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152.生じた矛盾

 歩きながら色々考えていた2人は、部屋に戻ってからその生じた矛盾についてもう1度良く考えてみる。

「と、とりあえずそこにあるペンと紙で2つの話の何処が食い違っているのかを書き出してみましょうよ」

「そうしてみるか」

 北上ルートのキャンプの時に第3騎士団員のロルフとクラリッサ達から聞いた話、それから食堂の従業員から聞いた話を実際にセリフ部分だけでも何とか思い出してみて紙に書き連ねてみる事にした。

「ええっと、それぞれ何て言ってたか思い出せるかな……」

「確かあの時は……」

 必死にあの時の会話を思い出しながら、その内容を2人は紙に書き起こし始めた。


『そのエリートの集まりって言う近衛騎士団員だったレメディオスが、何故第3騎士団の団長をしているの?』

『えっと……レメディオスは王族の警備に当たっていたんだけど、その警備当番の時に王城に賊が侵入してね。勿論王城に忍び込んだ賊だからさっさと捕まえないといけないんだけど、その賊はかなり素早くてなかなか捕まえられなかったらしいの。それで……その賊を最終的に追い詰めたのがレメディオスだったんだけど、結局捕まえ切れずに逃がしちゃったらしくてね。その責任を取って、レメディオスは近衛騎士団を追われて第3騎士団の団長に指名され、色々と危険な任務にも回される様になってしまったのよ』


 ロルフが話し難そうだったので内容を代弁をしたクラリッサから聞いた話はこんな感じだった。

「って、こんな事を言っていた筈だけど」

「ここまでは確かに違和感は無いわね」

 責任を取らされて重要な役職から降ろされたり、階級が下がってしまったりするのは地球でも珍しくない事だった。

 だが、そのあの食堂のコック長達の話だとその内容そのものが違う様だ。


『私はこの従業員達の中で1番長く働いているのだが、騎士団に対して色々とキナ臭いものを感じていたのは前々からなんだ』

『そうなんですか?』

『ああ。例えば第1騎士団と第2騎士団は仲が悪いから、第2騎士団の団長が第1騎士団の団長の弱みを握って失脚させようとしている噂とか、その第1騎士団の中では汚職が横行しているとか色々さ。……もしかして、レメディオス団長に続いてロルフ団長も何か任務を失敗したのを誤魔化す為に早めに戻って来たとかじゃ無いだろうな?』

『はい?』

『え……と、ごまかしたってどう言う事よ?』

『今の第3騎士団長のレメディオスが、元々近衛騎士団の団員だったと言う話は聞いた事はあるか?』

『ええ、それは前に聞いた事があります。それと何か関係が?』

『その話なんだが、表向きにはレメディオス団長が魔物を逃がしてしまったのでその責任を問われて近衛騎士団を除隊になった。そして第3騎士団の団長として主に魔物を討伐する為の任務に出向く事になったと言う話だ』

『まぁ、それだけなら別に不自然じゃないわね。何か違うの?』

『だが……一部ではその近衛騎士団員時代のレメディオス団長の行動を不審に思う輩も居たらしい。数年前に魔物が異常繁殖した時があったんだが、同時にその時の近衛騎士団が王の遠征に付き添って進軍する事になった。そこで進軍ルートに選ばれたのは、魔物が多く生息している激戦区だったらしい』

『えっ、王様を守らなきゃいけないのにわざわざそこを選んだって事なの?』

『そのルートを通る様に進言したのがレメディオスだったらしいんだ。そのルートの魔物の討伐は済んでいるから、そこを通って国境を越えましょうと言ったそうだ』


『じゃあ、レメディオスはまさかワザとそのルートを通る様に仕向けた……?』

『いいや、それは無いと言う話だ。私の甥が近衛騎士団で今も活動しているのだがその甥もその時レメディオスと一緒に居て、実際にルートが安全だったと言うのを確認している。……途中まではな』

『何か、ただの異常繁殖じゃ無い気がしますね』

『そこまでは甥も分からないらしいが、甥の話では途中まで何事も無く進軍出来ていたのにいきなり何の前触れも無く魔物の大群に囲まれたらしい。何とかその場は陛下を守り切ったらしいんだが、その後の進軍は別のルートを進む事にせざるを得なかったそうだ』

『ま、そりゃそうなるわよね』

『そしてレメディオスが陛下を危険に晒した責任を取らされて解雇された……と言う話になるのか……』

『しかし、王を守る筈の近衛騎士団員がそんな大失態を犯したとなれば信用問題に関わるから、表向きには魔物を逃してしまったと言う事にしたらしい。かなり苦しい理由付けだと思うがな。とりあえずレメディオスやロルフが何かをしているかも知れないって言うのは分かったが、クラリッサも含めて騎士団の連中には気をつけるんだ』


 内容を思い出して紙に纏めた地球人2人の間に、かなり重い空気が流れたのはすぐだった。

「……何か、かなり内容が違う様な気がするんだけど……」

「ああ、俺もそう思う。クラリッサはかなり端折ってたんだろうけど、それを差し引いても「城の中で」やった事と「屋外で遠征中の」出来事ってのはかなり差があるよな」

 やはりおかしい、おかし過ぎる。

 これは何としてももう少し詳しく調べる必要がありそうだ、と2人は無言で頷いた。

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