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氷の滅慕  作者: SH
六章 悲恋
214/251

凶剣無道(前)



 ロマリア王国の中枢たる壮麗な宮殿、竜玉宮。かつては女王エレクトラが腰を落ち着けた玉座に身をもたせ、魔王口無(くちなし)は上機嫌で臣下からの報告を受けていた。


「各地の領主たちは極めて従順で、上都以西においては組織立って我らに弓引く者はほぼ皆無であります。また、懸案であった官吏不足の件につきましては、地方の高官を召集することにより(まかな)えるかと存じます」


「そうか、やはりロマリアの国政はロマリア人の手により回させるのが最も効率的であろう」


「はっ、しかし地方の人材を接収したことにより、一部の領主たちから控え目な陳情の声も上がっております」


 ふっ、と息を吐き、口無は眼前にひざまずく公爵位の魔族、志梟(しきょう)を見下ろす。


「それには税率を軽減することで対応しろ。そうすれば領主の懐も暖まり、役人共の仕事も減るであろう」


「御意に」


「穀物などの徴収は大幅に免除して構わん。我らにはあまり価値のないものだからな」


 人間の国家において糧食の確保は兵を養うために不可欠であり、その備蓄量は国力に直結する。しかし魔族は食物の摂取をあまり必要とせず、それらは嗜好品の域を出ない。もちろん穀物等を備蓄する習慣もないので、それらを大量に納税されてもむしろ扱いに困るといった事情もあった。


「ただし、それを利用して領主たちが私腹を肥やさぬよう、きつく釘を刺しておけ」


「かしこまりました。我々が定めた以上に民衆から税を取り立てようとする領主には、厳罰を持って処すとの通達を徹底させましょう」


「そうだな……逆らう者があれば幾人かは見せしめに殺しても構わん。代りの者はいくらでもいるということを理解させてやれ」


 口無の治世は市井(しせい)の民には寛容だ。しかしそれらを管理する領主らにとっては苛烈なものであった。彼はロマリア王国の支配に時間を労するつもりはなく、国政において意に添わぬ領主はその首をすげ替え、最終的には従順な者だけを残そうと考えていた。人間の王であれば叛意(はんい)を恐れて軽々しくは出来ないやり方である。


「投降したロマリア軍の解体はどうなっている?」


「そちらも順調です。常備軍はすでに武装を解除し、徴兵された者にはいくらかの金銭と食料を与えて故郷へ帰らせました」


「国庫に残されていた金品はあらかた放出してしまえ。人間の役人たちに管理させてもろくなことには使わんだろう」


「仰せのままに。上都近くの農村からは、口無様に感謝の書状と献上の品が送られてきております」


「ほぅ? さっそく我の機嫌を取ろうと媚びへつらう者が出始めたか」


「いえいえ、その村は収穫期に働き手を奪われ困窮していたらしく、徴兵された者が帰されたことに心から感謝しているようです。彼らは我々魔族の襲来によほど怯えていたようで、書状を運んで来た使者に、村民の命は変わらず安堵すると伝えただけで、涙を流すほど喜んでいたとか」


「クッ、なかなかけなげな者たちではないか」


 口無は満足げに喉を鳴らす。その口許には尊大な支配者の笑み。


「そういった人間は手厚く保護してやれ」


 深々と(こうべ)を垂れて恭順の意を示した公爵位の魔族は口無に尋ねる。


「トラスニアへ(のが)れたロマリア女王の件はいかがなさいますか? すでに十万前後の兵士が集結しているとの報告を受けておりますが」


「十万か……ひと月ほどでよく集まったものだな」


「東へ送った斥候が、五十名ほどのロマリア兵と交戦したという報告もございます。このところ上都近郊でロマリア方の斥候が活発に動き回っているようですな。トラスニアの軍勢がなんらかの行動に出る予兆かもしれません」


「ふむ、そろそろ刈り入れ時か」


「はい。よい頃合いかと」


 しばし黙考した口無は、玉座から立ち上がっておもむろに口を開く。


「翌朝日の出とともに出陣する。数日中にトラスニアを落とすぞ」


「では、そのように」


 志梟(しきょう)は広間の入口に立つ兵を呼び寄せ、こまごまとした指示を与える。用命を果たそうと背を向けたその兵に口無が声をかけた。


「新しく上都の執政官に選出した者をここへ呼んでまいれ」


「はっ、かしこまりました」


 きびきびとした動きで退室した兵と入れ違いに、慌ただしい足音を(ともな)った伝令兵が駆け込んできた。


「エルテフォンヌからの急使が参っております!」


 荒く息を吐きながら叫んだ伝令兵を見て、口無はわずかに眉をひそめる。なにか不測の事態が起きたであろうことは、そのあからさまな慌てようからも容易に想像がついた。


「なにがあった。詳細を……いや、その急使とやらを呼んでこい」


「はッ、ただいま連れてまいります」


 ややあって広間に通されたエルテフォンヌからの使者は、魔王に注視されるという恐怖に震えながら玉座の前に平伏した。


「も、申し上げます。私は炙揮(しゃき)伯爵麾下(きか)においてエルテフォンヌ市街警護の任を(おお)せつかっていた者です」


「遠路よりの使者、大儀であったな。して、そなたの(たずさ)えた急報とは?」


「……非常に申し上げにくいのですが、エルテフォンヌ城は今より八日前、何者かの襲撃により陥落。炙揮(しゃき)伯爵及び、城内に詰めていた千名弱の兵(ことごと)くが討ち死にいたしました」


 使者の語った報告は、その場に深い沈黙をもたらした。玉座から発せられる激しい怒気に、彼は顔を上げることができない。


「……詳しく説明せよ」


 怒りを押し殺した低い声音に打たれ、使者は口早に報告をつづける。


「私の隊はその当日、市街南部の巡回を終え、定時の報告のためエルテフォンヌ城へと向かいました。しかし城門は分厚い氷に覆われており、我々の力ではどうやってもその氷を砕くことができませんでした。私たちは市内の橋から河を渡り、対岸から城内の船着き場へと急行したところ……」


 そのとき見た光景を思い出し、使者の男はぶるりと怖気(おぞけ)に身を震わせた。


「……船着き場周辺には凄まじい腐臭が立ち込め、無数の遺骸が散乱しておりました。そしてそのどれもが白骨化するまで腐敗しており、溶け崩れた死肉のなかに、およそ三百名ほどの人骨を確認しました。――城内ではそれに倍する遺骸が発見され、炙揮伯爵もまた城の最上階にて無惨な姿となり果て……」


 ぐっ、と喉で呻いて言葉を切った使者に、公爵位の魔族、志梟(しきょう)が問う。


「炙揮を殺したのは何者だ。その数は?」


「おそらくは数名のレギウス人かと思われます。街門の衛兵がその日、市中に入る二台の馬車を見ております。御者台には傭兵風の大柄な女と、祭服姿のレギウス教徒が座っていたそうです。そのことから私たちは、馬車に乗っていたのはトスカナ砦にて氷膨(ひょうぼう)様を害したレギウス人の少女なのではないかと見当を付け――」


「それは確か!?」


 口無の上げた腹に響く胴間声を受けて、使者は体を竦める。


「まず間違いないかと。その足跡(そくせき)を追いましたところ、一行は翌日の夕刻、エルテフォンヌ南西の街、トロアの街門をくぐったことを確認。市内にて(くだん)の少女と酷似した容貌のレギウス人を見たとの証言を、複数の者から聴取しました」


「その者の足取りは掴めているのか」


「それは……残念ながら。ただ、方々へ斥候を送りましたところ、西方に(はな)った部隊だけが帰還せず、そのことからこの上都を目指しているのではないかと予想されます」


「……戻らなかった斥候はそのレギウス人達と交戦し、全滅したということか」


「はい、おそらくは」


 厳しい表情で耳を傾けていた志梟(しきょう)が、そういえば、とつぶやく。


「ここ数日、東の関に詰めていた部隊と連絡が取れなくなっている、との報告が上がっていました。……そのレギウス人たちとなんらかの関連があるのかもしれません。のちほど詳しく調べさせてみましょう。――報告を続けよ」


「はっ」


 使者は依然、石畳に額付(ぬかづ)いたまま口を開く。


「私はその者らと行き合わぬよう、ロマリア南部へと大きく迂回してこの上都にまいりました。ですので――」


「エルテフォンヌ城陥落から八日という現状を(かんが)みるに、氷膨を殺した者たちはすでに上都近辺にたどり着いている可能性が高い、と?」


「はい、そう愚考いたします」


「……考えようによっては、朗報ともいえるな」


 そう独りごちた口無は、すっと右手を払う仕草をしてみせた。その意を受け、志梟(しきょう)は主の勘気を恐れて顔を上げることのできない使者に告げる。


「下がってよい。まだ尋ねたいことが二三あるので隣室にて待っておれ」


 退室を許された使者の背を見送り、志梟は視線を口無へと移す。


「どうなさいますか?」


「どう、とは?」


「氷膨を討った少女には決して手を出すな。戦禍帝よりそうお(たっ)しがあったと聞き及んでおりますが……」


「問題なかろう。降りかかる火の粉を払う分にはな」


「しかし、氷膨に続き炙揮(しゃき)まで倒した者であれば、私か口無様でなければ相手にならないかと」


「ハッ!」


 ひどく好戦的な笑みが魔王の口許をゆがめる。


「もちろん我が手で捻り潰すに決まっておろう。――兵を動員して上都の民衆を市街西部に待避させよ。その後は別命あるまでは幕舎にて待機」


 口無は玉座に深く身をあずけて告げた。



「明日の出陣は取り止めだ」





 朝靄(あさもや)に白く視界のかすむ夜営地で、シグナムは浅く短い眠りから覚めた。目の前には弱々しく炎をゆらめかせる消えかけの焚き火。座った姿勢で寝ていたので腰や膝といった関節部がぎくしゃくとする。毛布がわりの外套が肩からずれかけていて肌が冷たくなっていた。


「おはよう、アルフラちゃん」


 ひんやりとした外気にちいさく身震いしながら声をかけると、焚き火を挟んで正面に座った少女がかすかにうなずいた。

 シグナムは薪木を火の中にくべ、朝食の仕度に取りかかる。


「さいきんアルフラちゃんが飯食ってるとこ全然見ないけど、腹はへらないのか?」


 火に掛けた鍋へ干し肉とくず野菜を放り込みながら尋ねるが、返事はない。顔を上げると、めずらしくアルフラが微笑みを浮かべていることにすこし驚いた。どうやら自分にしか見えない誰かの姿に見とれているようだ。シグナムはしばし、あどけなく口許のゆるんだその顔に目をやり、かるく肩をすくめる。

 鍋が煮たつ頃合いになると、天幕の中からごそごそと身仕度を整える気配が感じられた。フレインとトマスが目を覚ましたのだろう。

 すこし離れた天幕の入り口では、いつからそうしていたのかジャンヌが片膝をついてアルフラに祈りを捧げていた。その背後で、朝食の匂いにつられて目を覚ました狼少女が、あくびをしながら身を起こした。

 やがて焚き火の前に人が集まりだすと、それとは入れ違いにアルフラは馬車へと歩いてゆく。


「ねぇ、アルフラもいっしょに食べようよ」


 ルゥの呼びかけにも応えることなく、その後ろ姿は馬車のなかへ消えていった。

 やや気まずい雰囲気のなか、質素な朝食が始められる。

 若干肩を落とし気味の狼少女が椀によそわれたスープに口をつけたとき、その目が夜営地南側の木立へ向けられた。


「……だれかいる」


 焚き火を囲んだ全員がルゥの視線を追う。


「魔族か?」


「たぶん人間だとおもう」


 馬車に行ったアルフラが無反応な以上、その言葉は正しいのだろうとシグナムは判断した。

 剣の柄に手をやりながら狼少女に問う。


「数はどのくらいだ」


「んー……いっぱい?」


 魔族でないのであれば敵である可能性は低い。口無が居座る上都に近いこともあり、この近辺に野盗の類いが出没するとも考えにくい。しかしシグナムは油断することなく、いつでも剣を抜ける構えで木立の奥を見つめる。

 ジャンヌはすでに鉄鎖(てっさ)を握りしめた臨戦態勢だ。彼女の場合、異教徒は基本的にすべて敵なのだろう。

 いきなり矢を射かけられることを考慮し、フレインは防護結界の呪文を唱え始めた。

 ルゥはみなが置いたスープの椀を、ひとつ残らずやっつけていくことにした。まずはトマスとフレインの朝食をひと呑みにしたところで、狼少女は顔を木立に向ける。


「あ……くるよ」


 うっすらと晴れはじめた朝靄のなかから、背の高い人影が姿を現す。


「まさかこのような場所でシグナム殿たちと再会できるとは……」


 その落ち着いた低い声は、聞き覚えのあるものだった。

 背格好と声音から、それが何者であるのか見当のついたシグナムは、剣の柄から手を離す。


「ヨシュア……ヨシュアか!」


 進み出た王宮近衛の隊長へ駆け寄り、シグナムはその肩を両手で掴んだ。


「ははっ、やっぱり生きてたんだな! 上都陥落の話を聞いたとき、あんたの生死は不明だって言われたから心配してたんだぞ!」


 かぐがくと肩をゆさぶられた挙げ句、額がぶつかるほどの勢いで顔を寄せたシグナムに、生真面目なヨシュアの表情がややこわばる。


「見ての通りだ。その折りは命からがらといった有り様だったがな」


 熱烈な歓迎に困った顔をしつつも、口許の笑みが彼もまたこの再会を喜んでいることを表していた。


「……それで?」


 あまり女慣れしていないらしいヨシュアのこわばった体を抱き寄せて、シグナムは低く耳許で囁く。


「近衛であるあんたが、なんでこんなとこにいるんだよ。兵隊まで引き連れて」


 木立の奥からは複数の気配が感じられた。先ほどから物音ひとつ立てないことを考えると、おそらくは訓練された兵士たちなのだろう。

 かつてアルフラがロマリア北部の駐屯地で虐殺を行い、それが明るみとなっているのであろうことをシグナムは忘れていない。もしもの場合はいつでもヨシュアを組伏せられる体勢だ。


「シグナム殿、私に他意はない。この場を訪れたのは哨戒(しょうかい)中の兵が炊煙(すいえん)に気づいたからだ」


「え、この(もや)の中で煙が見えたのか?」


「いや、見えたというより匂いだ。私たちがたまたま風下にいたおかげだな」


「ああ、だからルゥも近づかれるまで気づかなかったのか」


「そのようだな。伏せてある兵はあくまで魔族討伐のためのものだ。こちらとしても、まさか上都にも程近いこの野営地に人間がいるとは思わなかったのでな」


「魔族討伐って、上都奪還でも狙ってるのか?」


「いや、すこし違うな。我々は魔王口無がトラスニアへと進軍したのち、残された守備兵を討つのが任務だ。その後は各地を転戦し、魔族の数を減らそうと考えている。私が率いる五十名は、偵察も兼ねた先遣隊といった位置づけだ」


 シグナムは抱いた肩を解放して、まじまじとヨシュアの顔を見つめる。


「……ロマリア女王はトラスニアにいるって話じゃなかったのか?」


「その通り。陛下はトラスニアにて兵の陣頭にお立ちあそばされている。魔王口無の進軍を確認し次第、陛下は軍を分けて北方に撤退。魔王の本隊を北部に引き付け、その隙を突いて難民に紛れて各地に散っている兵が決起するといった寸法だ」


「女王を(おとり)に魔族の兵を削るってのか? むちゃくちゃだな」


 ヨシュアは苦い表情で声を落とした。


「私たちも切羽詰まっているのだ。魔王口無は単身でこのロマリアを滅ぼせる力を持っている。しかし貴奴めの目的はロマリア全土の支配らしい。いかな魔王と言えど、広大なロマリアを掌握するには手足となる兵が必要だ」


「魔王本人は手がつけられないから、その手足を()いでやろうって腹か」


「いかにも。陛下とトラスニアに駐留する十万の兵士たちは、決死の覚悟で囮役を買って出たのだ」


「それで女王がやられちまったらどうすんだよ。骨を断たせて肉を裂いたら、自分の方が死んじまうんじゃないか?」


 あきれたような口振りのシグナムに、ヨシュアは陰鬱(いんうつ)な表情で告げた。


「もはやそうでもせぬ限り、戦況は(くつがえ)せない。私の部隊も命を捨てて付き従ってくれている」


 ヨシュアは右手を掲げて木立のなかに伏せた兵へ合図を送る。すると五十名ほどのロマリア兵が木々を掻き分けて姿を見せた。


「こちらは私の友であるシグナム殿だ。失礼のないように」


 配下の兵卒に声をかけて、ヨシュアは真剣な眼差(まなざ)しをシグナムへと向けた。


「私たちに力を貸してくれないか? かつてトスカナ砦を落としたときのように、シグナム殿たちが協力してくれれば再びこのロマリアは救われる」


 それまで話の成り行きをうかがっていたフレインと顔を見合せて、シグナムはぼやくようにつぶやく。


「あたしたちに言われてもな。アルフラちゃん次第だろ」


「……そうですね。力添えしたいのはやまやまですが……」


 そのやり取りを聞いてヨシュアが軽く目を見開いた。


「まさか……アルフラ殿も来ておられるのか? エレナ様から聞いた話では、半死半生の大怪我を負っていたと……」


「アルフラちゃんは元気だよ。エルテフォンヌの魔族を皆殺しにしちまう程度にはね」


「エルテフォンヌの……? ()の地には伯爵位の魔族が駐屯しているはずだが」


「そいつはもう死んでるよ」


 驚愕を面持(おもも)ちを浮かべたヨシュアに向かい、シグナムはいたずらっぽく笑んでみせる。


「あんたらに取っちゃ朗報だな。城内にいた大隊規模の魔族もみんな死んじまってる」


 おおっ、とロマリア兵の間から歓声が巻き起こった。


「エルテフォンヌからこっち、関所なんかにいた奴らも、あらかたアルフラちゃんが狩っちまったしな」


「それはありがたい話だ。ならば是非、アルフラ殿と話をさせていただきたいのだが」


「かまわないけど……アルフラちゃんの目的は口無だぞ?」


 ヨシュアに苦笑してみせたシグナムの頬を、冷ややかな空気がやんわりと撫でた。一陣の風が、二人の間を割るように通り過ぎてゆく。振り向いたその視線の先で、馬車の扉が開かれていた。


「アルフラちゃん……?」


 身軽に馬車から飛び降りた少女を見て、それまで静かに佇んでいたジャンヌが死神の王笏を手に取る。眼前のロマリア人たちを敵だと認識したのだ。

 顔色を失ったシグナムがかすれた声で叫ぶ。


「ま、待ってくれアルフラちゃん! ――なんで……」


 冷気を纏った少女がひたひたと歩み寄る。


「なんで抜いてるんだよ!?」



 その右手には、燐光放つ抜き身の魔剣が握られていた。

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