採集クエスト:火トカゲの尾
「火トカゲの尾? ……フェニックスのじゃあなくてかい?」
カウンター越しに立つ大柄の男は、店主から渡された一枚の紙を見て不思議そうに聞き返した。
「ええ、フェニックスの尾ではなく火トカゲの尾です。と言うかフェニックスなんて相手にしたら丸焦げにされちゃぃすよ?」
レイン・モートルクは大柄の男グルカノの言葉に頷いてカウンターから真後ろの本棚に手を伸ばした。
「旦那を疑ってるわけじゃなく聞くが、そんなの一体何に使うんだい?」
傭兵はモンスターを倒すためだけではなく、そのモンスターから骨や皮などの素材を採集するための任務も受けている。
その時傭兵達は自分達が悪事の片棒を担がないよう依頼主に使用方などを聞く事ができる。
グルカノは純粋な好奇心から知りたいと思ったので言葉を選んで尋ねてみた。
「火トカゲの尾は耐熱性に優れているので、真っ直ぐ繋げて菜箸にしようと思ってます」
「他のと比べて随分と普通なアイテムだな」
「僕の作ったアイテムは全部普通です」
レイン・モートルクは心外だとばかりに似合わぬ眼鏡を掛け直す。
「いやいや、回り続ける独楽とかインクがしたたり続ける羽ペンとか普通じゃないぜ?」
「……面白いと思ったんですがね」
レイン・モートルクは取り出した本のページを綺麗に破り、羽ペンでその紙に文字を書き始めた。
「いつも思うんだが何も本のページを破って紙を作る必要はないんじゃないかい?」
グルカノは羽ペンを走らせ紙に綺麗な文字を書き続けるレイン・モートルクに尋ねた。
レイン・モートルクはグルカノにクエストを出すときいつも本のページを裂いてその紙にクエスト内容を書き込むのだ。
「言ってませんでしたっけ? この本の紙には僕の髪と魔力を注いであるんです。それに魔力を込めながらサインすることで、「これはレイン・モートルクが書いた物です」と相手に教える事ができるんです」
だから男にしては髪を長めに伸ばしていたのか、とグルカノは納得した。
「ちなみに髪を伸ばしているのは切るのが面倒だからですよ」
「あ、やっぱりそうなのかい?」
レイン・モートルクがおしゃれやそう言う事を気にしているように思えなかったので髪を切らない本当の理由にグルカノはすごく納得した。
素材図鑑
『火トカゲの尾』
火山地帯に生息するサラマンダーの尻尾。サラマンダーの尻尾を掴めば尻尾を切り捨て逃げるので採集は容易。
火耐性のすぐれたアイテムが作れる。