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きゃーお、異世界。  作者: nekoko
2/17

女神様寝る、時々、動く

 レアルは緊張して襟首を正した。


 無理もない。これから、上級神シアーから捧げられたという、女神に会う。


 女神様というと、どんな人なのだろう。


 レアルは想像した。


 やっぱり、美しくて、優しくて、慈悲深いお方なのかなあ。


 神殿の突き当たりの部屋にきて、レアルは上級神シアーと先輩神官エンドルに感謝した。




 梨果は寝ていた。


 異世界シアトロルにきてから深い眠りについている。


「お起こししてもよろしいでしょうか」


 現実世界からの声か。うるさいなあ。


「女神様、失礼致します」


 次に梨果が耳にしたのは、つんざくような音。



 グワアン! ゴワアン! グワアン! ゴワアン!



 ゴロングワン……ゴロングワン……!



 静かに梨果の瞼が、若干動いた。


 え? ここどこ?



「良かった! 女神様!」



 レアルがほっと安心したように息を吐く。手には紐。


 紐はずっと長く続き、崖の上の大神殿、イキテールの聖なる鐘に繋がっている。


 女神の降臨を、改めて民衆に知らせる為、八つある鐘、全てが鳴った。



 当の女神と思しき女は、寝台の上で大あくびをした。そして、また寝ぼけ眼を閉じようとする。


 レアルは冷や汗をかいた。


 これから、女神様にお伝えしなくてはならないことが沢山あるのに。儀式だってあるのに。


 女神が寝てしまう。


 務めを果たすことに、レアルは若干の、いや、かなりの不安を抱き始めた。


「あの、女神様」


「はぼ?」


 よくわからないまま、答えたのは、髪の毛がぐじゃぐじゃの、まぎれもなく、現実世界でニート、祭野梨果だった。


 梨果は首を振った。


 そしてまた欠伸をした。今度は梨が丸ごと入るくらい大きいやつだ。



 レアルは後退った。


 何せ、女神様だ。


 やること、なすこと、全てが恐れ多い。



「ははあ!!」


 最上級の礼を取り、レアルは頭を床につける。



 ぐるぴー。ぐーすか。



 レアルは、また冷や汗をかいた。


 まずい。神聖なる女神様は、何か御所望だ。


 小机の上のベルを鳴らす。片手は床につけたままだ。何せ女神様だ。顔を上げては無礼にあたる。



「ご朝食をお持ちしました」


 外から下級神官の声がした。



 梨果は「朝食」という言葉に、はっきりと目を覚ました。


 ずっと、食べていない。ご飯。


 さすがの昼寝好き梨果も、ご飯には負けだ。


 で、改めて、思う。


 ここ、夢の中?


 なら、早く起きないと、ご飯が食べられない。



 梨果は唐突に、寝台から立ち上がった。


 側の少年がひるんだ気がしたけれど、所詮夢の中の登場人物だ。



 レアルは頭の中で、右往左往した。


 突然、御寝所から立ち上がった女神様は、なんていうか、聖なる威厳に溢れていた。


 今も神殿の柱の向こうからやって来る風に、長くて複雑に編んだ髪を、神々しくなびかせている。


 やっぱり、自分じゃ無理です、修行が足りません。


 レアルは、ほふく前進で、部屋の扉に向かって歩いた。



 夢から覚めるにはどうしたらいいのか。


 梨果の答えは決まっていた。


 子供の頃、怖い夢を見た時は、決まって、空を飛んだのだ。


 すると、不思議と目が覚める。


 絶叫マシンはダメでも、空を飛ぶのは平気。


 白い柱の向こう、青空が見える。


 梨果は空に向かって、歩き出した。



 レアルは扉の隙間から、黄金のお盆にのせられた食事を受け取った。


 食事を運ぶには、歩くしかない。緊張した面持ちで、レアルは膝を床から離し、お盆を持ち上げた。そして、振り返った。



 梨果は、どこから飛ぼうかと、床と空の境をふらふらと歩いていた。



 レアルは女神が、崖っぷちにいるのを見た。


 見る間に顔が青ざめる。




「女神様!!!」




 女神の長い服の裾に、レアルは飛び付いた。




「うわああ!!」


 梨果とレアル、両者が一遍に叫んだ。


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