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150.アプローチ

 その日は色々と疲れていた事もあってすぐに寝てしまい、翌日の朝からあのエリアス達の話を聞く前と同じ生活をする様に心掛けながら、何の気無しに騎士団の団員達に探りを入れてみる事にした2人。

 結局良さそうな口実は浮かばないままなのだが、自分達も少なからずこの第3騎士団に不信感を持っている以上はやっぱり聞いておきたい事が色々あった。

 もしかしたらその過程で騎士団の情報だけでは無く、地球へと帰る為の手掛かりが何か発見出来るかも知れないと言う期待感もあっての行動だ。

 とは言え、賢吾と美智子が誘拐されてしまった事やあのエリアスのワイバーンの襲来もあって騎士団の空気はかなりピリピリしていてなかなか話し掛け難いのも事実だった。


 そこで鍛錬場でトレーニングをした時に、色々と相手をして貰った騎士団員達から攻める事にする。

 何時もの鍛錬場は第3騎士団の団員だけが使っているのでは無く、第1や第2の騎士団員もトレーニングに励んでいる姿を今まで何回か見て来たし、実際にスパーリングの相手になって貰った事もある。

 所属している団が違うので、スパーリングの事以外では言葉を交わしたのが片手で数える程しか無いのだが、何の気無しを装って内部事情を聞き出せる状況に持って行きたい所だと賢吾と美智子は考えていた。

 その上で、そう言うアプローチは自分に任せてよと自信たっぷりで美智子が賢吾に願い出る。

「話題を振るのは私に任せて」

「え、大丈夫なのか?」

「うん。こう言うのは大学生活で漫画研究会のサークル活動してて慣れてるからね」

「そうなのか……」

 そっち方面には疎い賢吾は、美智子自身がそう申し出た事もあってここは彼女に任せる事にする。


「どうもおはようございます」

「ああ、おはよう」

「今日も鍛錬しに来たのか?」

「そうですよー。やっぱり日々の積み重ねが大事ですから」

 同じく朝のトレーニングに励もうとしていた第2騎士団の団員達の元に向かった美智子は、馴れ馴れしくならない様にしかしフレンドリーに話しかける。

 この騎士団員達も何度かスパーリングに付き合って貰った経験があるので、まずはこの2人から少しずつ情報を聞き出そうと考えたのだ。

 だが、その前にまずはスパーリングのパートナーをそれぞれしてくれる様に頼む。

「今日はどんな事をやるんだ?」

「ええっと、また私達が武器を持っている相手と対峙した時の相手になってほしいんですよ」

「あー、何時ものね。別に構わないよ」


 何時も同じメニューじゃつまらないし、と2人の片方が言ってスパーリングがスタート。

 今回の相手はロングソード使いと槍使いの2人で、それぞれ手加減して貰いながらどう対処すれば良いかを考えて攻撃を避けたり手で弾いたり、時には自分から積極的に前へ出たりと守りだけでは無く攻めのスタイルもミックスさせながら賢吾と美智子は立ち回る。

 賢吾は今までの長年の経験を活かして、槍使いの騎士団員とスピード重視の素早いスパーリングを展開する。

 一方の美智子はまだまだ実戦経験に乏しいので、スローペースではあるものの確実にブロックしたり避けたりと言う事を最優先にして、守りのスタイルでロングソード使いの騎士団員に立ち向かう。

 美智子自身がそれは1番良く分かっている事なので、とにかく今は自分の身をしっかり守ってそれから反撃を考える様にしているのだ。


 そうして約1時間後、休憩を時折り挟みながらスパーリングが終了。

「はぁ……どうもありがとうございました」

「こちらこそどうも。武器を持った状態で全く素手の相手と戦うのも、なかなか新鮮味があって面白いな」

 魔物が闊歩し、武器を持っている人間や獣人が当たり前に居るこの世界では素手で戦うと言う事が余り無い。

 かと言ってレベルが低い訳では無く、騎士団では体術のトレーニングメニューもあるし戦場で武器を奪われたりした時は必然的に素手での戦いを強いられるので、騎士団員達も体術のトレーニングをしている光景を賢吾と美智子は見た事があるのだ。

 だが、最初から最後まで一貫して素手で戦うと言うのはなかなかお目にかかれないらしいので新鮮味があるのだとか。


 そんな満足げな表情をしている騎士団員2人に、美智子はさも今思い出したかの様にこの話題からアプローチを掛けて行く。

「そうですよね、この世界だと魔物が居て当たり前なんですものね。魔物に素手で立ち向かうなんて無理ですよね?」

「そりゃそうだよ。魔物は俺達人間と違って素早いからな。ウサギ位の大きさの小さい魔物とかだったらまだしも、中型犬レベルの大きさになると武器が無いともう駄目だな。獣人だったらまだ分からないかも知れないけど、俺達人間は武器があって初めて対等に戦えるのが魔物なんだ」

 この世界に来て初めて知った、人間と動物のハーフである獣人と言う存在。

 その恐ろしさは賢吾もあの食堂のワシ獣人で嫌と言う程思い知っている。

 出来ればなるべく相手にしたくない存在だな……と思う賢吾の横で美智子が更にアプローチを掛けて行く。

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