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115.目覚めた場所は?

 食事に入っていた睡眠薬の効果で眠ってしまった賢吾が目を開けてみると、そこは何時もと変わらぬ騎士団の総本部の部屋……では無かった。

 キョロキョロと周りを見渡してみると、今の自分が居るのは木製の壁と床で造られている何処かの部屋の様であるのが理解出来た。

 白い壁と赤い絨毯で彩られている騎士団の部屋では無い事が分かった賢吾は、ひとまず起き上がって部屋と自分の今の様子を確認する。

(こんな部屋、今まで俺は見た事が無い……。俺は特に何も無いみたいだが美智子はどうなったんだ?)

 気絶から回復した時とは違い、美智子の姿が何処にも無いのだ。

 賢吾と美智子が意識を失う直前、最後に見たあのコック長の男がニヤリと笑う光景からすると、きっと良くない事が起こっているのだろうと言う予想が簡単に出来た。

 とにかく今のこの状況がどうなっているのかを確かめないといけない。


(縛られたりはしてないみたいだな……)

 自分が寝ていたボロいベッドに身体が固定されていた、なんて事が無くてまずは安心だがまだまだ心は不安なままだ。

 ベッドから起き上がったままの体勢で辺りを見回して、人の気配が無いかどうかを確認する。

(人の気配はしないか……)

 とりあえず行動しないと何も始まらないので、賢吾はまず窓を開けてそこから見える景色で外の様子を確認する。

 その景色は夕方であり、騎士団の宿舎から見えていた様な街を見下ろせるものでは無かった。

 階数で言えばどうやらここは5階らしい建物の外に見えるのは、木々が元気に生い茂っている森。

 その向こうには平原が広がっており、更にその奥には大きな山脈が見える。

(シロッコって言う王都の近くには森も山も無かったな。平原があると言う事は街道もあるのか?)

 そもそもここは本当にシルヴェン王国なのだろうか?

 自分が眠ってしまっている間に、何処か別の国へと連れて来られた可能性だってある。


(出入り口はこのドア1つだけか……)

 窓からの脱出はベランダでもあれば降りられそうだったが、あいにくそんなご立派なものはついていなかったのでドアから出るしか無いらしい。

 しかし何が待ち受けているか分からない以上は、迂闊に外に飛び出るのはまずい。

 まずはぴったりとドアに張り付き、外の様子を耳で窺う。

(やけに静かだ……)

 人の気配がしないのも何だか気味が悪い。

 とにかく外に出る為にドアを引っ張ってみる……が、ドアは開いてくれない。

 だったら押してみたらどうだろう、とゆっくり押してみても駄目。

(……あ、もしかして……)

 あの地下施設へと続くフタの様に、ガラガラと横に引っ張って開けるドアになっているんじゃないかとその方向に力を入れてみるが……駄目だ。

 下から上にシャッターの様に収納するドアなのか、まさかな……と思って賢吾はドアを持ち上げてみようとしたが、これも駄目。

(駄目だ、開かないな)


 考えられるだけのドアの開け方は全て試してみた。

 これで開かないと言うならば、後はこのドアに鍵が掛かっていると言う事になる。

 自分に魔術が使えるのだったらドアを魔術でぶっ壊してでも外に出たい。

 もしくは武器が使えてそれを今持っている状況なら、同じくこのドアをぶっ壊して外に逃げる。

 だがどちらもそうそう都合良くは行きそうに無い。

(使えそうな物は無さそうだな……)

 この部屋の中にあるのはさっきまで自分が寝ていたベッド、それから木製の簡素な椅子にテーブル。

 ベッドなら持ち上げて投げつければドアを壊せるだろうが、そこまでのパワーはあいにく賢吾は持っていない。

 テーブルと椅子は投げつけてもドアは壊せないだろうと判断し、大人しくここで過ごす事にする。

(何が一体どうなっているんだ……)

 誰かに聞きたくても聞けない今のこの状況に、賢吾の頭はパニック状態である。


 脳内が悶々とした状況になっていたその時、部屋の外から話し声が聞こえて来た。

「……!!」

 素早くドアに張り付き、外の様子を再び窺う賢吾。

(誰かが来る……それも1人じゃないな、3人位かな……?)

 明らかにこの部屋に向かって歩いて来る足音も話し声に混じっているのだが、その会話の内容までは聞き取れそうで聞き取れない。

 とりあえずドアに張り付いたままでは危険なので、まず賢吾はドアノブの位置を確認する。

(このドアノブのついている場所からすると、ドアの開き方は……)

 自分の予想が当たっていてくれる事を信じ、出来る限りその小柄な身体を更に小さくしてドアの横の壁に張り付く。

 上手く行くかどうかは1発勝負だ。


 ドアの壁に張り付いた賢吾の耳に、どんどん話し声と足音が近付いて来る。

「……で、あの男はここなんだろ?」

「そうだ。今はまだ寝ている筈だ」

 その声と共にドアがゆっくりと開く。

 だが次の瞬間、その声の主の驚きのセリフが聞こえて来た。

「……おい、居ないぞ!?」

「何だって!?」

 そんな馬鹿なと一目散に部屋に飛び込んで来た人物の姿に、そーっとドアノブを引っ張って上手く壁とドアの間に身を隠した賢吾は見覚えがあった。

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