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氷の滅慕  作者: SH
二章 欲望
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穿つ者達



 野営地を出立したアルフラたちは、一切の休息を挟まずサルファへと急いだ。食事をとるときも足を止めることなく保存食をかじり、ただひたすらに歩きつづける。

 やがて辺りは開け、街道の両脇には農耕地が広がり、陣を敷くレギウス国軍の天幕が見えてくる。

 冬なので作物は育てておらず、うっすらと雪の積もった平野部に、無数の天幕が打ち立てられていた。


 日も没しはじめた夕刻、一行はようやくサルファの本陣に到着した。司令部のある天幕まで行けば、ゼラードの行方もわかるだろうということで陣の奥へと進む。

 サルファの街並が見える辺りまで来たところで、砦襲撃時に西門から落ちのびた団員たちに声をかけられた。


「ねぇさん! こっちだっ! 生きてたんだな!!」


 わらわらと駆け寄って来る十名ほどの団員。


「おうっ! お前らこそよく生きてたな!」


 お互いの生存を喜び合う団員たちが、おおきな瞳をきょとんとさせたルゥに気づく。


「あ……小娘が増えてる」


 一人の団員がアルフラとルゥを見比べて怪訝そうにする。


「ああ、ちょっとな……説明するのは難しいんだけど、とりあえずは仲間だ。あたしらが逃げてくるのを助けてくれた功労者だよ」


 シグナムがすこし困った顔でルゥの頭をがしがしと撫でる。さすがに見てもいない者に人狼です、などと紹介しても話がややこしくなるだけだろう。

 撫でられているルゥは得意げにしているが、向けられた団員たちの目はやや冷たい。アルフラより小さいのだから無理もないだろう。


「ゼラードはどこだい?」


「司令部に行ってます。俺たちは昼頃にこっちへ着いたんですけど、団長の顔見知りだっていう傭兵団の天幕借りて、そこで仮眠してたんです」


「そうか、んじゃあたしたちもそこで待たせてもらうかな」


「団長はサルファの街にも寄って来ると言ってたので、帰りは夜になるはずです」


「わかった、とりあえず腹減ったな、なんか食わせてもらおうぜ」


 シグナムがアルフラとルゥを引き連れ、天幕の一つへと向かう。


「いまごろは団長が司令部で話通してくれてるはずだから、夜までには俺たちにも天幕が割り当てられると思いますよ」


 その後、シグナムも顔見知りだった同業者の天幕で、アルフラたちはやっとまともな食事にあつくことが出来た。



 人見知りというものを知らないルゥはおかわりを二回も要求し、周りに微笑ましげな空気を振り撒いたりしていた。





「団長が戻って来ました!」


 アルフラたちはゼラードが戻るまでの時間を仮眠にあて、疲れた身体を休めていた。

 呼びに来た団員に連れられて、一回り大きな天幕に案内される。司令部から割り当てられたものらしい。


 中へ入ると、ゼラードがごそごそと備品などの確認をしていた。彼もこの天幕に来たばかりのようだ。


「シグナム! やっぱり生きてたかっ。まあお前がオークなんぞに殺られるとは思ってなかったがな」


 満面の笑みでシグナムの背中をばしばし叩くゼラードは、とても嬉しそうだ。


「ばーか、ったりまえだろ」


 普段、物静かなゼラードのその態度に、シグナムもすこし照れ気味なようだった。


「おお、アルフラも無事だっ……たか?」


 シグナムの後ろに立ていたアルフラに笑顔を向けたゼラードが、ルゥの存在にも気づき、語尾が疑問符に変わった。


「ルゥてんだ、あたしらを助けてくれた。ルゥ、ちょっと人狼になってくれ」


「は~い」


 天幕には他の団員は居ない。シグナムは入口がしっかり閉ざされているのを確認し、ルゥをゼラードの方へと押し出す。


「人狼……?」


 含み笑いをこらえつつ、シグナムはにやにやとする。


「ゼラード、すこし下がってた方がいい。間近で見たら腰が抜けるぞ?」


 しかし、すでに骨格が変貌を遂げる異音が鳴り響いていた。


「――うっ……あ、あぁ…………っ!?」


 顎をがっくり落としたゼラードが目を見開き、剣の柄に手をかけたまま一歩、二歩と後ずさる。


「大丈夫、ルゥは仲間だよ」


 人狼姿のルゥを乱暴に撫でながらシグナムが笑う。


「な…………」



 なにか言おうとするが、言葉が出て来ないらしいゼラードを、アルフラは本当に気の毒だと思った。





「なるほど……そういうことか」


 これまでのいきさつを聞き終えたゼラードが頷く。その表情は非常に複雑だ。


「こっちはどんな状況なんだ?」


「明日の夜には一万のオーク共と接敵することになりそうだ。さらにその後方、約二日遅れでオークの別動隊が進軍中だ。数はわからんそうだが、南東のフォロス砦を落とした奴等だな」


 街で手に入れて来たらしい火酒の壺を取り出しながら、ゼラードが説明する。


「行軍速度が予想より早過ぎて、王都からの援軍は間に合わない。ただ、先行してる騎士団は兵卒は連れず、騎兵だけで構成されているから足が速い。明後日にはサルファへ到着する予定だ」


 ゼラードの渡した杯を、シグナムが嬉しそうに飲み干す。


「一日持ちこたえれば騎士団が到着し、南から上ってくる援軍もオーク共の背後を突く。――おそらく、三日ともたずにオーク共は敗走することになる」


「そう上手くいくのか? 奴ら南進して援軍を潰しにかかるんじゃないかな」


「司令部でもそう考える者がいて、こちらから打って出るという案もあったらしい。まあ結局は安全策を取ることになったみたいだな」


「今回のオークは何をしてくるか分からない。下手に動かず様子を見るべきだ、てか?」


 馬鹿にしたようにシグナムが言う。


「まあそんな感じらしい」


 ゼラードが、ふと何かを思い出したように言葉を繋ぐ。


「ああ、砦での契約金と今回のサルファ防衛戦の前金を貰ってきた。とりあえずはレナード商会のいつもの両替商に預けておいた」


 ゼラードが懐から出した羊皮紙をひらひらさせる。


「へーえ、なかなかいい額じゃないか」


「だろ? この戦いが終われば募集を打って、団を建て直せる」


 ゼラードがシグナムの杯に火酒を注ぎながら、にやりとした。


「前祝いだ。もう一壺あるから今夜は飲もう」


 シグナムも嬉しそうに笑い、ゼラードの杯に火酒を注ぐ。そしてみずからの杯を軽くぶつける。

 アルフラとルゥには、木製ジョッキで山羊の乳が振る舞われていた。

 物欲しそうに火酒の壺を覗きこむアルフラの視線は、完全に黙殺される。


 ルゥは天幕の中にある備品に興味津々なようで、話の間中落ち着きなくいろんな物をいじくり回していた。


 今回の防衛戦で、アルフラたちは先程天幕を借りていた傭兵団の指揮下に組み込まれ、陣の右翼に配置されるらしい。


「まあ、楽出来る分にはかまわないけどね。上が無能そうだから、あまり期待は出来ないな」


 つまらなそうにシグナムがぼやき、空になった杯をゼラードに突き出す。



 二壺の火酒は、二人の酒豪により早々に飲み干されてしまい、その日の晩は早めの就寝となった。





 草木も眠る真夜中に、アルフラとゼラードはほぼ同時に目を覚ました。

 原因は、うなされるシグナムとルゥの寝言だ。


「こっ――これは……」


 ゼラードは絶句する。

 妙に色っぽい声を出し、うなされるシグナムに二対の視線が向けられていた。

 ルゥはなにやらむにゃむにゃと幸せな様子だ。


 シグナムは時折、寝苦しそうに身をよじるが、ルゥの頭はぴっとりと胸について来る。その刺激で、さらに艶っぽい吐息がシグナムの口からこぼれる。


 ゼラードとアルフラは目を見交わし、これはこれでアリだ、という結論に達した。

 ごそごそと天幕の隅から壺を取り出したゼラードを見て、アルフラが小声で囁く。


「まだ、あったんですか?」


「明日の分だ。……やらんぞ? 子供にはまだ早い上物だからな」


 アルフラのじっとりとした視線を受け、ゼラードも声を潜めて壺を背後に隠す。


「しかしあれだな……」


「すごいです……」


 時折、ビクンッビクンッとシグナムは身を震わせる。それ見つめる二人には、起こしてやろうなどという気は毛頭ないようだ。

 ゼラードに至っては、そんなシグナムを肴に一杯ひっかけるつもりらしい。



 シグナム以外の三人にとっては、大満足な一夜だった。





 翌日の夕刻。オークたちの到着は、守備側の予想よりもやや早かった。

 南からの援軍を完全に無視し、後顧に憂いを抱えたまま虎穴に入ってくる猪武者たち。


「まさか、素直に突っ込んでくるとはな。あれだけ斥候を出してたんだ、南から大部隊が迫ってることはわかってるだろうに」


 オーク本隊が直進して来たことにより、一日遅れで追撃する形となった南からのレギウス国軍八千。さらにその後方にはオークの援軍が存在し、サルファ防衛軍の後方にも一日の距離をおいて五千の騎士団が進軍中、といった複雑な状況が出来上がっていた。


 しかし、オークたちの選択肢はそう多くないだろう、というのがサルファ防衛軍司令部の見解だった。防衛軍とオーク本隊は、ほぼ同数。よくも悪くも一方的な戦いにはならないだろう。総力戦になるはずだ、と。


 一日持ちこたえさえすれば、騎士団が到着して一万五千に膨れ上がった防衛軍と、西進してくる八千の援軍で挟撃する形となる。そうなればオークの援軍が到着する前に戦局は決する。


 オーク本隊が取れる策は、騎士団の到着前に全力で防衛軍に壊滅的な打撃を与えて無力化した後、南から来た八千の部隊をオークの援軍と挟撃する、といった形だろう。


 司令部の懸念は、死を恐れずオークたちが突撃して来るため、戦線が広がり左右からサルファに回り込まれる可能性だった。

 しかし、最悪防衛線が突破されたとしても、翌日にはオーク本隊を挟撃出来ることには変わりがない。防衛軍にもかなりの被害は出るだろうが、騎士団さえ到着すればオーク本隊は袋のネズミだ。



「所詮はオークってことか? やっぱり面だけじゃなく頭の中身も猪だ」





 すでに展開を終えたレギウス国軍は、オークの軍勢が左右から回り込んでサルファに侵入することを警戒し、両翼を大きく開いた鶴翼の陣で待ち構えていた。中央はやや厚く三段備えだ。

 彼我の戦力がほぼ同数であれば最も無難な陣形であろう。


 アルフラたちはその右翼、中央からはかなり離れた位置に配されていた。

 攻め手の場合、往々にして死亡率の高い先峰に置かれることの多い傭兵ではあるが、今回のように野外での要所防衛の場合、総じて士気の低い傭兵を激戦区である中央に配置すれば、早々に陣形を崩して大きな被害を出すことも稀ではない。

 そうした理由から、アルフラたちは比較的楽な仕事を割り当てられることとなった。


「おい、あの雪煙……一万やそこらのものじゃないぞ?」


 進軍して来るオークたちのものであろう、雪を舞上げる白い砂塵を見上げ、シグナムが顔をしかめる。


「ああ、それにこの地鳴りは、騎馬……いや、なんだこれは?」


 オークの接近に(ともな)い聞こえてきた異様な地鳴りに、ゼラードの表情にも厳しいものが浮かぶ。

 となりに立つアルフラとルゥも、腹に響く重低音に眉をひそめた。

 不安と焦燥感を煽る不気味な地響きは、さらに大きさを増して行く。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――


「見えてきたぞ……なんだありゃあ――!?」


 団員の愕然(がくぜん)とした声が聞こえた。

 すでに中央へ配された本隊にも動揺が広がっている。


 進撃してくるオークたちの前方を走るのは、オーガに押された巨大な荷車のような物だった。その前面には、先端を尖らせた太い丸太が括り付けられており、城攻めで使う破城槌に近い形状だ。

 数十台にも及ぶそれらが、衝角(ラム)を備えた戦船のような凄まじい勢いで突撃して来る。

 その後方からもオーガの部隊を先頭にして、横一列十名ほどが密集したオークの軍勢が、一糸乱れぬ長蛇の陣で進撃していた。


「まずいぞッ、あいつら展開しないでそのまま突っ込んで来やがる。早く両翼を閉じないと突破される!!」


 ゼラードの叫びにやや遅れる形で、密集隊形への変更を指示する銅鑼が鳴り響いた。

 そこいら中を伝令兵が駆け回り、陣形の変更を叫び伝える。


「くそっ! 奴等、(おか)の上で衝角戦術をやってきやがった!!」


「今回のオーク共はどうなってんだいったい!?」


 アルフラたちの部隊も中央へ寄せようと移動を開始する。だがすでに、戦端は開かれ先陣を切ったオーガの一団は、中備えの奥深くにまで食い込んでいた。

 さらに後続のオーガの部隊が、陣形の傷口を開くよう左右へ展開しながら、手にしたこん棒を力任せに振り回す。

 オーガが手にするのは丸太の先端を削り、持ち手を作っただけの簡素な品だ。しかし彼らの怪力で振り回されるそれは、鎧兜を纏った兵士を軽々と吹き飛ばす凶悪な得物だった。


 突進して来る衝角を避けようと左右にわかれた兵士たちの間で渋滞が起き、さらに丸太を振り回すオーガに蹂躙され混乱は増す。

 鶴翼に突き刺さった衝角により、中央部はすでに崩れかかっていた。

 そこへ隊列を崩さず次々と突貫をかけるオークの軍勢が被害を広げていく。


 よく訓練された兵士のような軍行動を取るオークたちに向かって、誰かが叫んだ。



「どこのどいつだ!? オークやオーガの低脳共を、兵士に仕立てやがった馬鹿野郎はッ!」





 リータ十四世は、陣の中程を親衛オークに守られながら、サルファの街へと向かっていた。

 (はや)る心を抑えつつ、戦況を分析する。

 先陣を切ったオーガの部隊は、すでに防衛線を突破したようだ。

 大混乱に(おちい)った中央部をさしたる危険もなく移動して行く。


「逃げるな! 踏み止まれッ、踏み止まるんだ!!」


 防衛軍の隊長らしき者が、部下たちを叱咤(しった)する声が聞こえた。しかし、敵味方に揉みくちゃにされ、恐慌状態に陥った兵たちの耳には届かない。ただ、士気を鼓舞しようと叫ぶ声だけが、虚しく響き渡る。

 そして最精鋭である親衛オークたちの槍が、勇戦を呼びかける隊長を処理する。

 リータ十四世により、あらかじめ命じられていたのだ。――命令を出す者、踏み止れと激を飛ばす者、士気を(あお)るため(とき)の声を上げる者。それらはすべて、優先的に黙らせよと。


 中央に陣を敷いていた人間たちの主力部隊は、総崩れと言ってよい状態だった。左右に大きく展開していた部隊が、なんとか長蛇の陣を分断しようとしているが、その動きは鈍い。指揮系統が大きく混乱しているか、すでに後方にある司令部が壊滅している可能性も高い。そうリータ十四世は予想した。


 元々、防衛軍が敷いていた鶴翼の陣は、他の陣形への移行が容易で、両翼を閉じることにより素早く敵を包囲出来る利点がある。だが、長蛇の陣のように突破力の高い陣形とは相性が悪い。


 リータ十四世の持つ知識は全て人間の書物から得たものだ。

 人間以上に賢いオークがいる、と面白がった爵位の魔族、凱延(がいえん)から与えられたものである。

 与えれば与えた分、有能さを増す手駒に喜んだ凱延は、リータ十四世に戦術書をはじめ、医学書、兵法書、武術書、実際の戦闘記録を(あらわ)した戦記録など、様々な書物を与えた。

 多くの知識を詰め込み、武勇にも秀でていたリータ十四世は、王となった後、一騎打ちでオーガの族長を(くだ)し、これを配下とした。

 そして四年の歳月をかけ、獣の群れを精兵(せいへい)の軍団に育て上げ、鍛え抜いたのだ。


 彼の頭の中には、サルファの見取り図も叩き込まれていた。街の中央からやや南東に位置する大食料庫。そこを制圧すれば、故郷で腹を空かせて待っている二十万の領民が、一冬越せるだけの糧食が確保出来る。


――あとすこしだ。まだ此処(ここ)で、余が倒れるわけにはゆかぬ


 領民のために食料を略奪するまでは、前線に立つことを極力控えなければならない。

 彼にとって、可愛い領民の命は何物にも変えられないものだった。そのためならば、己の誇りや自尊心を地に放り捨てることにも、なんら躊躇(ためら)いは感じない。


 凱延から(たまわ)った方天戟と呼ばれる業物を握りしめ、血気に逸る気持ちを鎮める。刻一刻と変わりゆく戦況を冷静に分析し、今後の計画に微修正を加えていく。



 それは猪面ではあるが、勇知に秀でた名将の姿であった。





 敵味方入り乱れる激戦の中、アルフラはすでに十数人ほどのオークを屠っていた。しかし、崩れ始めた味方部隊の流れに呑まれ、最前線からは遠く離れてしまっている。シグナムの巨大な甲冑姿は視界に入るものの、小柄なルゥは完全に見失っていた。


「ルゥ! どこにいるの!? 返事をしてっ!」


 オークたちの凄まじい鬨の声と絶叫、断末魔の悲鳴に鋼の打ち合わさる音。混戦を極めるこの戦局では、あまり遠くまで声が届かない。

 総崩れとなり潰走する中央主力部隊と、オークの軍勢を分断しようと攻め寄せる両翼の兵士たちとの間で大渋滞が起こっていた。


「アルフラっ! こっちだ!!」


 シグナムが強引に周りの者を掻き分けて近づいて来る。ルゥも一緒だった。


「こりゃ駄目だ! 多分もう司令部は死んでる。最初の指示が飛んで以来、伝令兵がほとんど動いてない」


 シグナムの姿を見つけて移動して来たゼラードが、数名の団員を引き連れて後退して来る。

 全軍に命令を出せる司令部が落ち、各個が独自の判断で動いてるため、混乱は増すばかりだった。


「中央主力はすでに崩れている。このまま巻き込まれたら団の取り纏めすら出来なくなる! 今の内に退いた方がいい」


 シグナムの叫びにゼラードが応える。


「ああ、そのつもりだ! 周囲に居た奴等には退却命令を出した。俺たちも下がるぞ!」


「わかった!」


 ゼラードの指示を受け、シグナムが声を張り上げる。


「おい、撤退だ!! 下がるぞ――!!」


「防衛軍の建て直しは無理だろう。命令を待ってたらこっちまで飲み込まれる。一旦、東から来る援軍と合流して、サルファに入ったオーク共を騎士団と挟撃する」


 オークの軍勢はわき目も振らずサルファへと進軍している。

 この混戦さえ抜ければ、東へ落ちのびることはそう難しくない。



 アルフラたちは南側から街道の東へ回り込み、サルファへと向かって来る八千の援軍と合流することを目指した。

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