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147.チェイスシーン

 窓が開いてくれたその部屋は暗いながらもなかなかの広さがあると分かる位で、もしかしたら自分と美智子に与えられている部屋よりも広いかも知れないと賢吾が思ってしまうレベルだった。

 同時に、今まで明かりと言えば月の光だけが頼りで他には街灯も無い様な暗い外の景色を見ていたからこそ、騎士団の総本部の中がこうして暗くてもある程度目が慣れている事に感謝しながら、賢吾は早々にこの部屋から脱出を図る。

 ……のだが、この部屋は何処か見覚えがある様な気がしているのもまた同じタイミングだった。

(あれ……この部屋ってまさか俺と美智子が住まわせて貰っている部屋……じゃ無いよな。家具の配置も違うし窓もこんな大きくないし、部屋もそれからベランダもこんなに広くないしな)

 それでも「全く初めて来た」と言う気がしないのがこの部屋。

 一体何時来たんだっけ……と思考を巡らせつつ賢吾が出入り口のドアに向かって歩いているその時、部屋の中にあるもう1つのドアがガチャリと音を立てて開いた。


 自分の執務室の隣にある仮眠室でレメディオスは仮眠をとっていたのだが、総本部の外が騒がしくなった事で目を覚ました。

(何だ?)

 騎士団員の大声や走り回る足音と鎧の金属音で、何か騒ぎが起こっているのはすぐに察知出来た。

 一体何事かと思いながらベッドから起き上がり、執務室へと続くドアを開けてみる。

 目を慣らしてみるとどうやら人影は1つ。

 だがその瞬間、部屋の中にいた人影が自分の存在に気がついた様で、素早く出入り口のドアから走って逃げ出すのが見えた。

「……おい貴様、待て!」

 廊下へと飛び出した侵入者を追ってレメディオスも駆け出す。

 もしかしたら賊が侵入したのかも知れない。ここは王城へと続く騎士団の総本部への不法侵入と言う事で、このまま放置すれば城へと侵入されてしまう可能性もある。

 王国騎士団員としては当然謎の人影を逃がす訳にはいかない。


 レメディオスはその侵入者を追いかけながら大声で周りの兵士達に命令を下す。

「侵入者だ! 誰か捕まえろ!!」

 その命令で即座に周りの騎士団員達が侵入者を捕らえようとしたが、何と侵入者は身軽な動きを駆使して騎士団員達をひらりひらりとかわして行く。

 そして廊下の開いていた窓から、何とそのままジャンプで下へと侵入者は一気に飛び降りてしまった!!

「なっ!?」

 目の前で起きた光景に驚きを隠せないレメディオスだったが、下を見てみるとこの下の階にある部屋のベランダへと上手く着地して侵入者が逃げるのが目に入った。


 他の騎士団員達に任せていられないレメディオスはそれを追いかけて自分もベランダにジャンプし、自分の手で捕まえる為に侵入者を追いかける。

 だがそんなレメディオスに追われている侵入者の前に、突然1つの影が飛び出して来た。

「うおっと!?」

 3階の廊下に出た侵入者は突然の乱入者にスライディングで飛び込まれて、ガッと足を引っ掛けてしまい無様に前のめりに転んでしまう。

 そこにレメディオスが追いついて飛び掛かり、抵抗させる隙を与えない様に早業で侵入者の両手両足を拘束した。

「ロルフ、もう起きたのか?」

「いや、寝ようと思ったら騒がしくなったから様子を見に来ただけだ」

 侵入者の目の前に現われたのはレメディオスの副官であり友人でもあるロルフだった。

 そのロルフの言葉を聞く限り、この時間まで仕事をしていたと言う事になる。


 そして肝心の侵入者は夜で総本部の照明の大半が落とされていて顔が良く見えなかったので、ロルフにこの辺りの証明のみを点けて貰い無理やり侵入者の身体をひっくり返しつつ顔を自分の方に向かせる。

 するとそこから、何故ここにお前が居るんだと問いかけたくなる気持ちになる顔が現れた。

「な、お前は……!!」

「ちょっ、ちょ……何もしてませんって!!」

 その正体は近頃何回も誘拐されたり、この世界の常識では信じられない体質を持っている異世界人の賢吾だった。

「おい貴様、私の部屋で一体何をしていた?」

「わ、忘れ物を取りに来ただけですよ……」

「忘れ物だと?」


 廊下で尋問するのは邪魔になるので、ともかく話を聞く為にレメディオスは自分の部屋へと賢吾を連行する。

「忘れ物って何を忘れたんだ?」

「ええっと……これこれ、これですよ」

 そう言って賢吾が差し出したのはスマートフォンだった。

「前にここに来た時にこれについて尋ねられたんですけど、その時持って帰るのを忘れてしまいまして」

「……あったか? そんな物……」

 勿論、賢吾の言っている事は全くのでたらめである。

 このスマートフォンを取り調べの時に見せた事は1度だけあるものの、この部屋で出した事は無いしそもそも水没して壊れてしまっているのだから、わざわざまた見せる必要も無い。

 しかしここは何とか誤魔化す為に頑張ってみる賢吾。

「お見せしたじゃないですか、これ」

「ああ、確かに見せて貰った記憶はある。だがここで見せられた……かな?」

 今の今まで追いかけっこをしていたとは言え、寝起きでまだ頭が上手く働いていないレメディオスを見て賢吾はさっさと話を終わらせて謝罪する事にした。

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