表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/258

158.やっぱり前途多難

 階段を上がった賢吾は、そこに先程の明かりが点いた理由を発見する事が出来た。

「なるほど、これかな?」

「え?」

「ほら、これを見てみろ。何かのセンサーみたいなものがついているだろう?」

 階段のドアの前の天井を差している賢吾の指の先には、確かに赤く光っているセンサーらしき設備が設置されているのを美智子も発見出来た。

「と言う事は、このセンサーに反応して明かりが点いたって事?」

「かも知れないな」

「だとしたら意外とハイテクなのね」

 そう言う美智子だったが、でもちょっと待って……と納得の行かない表情になった。

「あれ? でもさっきの縛り上げた剣士は確か団長がどうのこうの言いながら下りて来たわよね?」

「……そうだな」

「えっ、って事は何時その事に気が付いたのかしら?」


 2人の間にシーンとした空気が流れる。

「変だな、確かに」

「でしょ? でね、それに関して私が考えられる事が2つあるんだけど言っても良いかしら?」

「うん、言ってみてくれ」

「まず1つ目は私達があのドアから入って来た時に、ここと同じく何かのセンサーみたいなのがあってそれがこの建物の中に反応して、さっきの男が下りて来たんじゃないかって事ね。それからもう1つはたまたまあの男が近くに居て、ドアの開閉音や私達の足音が聞こえたから下りて来たんじゃないかって説よ」

 美智子が挙げたその2つの説についてだが、賢吾は圧倒的に1つ目の説を信じる。

「俺は前者だと思う。足音とかはここからでも聞こえ難いと思うし、幾らこの地下室に音が響きやすいって言ってもこのドア越しじゃ更に聞こえ難いと思うからな」

「そう……。だったらもう1つだけ疑問に思うんだけど」

「何だ?」

「あの男がここに入って来た時と同じ様に、私達のドアの方にもそう言う人の進入を感知して電気が自動的に点いたりするセンサーは設置してなかったのかしら?」


 賢吾は思わず頭を抱える。

 その話の内容もそうなのだが、それよりも自分に対しての美智子の質問の仕方にだ。

「そんなのは俺に聞かれても困る。俺もお前もここに来たのは初めてなんだし、聞くなよそんな事」

「う……わ、悪かったわね」

「とにかく先に進むぞ。センサーが付いてようが無かろうが、あの出入り口も棚で簡単に開かない様に封鎖して来た俺達はもう後には引き返せないんだ」

 強引に話を終わらせ、賢吾が目の前にあるドアノブに手をかけてゆっくりと押してみる。

 ……が。

「あれ、開かない……」

「え? なら引っ張ってみたらどうかしら?」

 グイグイと押してもドアは開いてくれそうに無いので、ならばと美智子の言う様に今度は自分達の方に引っ張ってみるとすんなり開いた。

 押してもダメなら引いてみろ、であの時のフタみたいなデジャヴにはならなかったのだが、そのドアの開閉で油断していた所に今度は思いっ切り衝撃がやって来た。


「ぶへえ!?」

「ぎゃっ!?」

 腹部に強い衝撃を受けて後ろにぶっ飛んだ賢吾と、その飛ばされた賢吾の体のクッションになる形で美智子は後ろの階段を落ちて行ってしまった。

「うおああああっ!?」

「きゃああっあああ、ああ、ああああっ!?」

 叫び声を上げて痛みを感じながら、階段の下まで落ちてしまった賢吾と美智子にその落っことした主が近づいて来る。

「魔力が無い人間……噂には聞いていたが、一体ここに何の用だ?」


 騎士団長を呼びに行った自分の仲間がなかなか戻って来ないのと、ドアの向こう側から聞こえる男女の話声で異変に気が着き、仲間の黒いローブの男は右手に握ったその槍を振り被って階段の上から向かって来た。

 そのセリフを聞きつつも痛みをこらえて起き上がった賢吾はその槍を咄嗟に避けるが、避けた所で再び腹にミドルキックを入れられて倒れ込む。

「がっ!?」

「おい、何者だ!!」

 詰問の言葉を口に出しつつも、なおも黒いローブの男の槍は倒れた賢吾に間髪入れず襲い掛かって来る。


 しかし勿論このまま賢吾も黙ってはいない。

 痛みをこらえつつ立ち上がり、一旦バックステップで距離を取って倉庫の奥の壁まで移動しながら黒いローブの男に向き直って拳を構える。

 それを見たローブの男が、階段から倉庫の中に向かって走り出して右のミドルキックを繰り出して来るので、賢吾はそのキックをゴロっと斜め前方に地面を転がって回避。

「……っのお!!」

 立て続けに槍が突き出されるが、今度はそれを日本拳法のトレーニングで培った回避テクニックの応用でしっかりとかわす。

 そして横薙ぎに繰り出された槍を素早くしゃがんで回避した賢吾は、そのしゃがんだ姿勢を利用して左足を軸にして男に足払いをかけて転倒させた。


 更に痛みをこらえながら何とか立ち上がった美智子が、倉庫の中に整理整頓されていたワインの瓶を片手に男の背後から近寄る。

 立ち上がった賢吾は男の背中越しに「それ」が見えているが、後ろに目がついていない男はそれに気が付く様子が無かった。

「……ふん!!」

 そんな掛け声と共に美智子の手に握られたワインの瓶が振り下ろされ、ローブの上から殴りつけられた男も気絶してしまい立て続けのバトルは幕を下ろした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ