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氷の滅慕  作者: SH
二章 欲望
29/251

血風の突破戦



 西進する援軍と合流するべく敗残兵たちは移動をつづける。夜を徹して歩みを止めぬ彼らの中には、負傷している者も多い。


「燃えてやがる……」


 明け方近く、誰かの呟きが伝播し、兵士たちは歩みを止めて次々と振り返る。

 朝焼けに照らし出された東の空よりなお明々と、サルファの街から上がった大火が夜の覚めぬ西方上空を赤く染め上げていた。

 遠目に見上げる兵士たちにも、それがかなりの火勢であることが見て取れる。


「サルファの中には二千くらいの警備兵が常駐してたはずだが……」


 濃い疲労の影を落とした表情で、ゼラードが呆然と呟いた。

 (かたわ)らに立つシグナムが首を振る。


「とっくに全滅したか逃げ出してるだろ」


「略奪のどさくさで火を放たれたってわけでもなさそうだな」


「このタイミングだと、略奪を終えて火を放った――て感じじゃないか?」


 シグナムの答えにゼラードが頷いた。


「炎の壁を作って前後の援軍を遮り、時間を稼ぐつもりだろう……問題はどちらに進軍するつもりか、だな」


「後ろから来ているオーク共の援軍を置いてくってことはないんじゃないか? 騎士団の到着を遅らせて、あたしたちを挟撃するつもりだろ」


「だろうな。だが、今回奴らの動きは本当に読めん」


 辺りでは休息を取る者が増え始めた。

 一度立ち止まってしまうと疲れきった体がいうことを聞かず、そのまま座り込んでしまう者が次々と現れたのだ。


「俺たちもすこし休もう。十分に距離は取った。このまま進んでも、合流すれば結局は来た道を戻らなきゃならん」


「そうだな。おい、休憩だっ!」


 シグナムが叫び、甲冑の重い音を響かせて腰を下ろした。


 東からやって来た斥候の情報では、この場に留まっていても昼前には合流出来る計算だ。

 オークの軍勢が今からこちらに向かったとしても、アルフラたちが援軍と合流する方が早いだろう。


「念のため見張りを立てて、交代で仮眠をとろう」


 ゼラード自身は座ることなく、サルファの方を見つめ続けていた。


「周りにこれだけ兵隊共が居るんだ。見張りはいらないだろ」


 シグナムの言う通り、辺りには数千の兵で溢れ返っている。

 それでも当初は一万の軍勢であった防衛軍の被害は大きく、だいぶ数を減らされていた。


「そうだな……でもまあ念のためためだ。俺はしばらく様子を見ている。先に休んでくれ」



 その声を聞き、アルフラとルゥは身を寄せ合い、外套の上で横になった。





 オークの部隊は、食料庫から運び出した糧食を数十台の巨大な荷車に積み上げ、東へと移動を開始していた。

 衝角代わりに使われた荷車の使い道は、物資の輸送が本命だったのだ。


「王さま。後ろから馬が追っかけてきてるですよっ」


「そうか……予想より早いな。やはり騎兵の行軍速度は読み難い」


 伝令オークの報告によって、騎士団の接近を知ったリータ十四世が全軍に停止命令を出した。


「迎え討つぞっ! 補給兵に伝達!! 前面の部隊に長槍(パイク)を配らせろっ」


 サルファを焼き払い、援軍の足止めを狙ったのだが、あまり役には立たなかったらしい。

 予想より早い騎士団の追撃だが、想定の範囲内だ。都市部での迎撃を避け、開けた平原での決着をリータ十四世は望んでいた。


 騎兵の突進力が最大限に引き出されるこの地形を、逆に死地へと変えてやるのだ。


 オークの軍団はリータ十四世の指示に従い、前面に長槍を構えた部隊を配す。そして中備えに槍兵、後列を弓兵で固める。人間たちから奪えた武器も多く、とくに消耗の激しい矢なども豊富に確保出来ていた。


「来たな……長槍を据え付けて奴等の突進に備えよ! 中備えは前に出て長槍の存在を隠せっ! 弓を持った者は十分に引き付けてから、まずは馬を狙うのだ!」


 中列のオークが前へ出る。前列のオーク部隊は、彼らに隠れるように長槍の石突き部を地に付け、街道の敷石の隙間に鉤爪状の金具を踏み刺し、長槍を固定した。


 その間にも、近づいて来る砂塵と地鳴りのような(ひずめ)の音が騎士団の接近を伝えて来る。


「……む」


 リータ十四世が目を細めた。騎士団の先陣が見えたのだ。それでも焦ることなく待つ。


 先頭の騎士が勝鬨(かちどき)を上げ、集団突撃戦術でオークたちを一気に平らげようと長剣を振り上げた。


「よし、前列は下がり長槍を押し立てよっ!」


 十分な距離まで引き付け、リータ十四世は指示を飛ばす。

 整然とした動きで隊列が入れ代わり、突進して来る騎兵に対して無数の槍衾(やりぶすま)が立ち並んだ。

 騎士団の先陣を切っていた者たちの動きが乱れる。


「止まれッ! 止まれ――――!!」


「パイクだ! 奴らパイクを構えてやがるぞ!!」


 しかし、オークの軍勢を一呑みにしようと最大戦速で突撃して来た騎馬が、急に止まれるはずもない。

 騎士の先陣は、己の突進力で長槍に串刺しとなっていく。騎馬の断末魔めいたいななきの響くなか、頭上からは雨のごとく無数の矢が降り注ぐ。

 先頭では、多くの騎馬が竿立ちとなり、さらに後続の騎兵がそこへ突っ込み凄まじい惨状が展開されていく。


 突進力を失い矢にさらされ、馬を捨てて徒士(かち)で戦おうとする者もいた。しかし暴れる馬の蹄にかけらる者も多く、混乱はいや増すばかりであった。


 槍衾を抜けた騎士もわずかにいたが、すでに騎兵にとって最大の武器といえる突進力は失われていたため、中備えから上がって来た槍兵たちの餌食となっていた。


「退け――――!!」


 混乱を収めようと騎士隊長が叫ぶ。


「退却だッ! 一旦退いて態勢を建て直すんだ!!」


 馬を返して後退しはじめた騎士団を見て、リータ十四世はさらなる命令を下す。


「追撃せよ! 前列は槍に持ち替え、可能な限り退却する部隊の馬を狙えっ! 中備えは負傷した騎士と馬に止めを刺せ。戦えそうな者は一人も生かしておくな」


 高々と響き渡った命に従い、オークの軍勢が騎士団へと襲いかかった。


 後続の騎士たちはオークの追撃を逃れたものの、五千の兵力は半数近い騎士と馬を失い、オーク側の被害は五百ほどだった。



 サルファ近辺まで退いた騎士団は負傷者を取り纏め、部隊の再編に奔走することとなる。彼らはふたたび東へと進軍を開始したオークたちに、大きく距離を離されることとなった。





 太陽が中天から西の空へと傾き始めた頃合い。休息をとっていたアルフラたちは、待ちわびていた援軍とようやく合流することが出来た。

 これにより一万五千の大軍となった軍勢は、急ぎ部隊の再編を開始する。布陣を整え、オークたちの襲撃に備えるためだ。

 その間にも、多くの斥候が次々と報告をもたらし、戦局がはっきりとしてきた。

 オークの軍勢は、昨夜のサルファ守備兵、及び警備隊との戦闘、そして騎士団との交戦により、七千ほどにまで数を減らしていた。

 しかし、レギウス国軍全体の戦死者は、ゆうに七千を越えている。実に倍以上の被害を受ける結果となっていた。


 精鋭で知られる国教騎士団の半壊も伝えられ、数に倍するとはいっても、その士気は(いちじる)しく低い。敗残兵を吸収したことも士気の低下を招いた一因と言えるだろう。



 陽射しが茜色へと変わり、日没を間近と控えた刻限。なんとかオークたちの姿が見える前に布陣を済ませた軍勢の中を、伝令兵が駆けて行く。士気の低下を懸念した指揮官が、演説を行うらしい。





「諸君。まずはサルファ防衛の任についていた者たちの働きををねぎらいたい」


 朗々と、よく通る落ち着いた声が響き渡る。


「奮戦虚しくサルファは敵の手に落ちてしまった。が、その勇戦のおかげで、今やオーク共の軍勢は、我等の半数以下にまで減っている」


 司令官の激励に応えるかの如く、まばらに声が上がる。聡い者は、それがサクラであろうとあたりをつけた。


「奴等はサルファから略奪した大量の物資を輸送している。残存したオーガの全部隊は、その警護にあたっているとの報告があった。その物資だけはなんとしても取り戻さねばならん!」


 さらにいくばくかの声が上がる。サクラに釣られた者、釣られてやった者がそこそこ居たらしい。


「輸送隊を(よう)し、行軍速度の落ちたオーク共は、もはや突破力を有してはいない。敵に倍する数の利を活かし、オーク共を包囲殲滅するのだ! 我等の勝利は揺るぎないだろう。さらにはサルファに、魔術士ギルドからの援軍もその到着が確認されている。そして、半壊したとはいえ精鋭の国教騎士団は今なお健在だ」


 通常、包囲戦になれば同程度の戦力であっても、包囲された側は大した時間を持ちこたえられず壊滅する。

 オークの軍勢があくまでも輸送隊を守ろうとするのなら、囲い込むこともたやすい。

 今回のように数に倍する敵に包囲されれば、その戦いは一方的なものとなるだろう。


 レギウス国軍の優位を強調する指揮官の言葉に、兵士たちの目にも希望が浮かぶ。


「すでに国教騎士団が追撃へ移ったとの伝令が来ている」


 一際声量を上げた指揮官が、高々と拳を振り上げる。


「オーク共の命運は、今日この場で尽きる! 諸君ッ、声を上げよ! 勝鬨を上げ、我等の勇壮さをオーク共に見せつけるのだッ!!」


 士気は(ふる)わぬものの、この場に居るのは職業軍人ばかりだ。

 とたんに凄まじい鬨の声が上がり、無理にでも戦意を高揚させようとする。


「我等は一万五千の大軍をもって、わずか七千のオーク共を蹴散らす! 騎士団に手柄を持っていかれる前に、奴等を諸君達の手で殲滅するのだッ!!」


「ウオォォォ――――――」



 大気を揺るがす雄叫びの中、沈みゆく夕日に照らし出され、オークの軍団がその姿を現し始めた。





 時を同じくして、リータ十四世は整列したオークの軍勢を見渡していた。傍らには親衛オークの隊長、勇者ピチャクチャが付き従っている。


「オークの勇士達よ、連戦につぐ連戦に耐え、よくぞここまでついて来てくれたな」


 休みない行軍と相次ぐ戦闘に疲弊しきったオークたちを前に、リータ十四世が淡々と語り出す。


「我等はすでに、故郷の領民を養うに足る糧食を手に入れた。しかし、正面には我等に倍する軍勢が分厚く陣を敷き、後方からは復讐に燃える騎兵共が追撃して来ている」


 声を出す者も、身動きする者もいなかった。


「だが、それでも我々は、手に入れた糧食を守り、敵中を突破せねばならない。包囲されながら輸送隊を守りきる事は困難を極めるだろう。また同時に、後方の騎兵共も防ぎきらねばならん」


 表情一つ変える者はいなかった。


「ここから先は死地である。それでも余は、疲弊しきったそなた達に前進を命ぜねばならない」


 七千の軍勢は、息遣いも聞こえぬほどに静かだった。


「故郷を捨てよ。愛する者を捨てよ。この世に未練を残す全てを捨てるのだ。その中から戦士としての誇りだけを拾い上げ、その矜持を(いだ)いて余について来てくれ」


 すべての者が拳を握り締め、みずからの胸に力強く叩きつけた。その衝撃だけで周囲の大気が震える。


 リータ十四世は、黙して語らぬ臣下たちを前に、満足そうに頷いた。


「おお、あちらから勇壮な鬨の声が聞こえてくるな」


 轟き渡る人間たちの雄叫びに、リータ十四世は心地好さ気に耳を傾けた。


「声高に己の勇を誇示するは、心弱き者のする事だ」


 臣下たちは無言で頷いた。


「真の勇者は黙して語らず。さあ、勇士諸君――始めようではないか」


 リータ十四世は方天戟を肩にかつぎ、一歩踏み出す。



 死兵と化した七千の軍勢が、溢れかえる気炎を放ち、静かに前進を開始した。





 雄叫びを上げて勇気を鼓舞し、相手の()じけを誘おうとする人の軍勢。

 対するオークたちは、獲物に忍び寄る捕食者のごとく、静かに進軍する。


 まるで列なす死者のような、あまりに不気味なその行軍に、鬨の声は尻すぼみとなり、人々は気を呑まれる。


 死を覚悟したその前進は、すでに士気の有無など関係のない次元へと達していた。レギウス国軍の前衛が、じりっと後退(あとずさ)る。


 (のち)に、生き延びたレギウス兵たちが何度も悪夢の中でうなされる事となる、恐怖の号令が響き渡った。


「――かかれ」


 リータ十四世の命により、静かに開かれた戦端は、すぐさま鋼の打ち合される音と断末魔の絶叫により、阿鼻叫喚の坩堝と化す。

 包囲されることを気にも止めず、密集隊形を維持し、輸送隊を守りながら前進して行くオークの軍勢。

 それは、蟻の群れが大きな獲物をじりじりと、しかし確実に、速度を落とすこともなく巣穴へ持ち帰るかのような歩みだった。


 その前進を止めようと襲い掛かる人間たちを、多くの犠牲を出しながらも確実に排除して行く。


「ピチャクチャよ。我々の前に立つ事がどのような対価を要求されるのか、あのひ弱な人間共に知らしめてくるのだ」


「はいですっ」


 千の親衛オークを率い、勇者ピチャクチャが進路を押し開いていく。オーク兵は、たとえどのような深手を負おうと、命と意識が有る限り、膝をつくことなく槍を振るい続けた。


 リータ十四世自身もオーガが守る輸送隊の先頭に立ち、自慢の得物を縦横無尽に振りかざす。


「リータ殿。このような血沸き肉踊るひと時を与えて下さった事に感謝します」


 リータ十四世の隣に、全身を甲冑で固めた巨漢のオーガがならんだ。


「おう、ガロード殿。今宵の馳走は尽きる事はない。好きなだけ食い散らすがよかろう」


「はっはっは! 小人共から人喰鬼とそしられる我等に、その洒落の効いた物言い。このような死地にありながら、まっこと感心いたします」


 オーガの族長ガロードが、群がる人間を巨大な戦斧で薙ぎ払いながら笑った。


「なんの、もたもたしておれば、そなたの分まで余が頂くぞ?」


 リータ十四世は、方天戟で屠った兵士を無造作に投げ捨てながら笑みで返した。


「それはたまらん! ならば左翼の小人共は我が平らげましょう」


「なれば右翼は余が喰らおう!」



 楽しげな笑いが響く。二人の戦鬼が血の雨の中、人間の兵士たちを蹂躙して行く。





「信じられん。あいつら包囲されたまま前進して来るぞ!」


 ゼラードの呻き声は(まさ)に、その場にいる者の内心を代弁したものだった。


「死ぬまで戦うつもりだな……降伏もしなけりゃ逃げもしない。ああなっちまったら数の差なんて関係ないよ、こっちも死ぬ気でかからないと逆に食われる」


 シグナムがうんざりしたように吐き捨てる。オークたちの進撃は、陣のほぼ最後列に位置するアルフラたちの間近にまで迫っていた。


「正直近づきたくないな。せっかく生き残った団員を無駄に散らせたくない。それに見てみろ、正規兵の奴らなんて俺達より腰が引けてる」


「同感だな。だけど前金貰ってんだから素通りさせる訳にもいかないだろ? ――そこで提案があるんだ」


 シグナムがルゥの肩を、ぽんっと叩いた。


「奴らが近くまで来たら、ルゥに吠えて貰う」


「……はぁ?」


「上手くすればオーク共の前進が止まる。まあ味方もあらかた止まっちまうけど、奴らの戦意を削げるかもしれない」


「ルゥが吠えたらか?」


 ゼラードの訝しげな視線に、ルゥがこくこくうなずく。


「聞いたことないか? 雪狼の遠吠えは魂を削るって」


「聞いたような気もするが……本当なのか?」


「あたしはオーク共が金縛りにあうのをこの目で見たからね。ほら、奴らそこまで来てる。ルゥ、頼んだよ」


「まかせてっ!」


 ルゥは地面に膝と手をつき夜空を見上げた。体内の魔力と威圧の感情を咆哮に乗せるため、目を閉じて集中する。

 そして間近へと迫って来た死の行軍に向かい、吠えた。


「きゃおぉぉおぉぁ~~~~~~ん!」


 それまで殺気立った喧騒を振り撒いていた場の空気が一変する。


 周囲が(なご)みの精霊で満ちていた。


 いままさに血まみれの槍を振り下ろそうとしていたオークが、にっこりと笑いルゥの頭をがしがし撫る。そして、ふと我にかえり隣の団員に襲い掛かかった。

 ルゥの肩をにこにこ顔で叩いていた団員も慌てて応戦する。


「あれ?」


 不思議そうにするルゥの頭を、シグナムがぺちりとはたいた。


「きゃんっ! 巨乳が叩いた――!」


「なんだ今のは! 真面目にやれっ」


「だって、人間の姿じゃあんまり魔力が乗らなくて…………」


「わかった。人狼になっていいから早くしろ。あいつら行っちまうぞ」


「は~い」


 涙目のルゥが人狼に変化する。

 雲一つない満天の星空に三日月が浮かんでいた。万全とは言えないが、先程とは比べ物にならない量の魔力がルゥを満たす。


――これなら……いける


 闇夜を仰いだ人狼が、白い体毛を逆立たせ、濡れたような深紅の瞳を輝かせた。

 ずらりと列んだ鋭い牙を覗かせ、その喉から魂を和ませる咆哮が響き渡る。


 きゃおぉぉおぉぁ~~~~~~ぉん


 大量の和みの精霊が召喚され、辺りをほのぼのとした空気がつつむ。


 それまで修羅の如き奮戦を見せていたオークのしんがり部隊が、なにか可愛らしい生き物が居るな、的な視線をルゥに向け、ほこほこ顔で通り過ぎて行く。


 全身に和みの精霊をまとわり付かせたルゥは、周りの兵士たちにも大人気だ。次々に伸ばされる手が、わさわさと撫でてくる。


 しかし、怒りの精霊を纏ったシグナムが後ろに立つと、怯えた和みの精霊たちは霧散してしまった。


「もういいっ、お前森に帰れっ!」


「そんなぁ。でもね、和みの精霊は上位の精霊なんだよ、呼ぶのむずかしいんだよ、奇跡だよう」


「誰がっ、んなもん呼べっつったよ!」


「きゃいんっ!」


 ぺちぺちと叩かれたルゥが逃げ惑う。



 最後はルゥのアシストがとどめとなり、レギウス国軍は突破されてしまった。

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