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12.暫しの休息

「この辺りまで来れば今の所は大丈夫ね……」

「それなら良いが……何なんだ、あれは……」

 あの炎に包まれていたモンスターから遠ざかり、人間も馬も疲労困憊状態の2人と1匹。

 しかしまだ完全に戦場から脱出出来た訳では無い。

 クラリッサに連れられて、最終的に王都へと辿り着くまでが今の目的なのだから、まだ王都まで何が起きるか分からない。

 まして、ここは地球と違う「異世界」だと言う事をあのモンスターの登場ではっきりと認識させられてしまった以上、賢吾は嫌でもその事実を受け入れるしか無くなってしまった。

(まさに、事実は小説よりも奇なりって言う事か……)

 山の中から一気に走り下りて来ただけの事はあるせいか、馬とクラリッサの体調が回復するのにはまだ時間が掛かりそうだ。


 そこで休憩がてら、これから王都に着くまでどう言うルートを考えているのかを賢吾はクラリッサに聞いてみる。

「王都までは確か半日掛かると言っていたが、まだこの先はずっと馬に乗り続けるのか?」

 そうだとしたら尻が痛くなりそうだ……と自分の尻を無意識に手でスリスリと撫で回す賢吾だが、クラリッサの回答でどうやらその可能性は無いらしいと言う事を知る。

「ううん、この街道を少し走ったら船に乗るわよ」

「船?」

 船に乗ると言う事は海か川を渡って王都に向かうと言う事だろうか?

 賢吾がそれを尋ねれば、クラリッサは当たり前だとでも言う様に首を縦に振った。

「ええ。海を渡ったこの小島も私達の領土だからね。その領土内で魔物が出たとなれば、今回みたいに海を渡ってでも討伐に向かうのが私達王国騎士団第3部隊の仕事なのよ」


 そのセリフに、賢吾はまた気になる事が出来たのでそれもついでに聞いておく事にする。

「そう言えば、第3騎士団と言う名前からすると第1と第2騎士団も存在するのか?」

「勿論よ。役職の違いについて知りたいのかしら?」

「ああ、差し支え無い範囲で構わない」

「別に差し支える事なんか無いわよ」

 王国に住んでる人ならこれは常識だからね、と言ってからクラリッサは自分が所属している騎士団の部隊編成について話し始める。

「まず、王国騎士団は全部で3つの部隊に分かれているわ。さっき話した魔物討伐が主な任務の私達第3騎士団、それから王国の各地に存在する街や村の警備担当が第2騎士団。最後に王都の治安を守るのが第1騎士団ね」


 だが、まだ話には続きがあるらしい。

「その上に位置しているのが近衛騎士団よ」

「近衛……何かの本で読んだ事がある程度だが、確か王様の警護とかの役割をする役職の?」

「そう。近衛騎士団の団員達は自分達が王族を守っている分プライドが高いけど、そのプライドの高さに恥じないだけの実力は勿論持っているわ。レメディオスだって元々は近衛騎士団の人間だったんだからね」

「ふぅん……」

 騎士団長が元々近衛の人間……と言われても、今の賢吾は特にリアクションをする気が起きなかったのでとその後に生返事をするだけである。

 他人の過去をいちいち詮索する様な人間では無いし、そもそも出会ってからトータルでおよそ1時間にも及ばない人間の過去なんて興味も無い。


「あら、反応が薄いわね? てっきりもっとびっくりするのかと思ってたわ」

 そう言いながら、すぐそばを流れている川の水を持参している皮袋にガバッと一気に汲んだクラリッサはもう1つの皮袋を取り出してそれにも同じく水を汲む。

「飲む?」

「ああ、どうもありがとう」

 目の前で水を汲んで差し出されたら断る訳にもいかないので、素直にその皮袋を受け取った賢吾は中の水を自分の胃にゴクゴクと収め始める。

 そんな賢吾を見て、クラリッサはこれから先の予定について同じく水を飲みながら話し始めた。

「さっきも言ったけど、この道をずっと進んで行けば20分程で小さな廃村に着くわ。そこに船着き場があって、私達王国騎士団が乗って来た船が沢山置いてあるからその中の1つに乗って王都に向かうわよ」

「その後は城に行くって話だったな?」

「そうね。もっときちんと貴方の事を取り調べなきゃいけないから、そこは王国の治安維持の為にも協力して貰わなきゃね」


 むしろ城に着いてからが色々と自分の修羅場になるだろう……と賢吾は予想がつく。

 しかし、それよりも気になるのはやはりあの異形のモンスターだ。

「あの炎を纏った奴、上手く撃退出来たかな……?」

 心配そうな口調で賢吾が呟くと、それに反応したクラリッサは思わず首を横に振る。

「心配は無いと思うわ。例え倒せなかったとしても、この島に私達が来た事によってあんな魔物が居るって事を陛下に報告すれば、もっと大規模な討伐部隊が編成出来る筈だから」

 あのモンスターと出会った時には驚いてとにかく逃げるのに夢中だったクラリッサだが、今は幾分か落ち着いたらしく自分と一緒に魔物討伐に来た騎士団の人間の安否を気遣う素振りを見せている。

「正直言ってあんな魔物は生まれて初めて見たけど……私達だって王国騎士団の団員だから修羅場は沢山潜って来てる。討伐はあの様子だと難しいかもしれないけど、討伐出来ないなら出来ないで退く事も大事だしね。レメディオスやロルフが指揮を執ってるんだもん、きっと大丈夫よ」

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