春
きっと僕はこの時のことを忘れないだろう
今日は何気もない平日だ
いつもより早く目を覚ました僕は枕元にある時計を見る
(・・・まだ5時30分か。もう少し寝れるな)
そう思い再び布団に身を委ねようとした時、急にドアが開いた
「 起きて!」
このうるさい声はきっと幼馴染の侑芽だろう
声と同時に布団を激しく剥ぎ取られ冬の寒さが体に染みた。
「朝だよ!起きて!もう学校に行く時間だよ!」
こいつ頭大丈夫だろうか
少し心配になりながら、乾いた口を開く。
「まだ5時半じゃないかいつもより30分早いよ。っていうかなんでおれの部屋にいるの?」
きっとこいつがいるってことは二度寝はもう出来ないだろう
「おばさんが入れてくれたんだよ!」
いつものことか。そう諦めながら仕方なく布団から体を起こす
窓の外は一面雪景色で綺麗だった。
そう感傷に浸りながら侑芽を見るともう少しで高校二年生になるのにまだ見慣れない制服を着ていた。
やっぱり似合わないな。
「とりあえず顔洗ってご飯食べようよお腹減った」
「まぁ顔を洗うっていうところまではわかる。でもなんで侑芽も朝ごはん食べようとしてるの?」
「おばさんが食べて行きなさいって言うから仕方なくだよ」
仕方なくとは言いつつもどこか嬉しそうに、そして当然のような顔をしている。
少し母さんも甘やかしすぎではないだろうか
そう思っても仕方ない。顔を洗うべく洗面台へ向かう。
「顔洗ってくるから侑芽は部屋で待ってて。ご飯できたら呼ぶからさ」
言うが早いか侑芽はもうさっきまでおれがいた布団に入り漫画を読んでいる。
「はーい。待ってるから早くしてねー」
思うところはあったがなにを言っても仕方ないと思い、廊下を歩き洗面台へ向かった。
やはり冬だ。顔を洗う水が冷たい。
顔を洗い終わるとほぼ同時に着信がなる。こんな早い時間に誰だろう
いやこのうるさい着信音は・・・
「もしもし」
「おそーい!もう顔を洗うだけで何分かかってるの!」
「まだ10分も経ってないだろ!?っていうか部屋にいるんだから電話じゃなくて直接言えよ!」
「歩くのだるいんだもん大声出すのもめんどくさいし」
「そういえばご飯できたってさ」
そう言った瞬間電話が切れ階段をドタドタと降りてくる音が聞こえる。
本当に食欲に関しては行動が早い。
そう思いながら居間からおれを呼ぶ声がして居間へ向かう。
朝のご飯を食べ、歯を磨き、時間を見るとまだ30分も余裕がある
「侑芽、明日からはもう少し遅く起こしてくれないか?」
不満げに愚痴をこぼす。
「あ、やっぱり?ちょっと早すぎるかなとは思ったんだ」
少々、若干申し訳なさを顔に出し侑芽が言う。
まぁ仕方ない。少し早いけど学校へ向かおう。
「行ってきます」
がそう言うと奥から行ってらっしゃいと母さんが言う。
玄関を開けるとやはりまだ12月だ。雪もあるし寒い。布団に戻りたくなる気持ちを抑え、外に出る。
「寒いねー」
侑芽が少しはにかみながら、そして少し嬉しそうに声を出す。
「そりゃ冬真っ盛りだしな、あと四ヶ月もしたらあったかくなるよ」
そんな何気ない会話をしていたら学校へ着いた。