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107.vs食堂の戦闘集団

 食堂の宿舎の正面玄関は両開きの木製のドアになっている。

 賢吾はその木製のドアに走って勢い良く片側のドアを開け、そして閉める。

 ただし閉めるタイミングは、そのワシ獣人のナイフを握っている右手が丁度挟まるタイミングでだ。

「ふんぬ!!」

 ギリギリまで引き付けて、突き出された右手がドアに滑り込むタイミングでもう片側のドアとの間に勢い良く挟む。

「ぎゃはあああっ!?」

 二の腕の真ん中辺りを思いっ切り挟まれたワシ獣人は、余りの痛さにブレッドナイフを落としてしまう。

 それを確認した賢吾は、ドアの向こうに居るワシ獣人の体目掛けてドアを思いっ切り押してぶつける。

「ぐえ!?」

 顔面にクリーンヒットしたドアのせいで、翼をはためかせるのを止めざるを得なくなったワシ獣人は地面に落ち、ドアをそのまま押し開けた賢吾はそのワシ獣人の顔面にサッカーボールキックをかましてノックアウトさせてからようやく宿舎の中へ。


(確かコック長の部屋は最上階の4階だったな)

 30階建てのマンションを上って行かないだけまだマシであるが、その分この食堂の宿舎は横になかなか広いので上に続く階段を探すのは良いとして、そこに至るまでにまだ沢山の従業員を相手にしなければならないとなると骨が折れそうである。

(とにかく4階に直行だ!!)

 鼻の汗を指で拭いつつ、力強い足取りで賢吾は廊下を進む。

 そんな廊下の両脇に備え付けられている木製のドアが1つ開き、そこから1人の従業員がゆっくりとした足取りで出て来た。

「ふん!!」

「ぐほ!?」

 目の前に立ち塞がろうとした人間の男の従業員にまずは前蹴りで先制攻撃。

 怯んだ男にもう1発前蹴りを腹にかまして再度怯ませ、ジャンピングニーでノックアウトさせる。

 その男をノックアウトさせた音が響いたらしく、多数の従業員が廊下から続くドアから出て来たので賢吾は

 一旦踵を返して別の廊下へと走り出した。


「……どうやら始まったみたいだな」

 本格さを出す為に椅子にロープで縛り付けられている美智子。

 ハッキリ言ってこの状況はあの洞窟のデジャヴなのだが、賢吾が必ず助けに来てくれると信じて待っているしか無い。

 それでも、コック長がまるで挑発するかの様に彼女に言った一言が気になっていた。

「ねぇ、私が上手く逃げ出せそうなら逃げ出しても良いんでしょ?」

「ああ……そうだな。だが私のこの部屋の周りには、さっきの食事会の時にあの男から話を聞いていた部下達が集まっているから、そうそう負けはしないと思うがな」

 賢吾はさっきの食事会の時に、自分が習っている日本拳法について説明をお願いされてその攻撃方法や弱点までを話していたのだ。

 その後にまさかこんな展開になるとは思ってもいなかったので、その弱点をも知っている従業員を側近として配置したとなると賢吾でもかなりきついだろう。


 だったらこのロープを解いて逃げられるのであれば逃げたい。

 洞窟の時は幸運にもあのイルダーと言う銀髪の男に助け出されたのだが、そのすぐ後にまた囚われの身となってしまった。

 奴隷船に乗せられた時は賢吾と協力してロープを解く事に成功したものの、もしかしたらこの先こう言うシチュエーションに必ずならないとも限らない。

(でも……私は縄抜けなんてやった事無いのよね)

 関節を外すとかしないとロープから抜けるのは不可能だろうと考えるが、今まで美智子はそんな荒業をした事が無いので無理だ。

(ええと……手首が椅子の背もたれの後ろで縛られてて、身体も腹と胸の部分がロープを背もたれに回される状態で縛り付けられてるでしょ? そして太ももも椅子の座面に縛り付けられてる上に両足首も椅子の脚に縛られてて……うん、無理ね)

 念には念を入れてガチガチに固定され、椅子と一体化しているこの状況だと脱出は見るからに不可能だ。


 ロープを何とかコック長に気付かれずに解ければ良いのだが、暴れて無理に外そうとすれば間違い無くバレてしまう。

 周りを見渡してもそうそう都合良くロープが切れそうな物が以前の奴隷船の時の様に落ちている訳でも無く、今は一旦諦めるしか無い。

(でも……チャンスが来たら必ず脱出してみせるわ!!)

 コック長は少し魔術が使えると以前自分で言っていたが、その両手には小型のバトルアックスが1つずつ握られている。

 魔術が通用しないと言う情報が賢吾と美智子からもたらされていた事による対策だろう。

(斧の使い手……だけどクラリッサよりも小振りな斧を使うみたいだからどう戦うのかしらね?)

 その戦い方に興味はあるのだが、今はそれよりもこの状況から自分が脱出出来る様に頭を回転させる。

(少しずつだけど……やれるかしら?)

 ロープを解く為に、身体を最大限によじって擦り切れないかどうかを美智子はチャレンジする。

 と言うかこれ位でしか脱出の方法が思いつかないのだが、やらないよりはマシだろう。

 首から上しか満足に動かせないこの状況で、自由を得る為に美智子は行動し始める。

 全ては今もここに辿り着いて自分と合流するべく戦っている幼馴染と、無事に再会してここから脱出する為に。

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