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126.ついてない

 夜が明ける前から降り始めた雨は、賢吾だけでは無く別の人物達にも影響を及ぼしていた。

「全く……ついてない」

 空を見上げてフードの男が呟く。

 夜は何かと冷え込むし視界も悪いし、何より眠くなるので早く寝て朝早くから捜索活動を再開しようと思っていたのに、その朝の天気はまさかの雨模様。

 今はまだ小雨だが、空を見る限りではこのままだと本降りになるだろうと見越しながら馬を走らせる。

 こんな状況下では捜索活動も捗らないし、雨に打たれて自分達が風邪をひいてしまったらその間にあの男にまたドンドン逃げられてしまう。

 この天気で外に居るのはリスクがあるので、とにかく何処かで雨宿りをしなければならないのだ。

 そもそもあの賢吾とか言う男が流されて行った川は途中で山の中を横切り、更にその山を抜けた先で2方向に分岐しているので下流まで向かうのもかなり時間が掛かるのだ。

 それこそ途中で山の中に潜伏されたらその山で捜索をしなければならないし、川の流れが分岐しているなら更に捜索チームを半分ずつに分けなければならない。


 とにかく下流に向かって進んで来れば先回り出来ると考えていたフードの男とその部下達だったが、自然の逃走ルートがその作戦の邪魔をしている。

(本当にワイバーンが使えれば……)

 中途半端に騎士団に目をつけられてしまっている以上、1番効率的な捜索方法が使えないのは自分達にとってもかなりの痛手である。

 とりあえず上流で捜索活動を続けているであろうイルダー達にも連絡をしたいのだが、まずはとにかく何処かで雨宿りをするのが先決だ。

(確かこっちの方には村があったな)

 2方向に分かれている道の手前で、まずは一緒に捜索の為に連れて来た部下達を半分ずつの人数に分けて、何処かで雨宿りの後に引き続きその捜索活動に当たらせる事を決定。

 その後、自分はその部下の半分を連れて分かれた川を下流側から上流側に向かって左方向に進み、少し進むと川のほとりの村が見えて来る。

 人里離れたあの崖の上の屋敷を拠点として今までさんざん活動して来たフードの男にとっては、この辺りは自分の庭の様なものだ。

 それだけにあの男に逃げられてしまうと言うのは、いわば自分のホームグラウンドで失態を犯してしまうのと同じ様な事なのでそうなってしまえばかなり悔しい。


 とにかくその村で雨宿りをするべく馬を走らせたフードの男とその部下達は、本降りになって来た雨に打たれながらようやく目的地に辿り着いた。

(うへぇ、びしょ濡れだ……)

 魔術を使えば服はすぐ乾くのだが、何時までも外にいればまた雨に濡れてしまうので村の建物で入れそうな場所を探す。

(この時間だし、まずは腹ごしらえも兼ねるとしよう)

 最初に向かったのは宿屋。

 と言っても泊まる予定では無く、日帰りの予定で部屋を借りてそこでまずは魔術を使って自分と部下達の服を乾かす。

 武器以外に高度な魔術も使える彼にとっては、この程度の魔術であれば何と言う事は無いのだ。

 ついでにそこで風呂にも入って、雨で打たれてしまった汗臭い身体を清めてから朝食を摂りに酒場へと向かった。

 この村に来るのは実は今まで生きて来た中で3~4回目位なので、顔見知りの人物は居ないと言っても良いだろう。


 このフードの男は主にワイバーンを移動手段にしていたからと言うのもあるが、近隣の村や町には余り出向かずに逆方面で国境を越えてアイクアル王国へと向かっていた。

 そっちの方が色々と遊び場があったし、何より親の仕事の関係でアイクアル王国に行く事が多かったので自然と活動の場所がアイクアル王国中心になって行っただけの話なのだ。

(確かにここの村からも国境はそれ程遠くないんだが、俺のあの屋敷からの方が断然国境に近いからわざわざこっちに来る必要が無いだけなんだよな)

 こっちのルートを選ぶのは王都に向かう時しか子供の時から覚えが無いし、王都に向かう前に色々と旅の準備をしてから出発するので別にこの村に立ち寄らなくても問題が無かった。

 何か急に必要な物を買い足す時にこの村に立ち寄っていたのだが、歳を取って成長して気がついてみればもうワイバーンを乗りこなせるテクニックが身についていたので、この村への訪問はしなくなったフードの男。


(それがまさか、こんな形でまたこの村を利用する事になるなんて……)

 自然と苦笑いが漏れる。

 でも、今の状況でこの村に顔見知りが居ないと言う事はメリットもデメリットも両方ある。

 顔見知りが居れば色々と融通を利かせて貰えてあの男の関しての情報も集まりやすいかも知れないが、居ないとなると自分で誰かに聞き込みをしなければいけない。

 それに仲が良い人物が居れば、指名手配中である自分をかくまってくれる展開もあっただろう。

 逆に顔見知りが居なければ、自分が王国騎士団から指名手配されていても騎士団に突き出される心配が無いし、フードで顔を隠していれば顔がばれる心配は無い。

 それでも、指名手配されてからそれなりに時間が経っているので行動には注意しなければならないのだが。

(やれやれ、本当についてないもんだ)

 それなりの人数の自分の部下達も一緒に居るのでそれだけ目立ちやすい事を踏まえ、フードの男は数人の部下を連れて聞き込み調査を開始した。

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