモタモタしているのはマズイだろう、と踏んでまずはさっきの眼帯の男と同じ様に武器を倉庫の隅に蹴り転がした上で厳重に縛り上げておく。

「良し……後は棚とドアの間に押し込んでおけば身動きも取り辛いだろうから、この男と後そっちの眼帯の男も運ぶの一緒に手伝え」

「うん」

 眼帯の男と一緒にドアを塞ぐ役割になって貰う為、棚とドアの間に膝を折り曲げて後ろ手に縛り上げられた状態で押し込められた槍使いの男。

 その作業を終えた地球人の2人は、先程階段から落っこちてしまった痛みをまだ感じつつももう1度その階段を上がり、今度は素早くしかし慎重にドアを開けて先の様子を確認。

「敵……居る?」

「いいや、誰も居ないみたいだな……」

 またドアを開けた瞬間に蹴り飛ばされてデジャヴにならないか不安だったのだが、それはどうやら回避出来た様でさっさとそのドアの向こうへと足を進ませる地球人の2人。


 そこは何処かの屋敷の様だった。

 ドアを開けて出た先には床に赤絨毯が敷かれて優雅に来訪者を出迎える準備がされている地面と、天井から豪華なシャンデリアがぶら下がっているのが特徴的なだだっ広いエントランスがあったからそう予想出来た。

「な、何かしら……ここは……」

「何処かの屋敷と言う感じだな。まさか、あのエリアスとか言う男が所有している別荘がまだあった……なんて事は無さそうだな」

 さっきの槍使いの男が口走っていた「レメディオス団長」と言うセリフと、他でも無いそのレメディオスの部屋からここに向かって通路が繋がっていた事からも分かる様に、この屋敷は恐らくレメディオス個人の持ち物の可能性が高い。

 それにその槍使いの男や眼帯のロングソード使いの男があのドアを開けて階段を下りて来たと言う事は、まだこの屋敷の中に彼等の仲間が居る可能性がこれも高かった。


「良し、俺から離れるなよ美智子」

「そうね。何処に敵が居るか分からないから慎重に行動しないとね」

 とりあえずまずは1階からしらみつぶしに色々と探索をスタートする事にしたが、早くも迷う事案が発生する。

「うーん、どっちに行こう?」

 正面玄関から入るとエントランスの中央に階段があって、その階段を上り切った所には大きなドアがある。

 その階段の下の両脇には通路があり、それぞれ2つのドアに繋がる通路となっているので左に行くか右に行くかで悩む所だ。

 ちなみに2人が入って来た倉庫へ繋がる階段は、エントランスの片隅にポツンと寂しそうに――いや、目立たない様にあえてそう設置されているらしい。


「なぁ美智子、御前はどっちに行きたい?」

「私は……そうね、右に行くわ」

「分かった」

 美智子にどっちのドアの先に行くかを選んで貰った結果、右のドアノブに手を掛けてゆっくりと開ける賢吾。

 その先は細長い通路になっており、突き当たりにはもう1つドアがあるだけだった。

 とにかく行ける所まで行ってみようと賢吾と美智子はその通路に踏み出し、突き当たりのドアノブに手を掛けてまたさっきと同じく様子を確認する。

 だがその時、その部屋の中から漂って来る強烈な臭いに顔をしかめる賢吾と美智子。

「……うぇ……」

「うっ、何よこの臭い……!?」

 ツーンと鼻を突くこの臭いは、理科の実験で嗅いだ事のあるアンモニアを思い出させる刺激臭だった。


 思わず一旦ドアを閉め、パタパタと手で顔の周囲を仰ぎながら臭いを逃がす2人。

「何だよ……何かの実験でもやってるのかな?」

「あるいは掃除もされていない部屋だったりして……もしくはその両方とか」

「それが1番悲惨だよ。でも、ここまで来たならさっさと中を調べて戻ろうぜ」

「そうしましょう……」

 部屋中に漂っているその異臭の原因は一体何なのかを調べるまでは、この通路を出る事は気分的に出来ないだろうと漠然と考える。

 鼻にきついからさっさと終わらせようと思ってもう1度ドアを開け、明かりが点いたままの部屋に踏み込む地球人の2人だったが、この後にそんな臭いも思わず忘れてしまうレベルのおぞましい光景を目にする事になってしまう。


 明かりがついた部屋の中はかなり散らかっており、足の踏み場も無い様な状態であった。

 どうやら臭いの発生源は奥にあるらしく、そこには本当に理科の実験中の様なビーカーやらの器具が散乱しているテーブルを見つけたのだが、美智子がその瞬間叫び声をあげてしまった。

「ひぃっ……!?」

「え?」

「け、賢ちゃん……あれ……!!」

 目を限界まで見開いて、震える指先でテーブルの脇を指差す美智子。

 何とそこにはそれこそ漫画やアニメ、映画でしか見た事が無い様な得体の知れない生物のホルマリン(?)漬けの大きな容器が幾つも整頓されて並べられているでは無いか。

「なっ、何だよ……これ……!?」

「実験でもしてるのかしらね……!?」

 怖い気持ちを意思でねじ伏せて、この容器の中身が一体何なのかを調べようとする2人の後ろでドアが開く音がしたのはその時だった。

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