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142.レメディオスの思惑

 美智子が差し出したスマートフォンの画面を見るエリアスとエルマンの2人は、絵画で写し取るのでは無いそっくりそのまま風景を記録できる未知の物体に驚きつつも、納得した表情を見せる。

「……これ、コック長が言っていたのと同じだな?」

「ああ。どうやって記録してんのかは分かんねーけど、ここまで完成されているとなればもう余り時間が無えかもな」

 納得した表情から次第に緊迫した表情に変わり、雰囲気も同じく緊迫したものに変わって行く2人を見て賢吾と美智子は疑問の声を上げた。

「何よそれ……一体どう言う意味?」

「何かまずいんですか?」

 余り時間が無いとなれば何か急がなければならないだろうと言うのは分かるものの、その詳しい説明がまだ一切されてない以上こうやって疑問を投げ掛けるしか無い。


 その地球人2人の質問に、エリアスはギシリと椅子を軋ませて答える。

「俺達が手に入れた情報だと、これはこの王国のみならず世界にまで悪影響をもたらす物だ」

「え?」

 いきなり話のスケールが大きくなった。

 今までこの王国がどうのこうのと言うだけの話だった筈なのに、こうも唐突にスケールの大きい話をされると賢吾と美智子も戸惑ってしまう。

 そんな2人に対して更にエリアスの説明は続く。

「あれは魔導砲って言うんだ」

「どんな物か大体イメージはつくな」

「なら話は早い。あれは選考会で王を含む城の人間の気を逸らしている間に、第3騎士団員達が急ピッチで材料の搬入と組み立てを進めていた物なんだ。そして選考会に合格した人間達に俺達の捜索を任せている間に、自分達は別の場所で同じ様に王国中の魔力を吸い取るレベルの魔導砲の開発を進めると言う話だ」


「それもあの声から聞いたの?」

 美智子からの質問にエリアスは首を縦に振る。

「ああ。それでまず、あの洞窟にあった材料貯蔵庫を壊した。君達とアディラードで戦ったあそこの話だ。壊したのは少しでもその魔導砲の開発を遅らせる為。それと、最初にアディラードの姿を君が見かけたあの島にはその開発施設の1つが極秘に造られていたんだ」

「え、そうなのか?」

 最初の島と言えば自分が目覚めた洞窟がある場所じゃないか、と過去の記憶を思い出した賢吾。

「うん。ちなみにそこはアディラードを使ってあの時に破壊済みだ。俺がワイバーンを使って色々と王国中を飛び回っていたのはその第3騎士団の陰謀を食い止める為。だからあの王都で、君達2人をワイバーンを使って連れて来ようと思ったんだけど……上手い具合に逃げられちゃったね」


 賢吾と美智子には、その時の光景が今でも鮮明に頭の中に蘇って来る

「あの時って……俺が物干し竿であの女頭目の追っ手を突き落としまくっていた時か?」

「そうだよ。ちなみにあの女頭目はあの時、既にレメディオス達と手を組んでいたんだ」

「えっ?」

 手を組んでいたとなると、自分があの女頭目と戦う事になったのも予定の内だったのだろうかと賢吾は頭を悩ませる。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。それってつまり、俺達を始末する為にあの女盗賊とレメディオスが手を組んだのか?」

「違う違う。騎士団と盗賊団の目的はそれぞれ別にあったんだよ。女頭目が君達を付け狙ったり、敵対関係に見せていたのはあくまでも周りの目をごまかすカモフラージュの為さ」

「カモフラージュ?」

「そう。女頭目率いる盗賊団は王国内の色々なスポットを知っている。それこそ騎士団も知らない様な場所をね。だから手を組めば極秘に開発が進められるポイントなんて幾らでも見つかるって言う訳」


 段々バラバラのピースが繋がって来た様な気がする賢吾と美智子。

「するとつまり……騎士団はあの盗賊団に開発場所を探してくれる様に頼んだ。盗賊団は騎士団に対して見返りとして金か何かを要求していたとなるのね?」

「そうなるね。その話と君達を売り飛ばそうとしていた話はまた別の話だから、恐らく手を組んだのは君達があの奴隷船から脱出して王都に戻る少し前とかのタイミングだと考えているよ」

「洞窟の鉱物を狙ったのもカモフラージュって話かも知れないわね」

「その可能性は高いね」

 それはそれで話が分かったのだが、それでも本気で自分達をあの女頭目は狙いに来ていた。

「じゃあ、私をわざわざあそこに椅子で縛って賢ちゃん達をおびき寄せたり北の洞窟で騒ぎを起こしたのもカモフラージュだったって事?」

 そこがしっくり来ない賢吾と美智子は、エリアスの傍らに控えているエルマンに質問する。

 元々彼はその盗賊団の分隊のリーダーを務めていた男なのだから。


 だが、美智子の質問にエルマンは渋い顔になる。

「俺に聞かれても詳しくは分からねえよ」

「え?」

「だって俺、あのウルリーカって女頭目に北の洞窟で鉱物を集めて来る様にって指示されただけだし。そもそも俺とあの女頭目は、俺が盗賊団に入ってから顔を合わせた回数が片手で数える位しか無えんだ。割と長くあの盗賊団に居るつもりだったんだが、指示自体はウルリーカ団長の部下が各方面に指示を出して今まで行動していたから、団長の顔もあんまり覚えてねえ。団長は部下の命なんて何とも思ってない様な女だったしな」

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