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14.疑問と戦闘

「……馬鹿な、まさかそんな事があるなんて……あり得ない。術の構築に失敗したか……?」

「だから私には何も見えないし、貴方は一体さっきから私以外の誰と喋ってるのよ。怖いんだけど!!」

 賢吾からしてみればこの状況もあり得ないし、あんた等2人のリアクションの方がよっぽど怖い。

「ちょ……ちょっと待て。一旦話を整理させてくれないか。クラリッサはこの男が見えていないのか?」

「そこに誰かが居るって言うの?」

 質問に質問で返されるのは余り良い気分では無いが、今のクラリッサの反応からしてみるとやっぱり見えていないらしい。

「それからそっちも……一体何者なんだ? 俺にはあんたの姿がはっきり見えているし、その手に持っている弓で今クラリッサを狙っただろう?」

「……やはり見えているらしいな、俺の姿が」

 表情こそフードに隠れて良く分からないが、その声色から彼が驚いているのは十分に分かる。

 しかし、賢吾にとっては最初から見えているのでフードの男の人物が言っている事もさっぱり分からない。


「とにかく、俺には理解出来ない何かが起こっていると言うのは分かったが、それよりも重要なのは何故あんたが今クラリッサを狙ったかだ」

 賢吾が一定のトーンでそう言うが、フードの男はそれには答えず無言で再び弓を構える。

「クラリッサ、逃げろ!」

「えっ……え?」

 いきなりそう言われて戸惑うクラリッサ目掛け、無情にも男の弓が引き絞られる。

「くっ!」

 咄嗟に賢吾はクラリッサに体当たりし、2人揃ってゴロゴロと地面を転がる。

 その2人の上スレスレを矢が掠めて行き、賢吾とクラリッサは間一髪で助かったと分かって息を吐いた。


 しかしまだ攻撃の手が終わった訳でも無いので、賢吾はすぐに立ち上がって男に向かって走り出す。

 距離はおよそ30メートル。

 良く見てみると、男はブツブツと口を動かして呟いているのが目に見える。

 今大流行しているSNSサービスでもあるまいに……と賢吾は思いつつも一気に男に詰め寄って行く。

 男の手が背中の矢筒の矢に掛かると同時に、賢吾は男にダッシュした勢いそのままにドロップキックを男にお見舞いする。

「がへっ!?」

 男は賢吾のドロップキックをガードする素振りを全く見せないまま、避ける事もせずにクリーンヒットを受ける。

(へっ!?)

 この状況に最も驚いたのは賢吾だった。

 ドロップキックをお見舞いする素振りを見せたなら、普通に横に避けたりしゃがんで避けたりするだろうに、男は全くそんなモーションを見せなかったのだから。


(避けるって言う概念が無いのか?)

 そんな馬鹿な事があってたまるか。

 このフードの男の気持ちになって考えてしまう程、ノーモーションの男へのヒットには賢吾の驚きがあった。

 これでも日本拳法家の端くれであるからこそ、相手が避けもせず自分の攻撃を食らってしまうのは完全に予想外だった。

 それでも自分達の命を狙うのであれば、絶対にここで引き下がる訳にはいかない賢吾。

 そんな賢吾のすぐ横ではクラリッサに変化が。

「あっ、その男は……!?」

「見えるのか?」

「ええ、バッチリね! 姿を消す魔術を使っていたみたいだけど、今の貴方の攻撃で術が解除されたらしいわ! そしてそっちの貴方……何が目的かは知らないけど、王国騎士団の私を襲撃したと言う事は傷害と公務執行妨害の現行犯で逮捕するわ! 大人しくしなさいっ!」


 しかし、賢吾はそんなクラリッサを別の場所に向かわせる事に。

「クラリッサ、船を準備していてくれ!!」

「えっ、何言ってるのよ!? ここは騎士団員の私がやるわ!」

「いや、俺は船がある場所を知らない。それに動かし方も分からないし、多分狙われているのは君だろうから俺が足止めをする。ここで君が倒されたら俺は王都に向かえないからな!」

 その賢吾のセリフを受け、若干名残惜しそうな素振りを見せながらもクラリッサは踵を返して再度馬に跨って叫ぶ。

「この先に小さな橋があるわ。そこを超えたら波止場だから!」

「ああ、分かった!」

 この廃村には隠れる場所がかなりあるだろうが、船を出す為には波止場まで行って色々と準備が必要なのでそこで見つかってしまったら隠れても無駄になってしまう。

 ならばここでこのフードの男を退けて、安全に不安無く王都まで向かいたい。


 そう決意しつつ男を押さえ込もうとする賢吾だが、男も賢吾の足を蹴りつけて抵抗。

「ぐう!?」

 向こう脛を蹴られて悶絶する賢吾を見ながら立ち上がるフードの男は、続けて賢吾の股間に振り上げキック。

「ぎゃはっ!」

 悶絶している自分に更に悶絶する要素を加えられた賢吾は大きな隙が出来てしまい、その隙は男が繰り出した右のパンチをクリーンヒットさせる事に繋がる。

「ぐっ……!」

 普段であればこの程度のパンチは十分に耐えられる威力であるが、向こう脛と股間の痛みが賢吾を踏ん張らせてくれなかった。

「さっきの大口の割には大した事無いな。だったら貴様から先に始末してやる。死ね!」

 男は賢吾の上に圧し掛かって左手で彼の首を押さえつつ、懐から取り出した大きめの短剣を右手に握って振り被った。

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