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143.真の目的

 このままではグダグダと愚痴が続きそうなので賢吾と美智子は早めに止めようとするが、エルマンのセリフはまだ続く模様だ。

 しかし、それが何故ここに居るのかと言う理由であったのだ。

「だから俺も結局良い様に使われたんだと分かってよ。騎士団の奴等に捕まってもう何もかも嫌になって、護送中に脱獄してブラブラしながらこれから何をしようか考えてたらこの人にスカウトされたのさ」

「あ、そうだったの?」

 確かにその脱獄の話を聞いた時、護送中に逃げられてしまったと言うのを聞いた覚えがあった。

 まさかその話がここでこうして繋がって来るなんて。

「ああ。それで騎士団が色々と企みをしているってこの人から聞いてな。最初は俺も声がどうのこうのって言ってたから全然信じる気にはなれなかったんだけどよ、この人の指示に従って行動するとその声に言われたって言う通りの事が起こったんだ」

「……エリアスが声から指示を貰って、エルマンにそれを実行させたと?」


 エリアスは首を縦に振った。

「そうさ。実働部隊として動いて貰うのには慣れているからね。その声の指示の内容で俺だけじゃ出来ない様な事を手伝って貰う内に、その事を信用して貰える様になったんだ」

(胡散くせー……)

(胡散臭いわね……)

 実際にその声とやらが聞こえていない2人は心の中で同時に同じ感想を言うが、最初はエルマンも同じ気持ちだったんだろうなと妙に納得も一緒にしてしまった。

「で、何をさせてたんだ?」

 何処かぶっきらぼうに聞いた賢吾に対し、エリアスでは無くエルマンがその質問に答える。

「今この人が言った通り、実働部隊として色々動いていた。1番多かったのは偵察して、それからその偵察場所を破壊する事だ。部下も一声掛けりゃ色々集まるだけの財力を持ってるからな、この人は」

「財力……?」

「そうだ。この人はなかなか大きな貴族の出身だから別に訳は無い。部下だって俺と同じ様にあの女に嫌気が差して逃げて行った奴等の居場所を突き止めて、食事と寝床と金がいっぺんに手に入る仕事があると声を掛けまくったらすぐに集まったよ」


 その発言に美智子がハッとした顔になる。

「じゃあ……貴方達の他に居るこの組織の部下って……」

「食堂の従業員だった奴等も居るし、お前の考えている通り俺と同じ盗賊団の団員だった奴等も居る。寄せ集めの部隊にしか見えないけど、こっちの切り札も活躍してくれて騎士団の拠点を潰すのを手伝ってくれたしな」

「切り札?」

「多分あのでっかい奴の事じゃないのかな?」

 いまいちピンと来ない美智子に、先に気が付いた賢吾が口に出せばエリアスが頷いた。

「君の言う通りだ

「……やっぱりか。あのでっかいのって一体どんな原理で動いてるんだ?」

「あれは召喚獣だよ」

「召喚獣?」


 そう言えば何か聞いた覚えがあるぞ、と賢吾は自分の過去の記憶を探る。

「ああ、それなら騎士団からも予想の中でだけど話は聞いてるよ。魔物を使役するのに場所を取らない技術だって」

「騎士団も割と考えているらしいな。そうさ。確かにあれは場所を取らない。俺の場合は魔術であの杖の中にアディラードを出し入れ出来るんだ。僕があの貯蔵庫の洞窟の時に逃げられなかった理由は、一定以上の距離が離れると強制的に杖の中に戻されちゃうんだよね、アディラードが。と言っても僕もそれ以上の詳しい原理は分からないんだけど」

「は?」

 あのでかいアディラードをコントロールしていた当事者なのに、分からないとはどう言う事なのだろうか?

「いやいや、分からないっておかしいでしょ。あれは貴方が操ってたのよね?」

「そうだよ。今まで騎士団の駐屯地を散々あれで潰して来た癖に、今更になって分からないって言う言い訳は通用しないぞ?」

 まるで刑事ドラマの如く男に捲くし立てる賢吾と美智子だが、エリアスはブンブンと首を横に振った。

「本当に分からないんだ。俺も半年前、突然現れた茶色っぽい服の男に「これを使って王国騎士団を潰せ。それが御前の使命だ」って言われたんだから」

「はぁ?」


 作り話も良い加減にして貰いたいものである。

 いきなり目の前にそんな胡散臭い男が現れて、そんな途方もないレベルの使命を背負わされるなんて下手なファンタジー作品でもなかなか見かけないかも知れない話だ。

「何なのよそれ。笑わせないでよね」

「笑わせたくてこんな話をする訳が無いし、笑わせようとしてあのアディラードを操っていた訳じゃない。それは戦っていた君が良く分かっているんじゃないのか?」

「う……あの時の貯蔵庫の話……か?」

 その事実を突きつけられてしまうと口籠らざるを得ない。

「そうさ。ちなみにあれだって俺がこのエルマンとその部下に命じて破壊させようとしたんだ。だが予想以上に内部構造が広くて、急遽俺もついて行く事になったんだ。その時に君達に邪魔をされて、アディラードを出す事になった」

 そこで一旦言葉を切ったエリアスは、口元に微笑を浮かべて表情を変える。

「だが、君達はそのアディラードを退けてその杖まで使い物にならなくした。その時、俺は決めたんだ」

「何を?」

 キョトンとした顔で聞く賢吾に、エリアスはここに2人を連れて来た目的を告げる。

「君達を俺達の仲間に誘えば騎士団に対抗出来る、と考えたのさ」

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