表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/258

121.動き出す騎士団

「どうだ、足取りは掴めたか?」

「いいえ……最後にワイバーンの目撃情報があったのがこの街で、後は……」

「全く、余計な仕事を幾つも増やしてくれるもんだぜ……!!」

 シルヴェン王国第3騎士団の副団長ロルフと団員クラリッサの2人は、それぞれ部隊を率いて賢吾と美智子の捜索に当たっていた。

 食堂の従業員達の宿舎に行くと言ってそれきり姿を消してしまった2人の異世界人の行方は未だに掴めず、2人が消えてからこれで3日目が過ぎようとしている。

 しかも姿を消したのは賢吾と美智子だけでは無く、食堂の従業員の約20パーセントも出勤していないのだ。

 それに加えて、まずは見習いから騎士団に入団すると約束していたイルダーも、賢吾と美智子が食堂の従業員達の宿舎に行った前日からプッツリと姿を見せなくなった。


 賢吾と美智子が食堂の宿舎に行った翌日、総本部の部屋にも戻って来ていないし城や城下町でも誰も姿を見ていないとの事で騎士団の間にざわめきが起こるのにそう時間は掛からなかった。

 イルダーが姿を見せなくなってしまったのは後回しにするとして、宿舎で何か事件に巻き込まれたのでは無いかと騎士団の2人は見当をつける。

 城下町や城の方と同時に、勿論その宿舎の方にも騎士団員を向かわせて賢吾と美智子の行方を調べていたレメディオス達だったが、そこで今度はコック長や狼獣人のコック等、騎士団員達の間でも良く知られた顔が行方不明になっていた。

 特にコック長とは騎士団の食堂のメニュー考案や材料の仕入れ等でレメディオスが良く知っていた人間だっただけに、それこそ何故いきなり姿を消してしまったのかレメディオスと仲の良い2人も理解出来ない。

「あの2人が居なくなったのが3日前の夜だとして、その深夜に王都の近くで怪しいワイバーンが目撃されているとの情報があったからこうして捜してっけどよぉ……これじゃ俺達もどうしようも無えぜ」

「全くよね」

 ロルフのぼやきにクラリッサも同調する。

 その目撃情報があってからこうして捜し回っている騎士団員達は、つい先日割り振られたばかりのあの選考会を突破した追撃部隊も総動員して捜索に当たらせていた。


 ロルフやクラリッサが考えるに、そのワイバーンの操縦者と言うのはもしかしたらあのフードの男かも知れないからだ。

 以前、賢吾と美智子をあの盗賊団と結託していた奴隷船から助け出した時にフードの男がワイバーンを使っていた、とその助け出された張本人の2人から証言があった訳だし、ワイバーンで連れ去られると言ったらもうその男しか思い浮かばなかったのだ。

「その男、色々と行動がチグハグだよな」

「ええ。あの賢吾って人に死んで欲しくないって言ってたらしいけど、その割にはあの大きな魔物を操って崖の上で散々あの2人を追い詰めたって話だし……そもそも最初のあの島で私はあのフードの男と賢吾が殺すか殺されるかの争いをしているのをこの目で見ている訳だしね」

「訳分かんねーな。とにかく、俺達と一緒に行動しているこの選考会を勝ち抜いて来た奴等も元々はそのフードの男を捜す為に結成された奴等なんだから、手間が省けると言えば省けるんだけど……やっぱり余計な仕事には変わらねえな」


 それに、今回の捜索隊にはレメディオスは居ない。

 第3騎士団の団長としての職務も沢山あるし、そうそう何度も王都を離れる訳にもいかないので今回はロルフとクラリッサだけなのだ。

「それはそうと……レメディオス団長はちゃんとやってるかな?」

「少なくとも貴方よりはちゃんとやってると思うわよ」

「何だよそれ」

「そのままの意味よ。私と貴方は騎士団に入団するずっと前からの幼馴染同士なんだし、貴方の性格は私が騎士団の中で1番良く分かってると思うけどなぁ」

 ロルフとクラリッサの関係は賢吾と美智子に似たものがある。

 幼馴染として育った2人はよく一緒に行動していたし、騎士団の入団試験だってロルフが受けるからクラリッサも受けた様なものだった。

 男勝りな性格で長い斧を武器として使うクラリッサとの手合わせも数え切れない程して来たし、彼女が今こうして「自分はロルフを良く知っている」と言っているのと同じ位にロルフもクラリッサの事を良く知っているのだ。


 そんな幼馴染の2人はこうしてまた一緒に行動している訳だが、気掛かりなのは賢吾と美智子の事だけでは無い。

「まぁ、レメディオス団長なら心配無いよな。あの人もあの人で近衛騎士団からやって来た人間なんだし、色々と騎士団の内部調査も極秘にやってるんだから抜け目無いよな、本当に」

「ちょっと、声が大きいわよ」

 慌てた様子でロルフの口を手で塞ぐクラリッサに、塞がれたロルフはくぐもった声で謝罪する。

「う……ふ、ふむぁん」

「内部調査はレメディオスに近い私達2人しか知らないんだから、そう言う所は気を付けてよね」

 クラリッサから注意をされたロルフだったが、やはりその内部調査の進み具合も気になる所だ。

 怪しい動きをしている人間が居ないかと言うのも、近衛騎士団所属だったレメディオスならば調べるのはそう難しくは無い。

 だが今回はどうやら食堂の人間が絡んでいると言う裏をかかれた結果になってしまったので、ロルフとクラリッサもさっさとその行方不明の人間達を探し出さなければならないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ