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141.それぞれの行動

 信じたくない。

 そう……信じたくない気持ちは確かにあるのだが、賢吾は少しだけとは言えその騎士団員達の怪しい行動を見てしまっている以上は完全に否定出来ない。

「前に俺、その騎士団員達が怪しい動きをしているのを見た事があるんだ。騎士団長のレメディオスから始まって、副団長のロルフ、それからその2人と仲が良いクラリッサって女の騎士団員もそうだ。色々と行動におかしな点があって、ちょっときな臭いものを感じていたんだ」

「例えば?」

「例えば……色々あり過ぎてどの時だったか忘れたんだけど、レメディオスが遠征か何かで王都を出ていた期間があったんだ。それでその騎士団の総本部に彼が戻って来た時なんだけど、本来ならその場所に居る筈が無い時にレメディオスの姿を騎士団の総本部の中で見た……気がするんだ」

「何だか曖昧な答えだね」


 歯切れの悪い回答をする賢吾にズバッとエリアスがそう言うが、賢吾も不確かな情報で物を言っているのだから実際にこうやって答える事しか出来ない。

「その……レメディオスを見た時は夜中に俺が出歩いていた時だったから、暗くて良く顔が見えなかったんだ。ただその背格好とか武器とか髪の長さで判断したのと、チラッと見えた横顔でもしかしたらレメディオスじゃないかと思っただけなんだよな」

「ふぅん……それならそれはまた別の機会に検証するとしよう。他に何かある?」

 他にと言われてまだ思いつくエピソードと言えば、城下町で見かけたロルフの話だ。

「それからロルフ副団長の姿も何度か見かけた事がある。これも同じく、その時は城下町に居ない筈なのに何故か城下町でロルフ副団長を見かけたんだ」

「それって何時の話?」

「確か……女盗賊団との因縁の途中だったかな。その時はハッキリロルフ副団長の顔を見たんだけど、また色々と女盗賊団に追い掛け回されたりしてたから何で城下町に居たのか聞けるチャンスが無かったんだよな」


 確かクラリッサにそれとなく確認した気がするものの、彼女にも上手い具合にはぐらかされたと言うかごまかされた記憶しか無い賢吾。

 そして、そのクラリッサ絡みの話が1番ショッキングだった。

「で、最後のクラリッサの話なんだけど……これは美智子から説明して貰った方が良いかな」

「えっ、私?」

「ああ、美智子も美智子で思う所があるんじゃないのか?」

 賢吾にそう聞かれる美智子だが、彼女は複雑な表情を浮かべて口を開く。

「あるにはあるけど……私の方も確証が持てないから何とも言えないのよね」

「言うだけ言ってみれば良いだろ? 俺達だって確証が持てるのはまだまだこれから先だと思ってるんだからよ」


 今までずっと黙ったままだったエルマンに唐突に後押しされ、だったら話すわと美智子はあの時の事を説明し始める。

「えーっと、食堂の人達の中に隠し通路を見つけた女の人の従業員が居たのよ。その通路を見つける切っ掛けになったのがクラリッサだったのね」

「ふむふむ。それだったら俺達も食堂の連中から話は聞いている。確か変な開き方をする扉が木の根元に隠れる様に設置してあって、その先に通路があって……だろう?」

「そうね。聞いているなら話は早いわ。その通路の先で大きな何か金属製の……兵器? みたいな設備を騎士団員達が黙々と制作中だったのよ」

 そう言いながら、美智子はポケットからゴソゴソとスマートフォンを取り出して電源をオンにする。

「その時、証拠になるかもしれないと思って写真を撮ったのよね」

「え……何時の間に?」

 一緒にあの壁の陰で設備が建設されているのを見ていた賢吾とコック長には、シャッター音すら聞こえなかった筈。


 だが、美智子は首を横に振る。

「いや……ちゃんとシャッター音はするわよ。試してみるわね」

 スマートフォンを構えた美智子はエリアスとエルマンに向けてカメラを発動。

 カシャッと電子音が聞こえて、スマートフォンの画面にキョトンとしているエリアスとエルマンの写真がアップされた。

「ね、聞こえたでしょ?」

「あ、ああ……何も聞こえなかったからてっきりシャッター音が無くなるあの……無音アプリでも入れているのかと思ってたぜ」

「入れないわよそんなの。多分それってあの設備を見るのに集中していたから聞こえなかったんじゃないかしら?」

「そうかもな。で、それに写真を保存してあるのか?」

 自分のスマートフォンはあの滝へのダイブでオシャカになってしまったので、美智子のスマートフォンが生き残っていただけでもありがたいと言えばありがたい。


 しかし、そんな物を見るのは当然初めてであるのがエリアスとエルマンだ。

「そ、それ……何だ?」

「そんな薄くてちっちゃい箱で何が出来るって言うんだ?」

 エリアスはキョトンとした顔のままで訪ね、エルマンは若干馬鹿にした口調で尋ねる。

「あー、今はまだ説明するよりも見て貰いたい物があるからまたの機会でね」

 そんな彼等の疑問を一旦流し、美智子はスマートフォンの画面を指でスイスイと操作してその時撮影したと言う設備の写真をエリアスとエルマンと賢吾の男3人に見せた。

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