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氷の滅慕  作者: SH
一章 楽園
7/251

舞台裏――魔王の憂鬱



 魔族の領域北部、紅武城(こうぶじょう)


 冷たい石畳に膝を付き、(こうべ)を垂れる男を見て、魔王灰塚(はいづか)は思う。


――くだらない男だ


 (ひざまづ)く男、凱延(がいえん)伯爵は顔を伏せたまま、人間の王国へ略奪遠征に向かったオークたちの動向を報告していた。


「撤退はほぼ完了しており、あらかた国境線のこちら側に帰還しております」


「……」


 凱延は上目遣いに灰塚の様子を伺う。視界に入る上方ぎりぎりのところで、胸元まで垂れかかった黒い巻き毛を、さらにくるくると指に巻きつけている仕種が見えた。灰塚の機嫌が悪い時の癖だ。


 無言の主に対し、凱延は口早につづける。

 灰塚から漂う威圧感に、彼女の不興を察した凱延は、早く退出の許しを得たかったのだ。


「オーク共の被害は約四千。もともとの規模が小さかった事もありますが、遠征軍の半数にも満たない数です」


 オークたちは愚かだ。彼等は戦いにおいて、陣形やなんらかの戦術、策略を弄するといった事を一切しない。それだけの知能や概念を持たないのだ。

 しかし、彼等は勇猛である。雲霞(うんか)のごとく押し寄せ、侵略し略奪する。指揮官である王が死ぬまで、決してその進軍を止めない。

 だが今回の王は、いささか勇猛すぎた。前線に立ってみずから人間の騎士団に突撃し、早々に散った。そしてオークたちは敗走する。


 それが今回の遠征で、オークの戦死者が少なかった原因である。


 配下をチェスの駒の如く扱い、人間の王国を攻めさせ喜ぶ悪趣味な男。

 それが灰塚の、凱延に対する評価の総てであった。


――まぁ、人間ごときの相手が、こいつにはお似合いね


 灰塚は、百二十年ほど前の出来事を思い出す。凱延自身が人の王国を攻め、手傷を負い撤退した事を。戦果は都市を一つ滅ぼしただけ。


 魔族には、いくつかのしきたりがあった。その一つが、魔族の領域から出てはならない、というものだ。初代皇帝が定めた古いしきたりである。

 凱延はその禁を破った。当時、魔王の位を継承したばかりだった灰塚は、まだ歳若かった自分が(かろ)んじられたのだと感じ、凱延に相応の罰を与えた。


 まず、傷を癒すために療養していた凱延へ、怪我が回復し次第、登城することを命じた。そして全快し謁見の間に現れた彼に、もう少し長めの療養生活を贈ってやった。

 凱延をミディアムレアに焼き上げたのだ。


 以来凱延が、魔族のしきたりを破ることは無くなった――が、灰塚の機嫌を伺うだけの、つまらない男に成り下がった。


 今も凱延からは、怯えの空気が感じられる。

 灰塚はすこし意地悪をしてやることにした。


(おもて)を上げよ」


「はッ」


 顔を上げることを許された凱延が、おどおどと灰塚の表情を伺う。

 灰塚は無言でじっと凱延の目を見つめた。

 しばしの間、凱延の当惑を(たの)しんだ後、玉座の(かたわ)らに控える磁朋(じほう)将軍を手招きし、小声で囁く。

 磁朋は軽くうなずいて凱延に告げた。


「下がってよいそうだ」


「……は? そ、それでは失礼します」


 報告後、当然なんらかの声をかけられると思っていた凱延は、目を白黒させつつも、うやうやしく退出しようとした。

 主の雰囲気から、叱責の覚悟をしていただけに、拍子抜けしてしまったのだ。

 その背に磁朋からの声がかかる。


「ああ、そうそう。オークたちの被害の少なさを考えれば、あと数年もすればまた数が増えて重い飢饉(ききん)が起こるだろう。あまり配下の者を使い潰すなよ」


「わかりました」


「よし、下がっていいぞ」


 謁見の間から凱延の姿が見えなくなると、灰塚から放たれていた威圧感が消え去り、その雰囲気が変わる。


「ね、ねぇ、見た? さっきの凱延の、あのきょとんとした顔ったら……」


 クスクスと笑いながら、灰塚が磁朋の肩をぺちぺちと叩く。


「あまり臣下の者をいじめなさるな」


 腹を押さえて笑いを(こら)える灰塚を、滋朋が(いさ)めた。


「だ、だって。ねぇ?」


 クスクス、クスクスクス……


 口から()れでる笑いを堪えようとはしているらしいが、あまり成果は見られなかった。


「灰塚さま。控えの間で姜威(きょうい)侯爵が謁見をお待ちですぞ」


「分かってるわよ、もぅ! でも、喉がかわいたわ。すこし待たせなさい……あー、お腹いたいっ」


 いまだクスクスやっていた灰塚は、脇腹を押さえて身もだえている。


「しかしこの後にもまだ――」


「エクレールの葉のお茶が飲みたいわ。……わかったわよ、そんなに時間はかけないから」



 磁朋の咎める視線から身をかわしつつ、灰塚はおおきなため息をこぼす。そして給仕に茶を用意するよう声をかけた。





 大陸全土のおよそ四割、ほぼ東半分を占める、広大な領土を誇る魔族の領域。

 そこに住む魔族を、西側に住む少数の魔族と区別するために、東方魔族と呼んでいる。


 東方には、現在十六人の魔王が存在した。魔王灰塚の領土は北部にあたる。北部には四人の魔王がおり、長年に渡りお互いに争っていた。

 北部四王の中では、北東部に居を構える魔王鳳仙(ほうせん)が盟主とされている。これは年長者を各地域の長とする古いしきたりによるものであり、魔王自身の強弱には関係がない。

 そして灰塚は、北部の盟主である鳳仙と非常に折り合いが悪かった。


――鳳仙のような老いぼれより、灰塚様こそが盟主に相応しい


 灰塚麾下(きか)の有力貴族、姜威(きょうい)侯爵は常々(つねづね)そう考えていた。鳳仙は四王の中で一番長く生きているだけであり、実力からすれば灰塚以外に盟主()り得る者はいない、というのが彼の持論である。


 姜威は先日、鳳仙の配下である貴族と交戦した。手傷を負わせたものの、周囲に群がる有翼魔獣(キメラ)(たか)られて取り逃がしてしまった。

 あと一歩、という所を邪魔された彼は、数十体の魔獣を相手に()さを晴らした。

 しかし、逃したとはいえ鳳仙の配下が流した血液から溢れる魔力を吸い上げ、久しく感じたことのない力の充足感を覚えた。


 今回の謁見はおそらくその件であろうと姜威は考える。すでに配下の者から報告は行っているはずだ。

 灰塚が嫌う鳳仙の臣下を降したのだ。褒美が貰えるかも知れない。それは、血――魔王の血液から湧き上がる大量の魔力だ。


 しかし、とも思う。姜威の主はとても気まぐれだ。もしかすると、深手を負わせながら、みすみす取り逃がした責を問われる可能性もある。

 結局のところ、灰塚の機嫌次第なのだ。


 とはいえ姜威は灰塚の臣下の中でも有力な貴族だ。主からの信任も厚いという自負がある。よほどのことがなければ、今回は叱責を受けることもないだろう。戦いには勝ったのだから。


 だが、姜威が(たまわ)った言葉は賞賛でも叱責でもなかった。


「もう鳳仙の領地に、戦を仕掛けるのはやめなさい」


「……は?」


「停戦よ」


 あまりの唐突さに姜威は愕然とする。

 これまで鳳仙とは、数十年に渡り争って来たのだ。それが――なんの前触れもなく停戦……?

 気まぐれなどといった次元を超えている。


 絶句する姜威に灰塚はつづける。


「北部の四王は魔王戦禍(せんか)さまを新たな盟主と仰ぎ、中央の奴等と戦を始める予定よ」


「な――!?」


 姜威は忙しく頭を働かせた。

 魔王戦禍……聞いたことのある名だった。元は無名の魔王。たまにいるのだ――井の中の蛙、と言うのだろうか? 己の力を過信して、みずから魔王を名乗る愚か者が。そういった(やから)は大抵すぐに消される。

 最初はその(たぐ)いかと思っていた。しかし最近、その戦禍とやらに北部四王の一角が敗れたという報告を、配下の者から聞いた。

 姜威は、()れ事だ、何を馬鹿なと笑い飛ばした。


――あれは真実だったのか? しかし何故……


「いきなり盟主などと、どういう事ですか!? 灰塚様を差し置いて……納得出来ません!」


 分をわきまえず声を荒げてしまった姜威に、灰塚はやや目を細める。が、気にした風もなく答える。


「戦禍様は、わたしより強いわ。理由はそれで充分でしょ?」


 力を重視し、強さを美徳と考える魔族にとって、強者が支配し、弱者が従うのは当然である。

 姜威が灰塚を敬愛し忠誠を捧げるのも、彼女の容姿の麗しさからだけではなく、魔王個人としての強さからだ。女性に対する価値感も美醜ではなく力なのだ。


 その主が、みずからより強いから従う、と言っているのである。納得はしかねるが異論を挟むこともできない。


「これはわたしだけの考えではなく、北部四王の総意よ」


「……かしこまりました」


 渋々とだが、姜威は恭順の意を示す。


「数日後には使者を発て、貴族達を招集して軍議を行うわ。子細(しさい)はその時にね。配下の者にも戦仕度を滞りなく行わせなさい」


「御意に」



 その後、いくらかの(ねぎら)いの言葉をかけられ、姜威は退出を許された。





「いきなり盟主などと。どういう事ですか!? 灰塚様を差し置いて……納得出来ません!」


 怒りをあらわにする姜威を、灰塚は眼を細めて観察する。

 彼は忠義に厚い男だ。稀に崇拝に近い念を感じることすらある。その怒りは灰塚に向けられたものではなく、いきなり北部の盟主に、と聞かされた戦禍へ対する(いきどお)りだろう。


 姜威の怒りも解らなくはない。

 灰塚も、戦禍のその力を知るまでは、彼を侮っていた者の一人なのだ。


 だが、戦禍は強かった。


 ほとんど手傷を負わせることなく、灰塚は敗れ去った。

 これまでに彼女は幾人かの魔王と戦ったことがある――が、敗北を(きっ)したのは初めてだった。桁違いの力だ。北部四王をまとめて相手にしても、勝てるのではないかと思えるほどに。


 しかし、戦禍は灰塚から力を奪うことなく、優雅さすらうかがえる物腰で慇懃(いんぎん)に言った。

 北部を()べたいのです。力を貸して頂けませんか? と。


 厭味(いやみ)な男だと思った。敗者である灰塚の力を奪うことなく配下に(くだ)れと言う。

 その、常に余裕を失わぬ泰然とした態度が(かん)(さわ)る。見目の美しさも鼻につく。その上自分より強い。


 だが、配下となることに異論はなかった。魔族は力の強弱のみで身分の上下を決める。そして戦禍は灰塚より強い。従うのは当然だ。


――だけど、それは別として……やはりいけ好かない


 その思いが確かな反発心となったのは、他の魔王から戦禍には想い人が居るらしいと聞かされた時だ。

 その想い人とやらは灰塚の領土の北部、国境のあちら側、人の領域にある古城で暮らしているらしい。――その女は、魔族の禁を破っているのだ。

 数日後、灰塚はその古城へと向かった。禁を破った者に罰を与えるのは、魔王として当然の責務だ。


 べつに戦禍の想い人が気になったからではない。

 古城の主らしいが、その女は貴族ですらないそうだ。


――なぜ、そんなつまらない女を想う?


 灰塚には理解できない。


――禁を侵した罰として、その女には死を与えてやる


 なだらかな丘の斜面から、遠目に女の姿を見た時、理解した。

 同性である灰塚ですら目を奪われるほどの美貌。外見の美しさより強さを(たっと)ぶ魔族の価値観すら粉々にする造形の美。

 しばし見とれて灰塚は思った。殺してしまうにはあまりに勿体ない。城へ連れて帰って、わたしの物として飼ってやろう。


 かなり遠目から、強すぎる己の魔力を隠して灰塚は様子をうかがう。しかし、その気配に女は気づいているようだった。


――なるほど


 貴族程度の力はあるらしい。灰塚の見立てでは、女は伯爵位を持つ凱延に匹敵する程の力を持っているように感じた。


 そこでふと思う。さすがに戦禍の想い人を無理に連れ去るのはまずいだろう。彼の怒りをかう。しかも魔族の領域から出てはならないというしきたりを、自分も破っているのだ。さらに言えば、その女は灰塚の臣下ではない。

 いくつかのリスクを考慮し、彼女はおとなしく城へ帰ることを選択した。


 その後、灰塚は古城の女主人と戦禍のことを想うたびに、胸の奥で黒いもやもやが渦巻くのを感じた。



 しかし灰塚には、それがどういった感情に起因するものなのか理解することができなかった。





 いくらかの労いの言葉をかけた後、灰塚は(うやうや)しく一礼して退出する姜威の背を見送った。


「あれは使える男ね。頭も良いし分を(わきま)えているわ」


「左様ですな。今後、分を弁えぬ者への良い(おさ)えとなってくれるでしょう」


 磁朋(じほう)が主の意を()んでうなずいた。

 灰塚はこれから、長年争って来た北部の王と手を(たずさ)え、中央の魔王たちと戦おうというのだ。

 臣下に対する灰塚の威光は絶大だが、貴族の数は多い。末端では(いさか)いも起こるだろう。姜威は人望もあるため、そういった者たちの取り(まと)めにも、振るえる手腕を持っている。


「そうね。……少し疲れたわ。なにか甘い菓子でも――」


「鳳仙殿からの使者を待たせております」


「……わかったわ、もうすこし待たせなさい。先に焼き菓子かなにかを――」


「灰塚さま」


 とがめるように言った磁朋を、キッと睨みつける。


「な、なによ。朝から謁見つづきじゃないの! 甘い物でも食べないと、お肌が荒れちゃうわよっ」


 甘い物と肌質の因果関係を追及することなく、磁朋は重々しく口を開いた。


戒閃(かいせん)子爵も待たせておるのですぞ」


「……」


 灰塚がとても嫌そうな視線で磁朋を攻撃する。

 黒目がちの瞳がうるうるとして、見る者の意思を削るような愛らしさがあった。


 しかし……


「本日中には、他の王からの使者も到着する予定がございますれば」


 磁朋は意にも介さなかった。


「わかったわ、でもちょっとでいいから、先に甘い――」


「謁見のたびにお茶の時間を挟んでいたら、執務が今日中には終わりませんぞ」



 灰塚の甘いお菓子は忙殺されてしまった。 





 季節は変わり雪解けの春。さらに巡り夏が過ぎ、短い秋はあっという間に終わりを告げ、ふたたび長い長い冬が訪れようとしていた。


 雪原の古城では一年が過ぎ、ほんの少しだけアルフラの背は伸びた。そして環境は大きく変わる。


 以前と比べれば、まるで人が変わったかのような白蓮が、地下への階段を下りていく。口元をほころばせたその表情は、とてもにこやかだ。

 白蓮が扉を開けた瞬間、アルフラがどーん、と飛びついて来る。



「あら、もしかして私の気配がわかったの?」


 白蓮はアルフラの髪を、くしゃくしゃとかき混ぜる。その手つきも最初のころに比べれば、だいぶ慣れてきた感がある。


「うんっ! 部屋の前に立っただけで白蓮ならわかるよ」


「そう」


 なんの打算もない仔犬ような真摯な瞳。アルフラはつねに、親愛のこもった眼差しで白蓮を見つめる。


「あら? この傷、昨日はなかったわよね?」


 アルフラの二の腕についた青痣を見て、白蓮は眉をひそめる。


「んー? 午後に高城さんと打ち合った時のかなぁ。痛くないし明日には治ってるよ!」


「そう……アルフラなら(あと)にはならないと思うけど……。今日はすこし多めに血をあげましょうか?」


「えっ? いいよ、だいじょぶだよー」


 アルフラは顔を真っ赤にして、ぶんぶんと首を振った。


「そう? でも、修練もちゃんと頑張ってるのね。ご褒美をあげましょう。何か欲しい物はないの?」


「えー。もうだいじょぶだよ。置くとこもないし」


 室内は、この一年で大きく様変わりしていた。豪華だか生活感のない部屋が一転、ぬいぐるみや積み木、子供が好みそうな大量の玩具から天体儀、硝子の工芸品、重厚な装丁の魔導書らしき物、その内使うかも知れないからと渡された、魔力を帯びた細剣、などなど……。

 この統一感の無さは、全て「ご褒美」の仕業である。


「あら……そう?」


 残念そうにつぶやく白蓮の手を、アルフラがくいくいと引っぱる。


「じゃあひざ枕っ! ひざ枕して」


「フフ……いいわよ。ほら、頭をこっちに」



 繰り返される幸せな日々。穏やかな時の流れはまだまだ続きそうだった。





「高城。武具を使った修練は、やはりまだ早いのではないかしら?」


 ここ最近、白蓮の機嫌は常によい。しかし今日は、なにやら心配事があるようだ。


「いえいえ。私が使っているのは柔らかい材質の木剣です。アルフラ様には、刃引(はび)きされた子供用の練習剣を渡しています。危険はないでしょう」


「でもアルフラったら、また大きな痣を作っていたわ。もうすこし手を抜いてあげてもいいのじゃないかしら」


「流石にこれ以上手加減しては、修練にならないかと思いますが」


「でもね、私たち魔族と違ってアルフラは人間なのだし……」


 それではなぜ戦い方を教えているのか、という所にまで話を戻さねばならない白蓮の発言に、さすがの高城も目眩(めまい)を覚えた。


「奥様。出来ますればこの私を信じ、修練については一任して下さい」


「……わかったわ。しかし、くれぐれも大きな怪我だけはさせないようにね」


「心得ております」


「それと礼儀作法の件なのだけど、やはりフェルマーでは、アルフラに悪い影響が出るのではないかしら」


「問題は無いかと存じますが」


「そうかしら。やはり人間と私たちとでは作法が(こと)なるし、常識的なことも違ってくると思うのだけど」


 一体、私の主はどうしてしまったのだろう、と思う高城であったが、有能な彼は真摯に答える。


「それに関しましては、いかようにも出来ませんでしょう。人里も遠く、人間の教師を雇うという訳にもまいりませんから」


「人間の教師、ねぇ……。そうだわ、王都まで行って二、三人さらって来てはどうかしら? なんなら私が――」


「奥様! お気を確かにっ!!」


 そこにはもう、かつて高城の見知った酷薄な女主人は存在しなかった。主の言を(さえぎ)るなどという愚行は、以前ならば考えられないことだ。



 身を切るような冷たい威圧感と、凍りついたように変わらぬ表情を懐かしく思いながら、今の白蓮も悪くはないと考える高城であった。

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