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157.前途多難

 だがその時、いきなり何の前触れも無しに部屋がパッと明るくなった。

「えっ……?」

 明るくなった部屋で何が起こったのか把握出来ない状態の賢吾と美智子の耳に、バタバタと部屋の奥にある階段から降りて来る足音が聞こえて来た。

「レメディオス団長、早かったですね!!」

 そう言いながら階段を素早く下りて来たのは、相手から見て右の目に大きめの眼帯を着用している若い黒髪の男だった。

 当然賢吾も美智子もレメディオスでは無いので、下りて来た男と目が合った瞬間に一気に部屋の中が静まり返った。

「……何だ、御前等は!?」

「うおああああっ!!」


 叫びながらロングソードを腰から引き抜いた男に対し、雄たけびを上げながら賢吾が先制タックル。

 そのタックルでマウントポジションをとったものの、相手の方が縦にも横にも大きな体躯をしていてすぐにパワーで押し返されてしまった。

「美智子、お前は先に上に行け!!」

「えっ……え!?」

 未だに動揺している美智子にそれだけ告げ、賢吾は眼帯の男相手に激しいバトルを繰り広げる。

 賢吾の攻撃をすぐに見極め、的確に合わせて来るこの男はなかなかの実力を持っている様だ。

「はっ!」

 男のロングソードが賢吾を突こうとするが、足で賢吾はそれを弾いてすぐに後ろへバックステップで距離を取る。

 それでも眼帯の男も距離を、詰めすぐに追いすがって来る。

 どうやらこっちの攻撃を見切る能力が高いのがこの男の特徴の様なので、賢吾は不意をついた攻撃に移る事にした。


 男が横薙ぎをして来るのでそれをジャンプで回避する賢吾。

 そして若干前に身体がずれた男の左手首を掴んで、思いっ切り内側に関節を押し込んだ。

「あがあああっ!!」

 手首に激痛が走り男が怯んだその瞬間、賢吾は手首を掴んだまま左のハイキックを男の側頭部にクリーンヒットさせる事に成功。

「ぐお……」

 それは1発では終わらずに2発、3発と続き、頭への衝撃で男はクラクラする。

 それと同時に、左手首を押し込まれた事による痛みでロングソードも地面へと落としてしまった。


 これで素手と素手への勝負へ。この土俵では賢吾の方が強い。

 ふらつく男を両手で持ち上げ、思いっ切り側の壁へと投げ飛ばして叩きつける。

「らあああっ!!」

 ふらつく頭に更にドロップキックで追い打ちを食らい、そのまま今度は壁にクリーンヒットした男だったが、地面に身体が崩れ落ちてもまだ立ち上がろうとする。


 そこに今度は賢吾が全力疾走から身体全体でのタックルをもう1度仕掛け、立ち上がりかけた男を再び壁へ叩きつける。

「ぐへぇあ!!」

 背中から壁へぶつかってうつ伏せに地面へと倒れるが、それでもまだ立ち上がろうとする男の顔面目掛け、賢吾は渾身の右ミドルキックをくらわせた。

「ぐぶっ……」

 変な声を上げ、男はズルリとうつ伏せに突っ伏す様に崩れ落ちて意識を失った。


「お、終わったの……?」

「美智子、お前は先に行けって……!!」

「だ、だって上には何があるか分からないから動ける訳無いじゃない! と言うかそれより、この男の口を塞いで縛り上げておかないと!!」

 聞き様によってはかなり危険な発言だが、確かにそれもそうだと思って賢吾は室内を見渡す。

 どうやらここは倉庫らしき場所の様で、ホコリっぽいのも至る所に物が散乱したり積み上げられているからだと分かった。

「おい、ロープ探してくれ。それから布」

「うん……あ、これなんかどうかしら?」

 物置と言うだけあってお目当ての物はすぐに見つかったので、賢吾と美智子はまず今しがたノックアウトした男を縛り上げる。

 意識を取り戻されれば完全に物音は防げないだろうが、とりあえず武器のロングソードを足で倉庫の片隅に蹴り転がしておき、その上でしっかりと身動きが出来ない様にしておく。


「ふぅ、これで一安心かな」

 だけどまだ問題はある。

 さっき自分達が入って来たドア……つまり、レメディオスの部屋から通じている通路に繋がっているドアを塞がなければならない。

「おい美智子、手伝ってくれ」

「分かったわ」

 ドアのそばに設置されている大きな棚を2人掛かりで引きずって、そのドアの前を完璧に塞ぐ。

 2人が入って来たのは通路からこの部屋の中に向かって開くタイプのドアなので、万が一レメディオスが2人を追って来たとしてもすぐには入って来られない筈だとシミュレーションする。

「さてと、後はこの男が目を覚まさない内にそこの階段からさっさと上に行くぞ」

「ええ……」


 さっきの通路を歩いていた時の美智子の発言からすると、どうやらここにも大勢の人間や獣人が居る様だ。

 でも別のパターンも考えられる。

「この上から聞こえたんだろ? さっきの大量の足音が」

「うん、この上辺りからよ」

「……もしかしたら、地上を歩いている人達の足音って可能性もあるかも知れないな」

 そう言われると何も言い返せない美智子だが、事実かどうかを確認する為には実際に上の階に向かってみないと分からない。

「と、とにかく行きましょうよ。それだったらそれで良いんだし……」

 苦笑いを浮かべながら階段を上り出した美智子に続き、賢吾もさっさとこの地下倉庫を後にする事にした。

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