旅の終わり
月光が落ちる薄闇のなか。辺りは喉がひりつくような焦げた空気につつまれていた。
遅れてやって来たフレインが、倒れたアルフラへ駆け寄る。
「あ……アルフラ、さん……」
変わり果てたその姿を見て、言葉はつづかない。
絶句し、目を見開いたまま茫然とするシグナム同様、フレインもまた、その場に立ち尽くしていた。
アルフラの胸部へ強い衝撃を与えながら、カダフィーが口早に叫ぶ。
「ぼさっとしてんじゃないよ! 嬢ちゃんの口に息を吹き込むんだ!」
「え、あ……」
顔面蒼白でおろおろとするフレインを、シグナムが乱暴に押しのける。
「どけッ!!」
深く呼気を吸い込み、シグナムはアルフラの傍らに膝をついた。そして、酷くかさついた唇に、おのれの唇を重ねる。
必死に蘇生を試みる人間たちを遠巻きにして、魔王雷鴉は忙しく頭を働かせていた。
現状は彼にとって、かなりまずい事態と言えた。
たかが小娘一人の命ではあるが、その娘は白蓮に関わりの深い娘だ。そして白蓮は、魔皇戦禍に強烈な影響力を持ち、その想い人だと噂される女だった。あまつさえ雷鴉は、このアルフラという娘絡みでの契約を、白蓮と交わしている。
曰く、その身の安全と引き換えに、戦禍への口利きをしてもらう、といったものだ。
実際にそのおかげで、彼が人間の魔導師と通じていた件は、不問とされている。その契約はあくまで、魔術士ギルドの者が、アルフラへ危害を加えぬよう取り計らう、といった形で履行されたのではあるが――とうの雷鴉本人がアルフラを殺してしまったのでは、いろいろと角が立つだろう。
「チッ……」
短く舌打ちし、雷鴉は片手で眉根を揉む。
まず、白蓮が激怒するのは確実だ。ただ、それだけならば大した問題でもないのだが、と彼は考える。しかし白蓮には、魔王たちの中にも信奉者が多い。こと戦禍に限っては、雷鴉が白蓮の機嫌を損ねたからといって、態度を変えることもそうそうないとは思うが――
――灰塚あたりとは、殺し合いになりかねないな……
戦神の降臨によりうやむやとなってはいたが、灰塚とはレギウス教国の処遇を巡り、一戦交えそうなほどに険悪な状況となっていた。なにかきっかけさえあれば、その確執は再燃するだろう。そして白蓮からの不興は、充分な理由となりえる。
現在、魔王たちは戦禍のもとでまとまりを見せている。戦禍自身も、そういった不和の種は好むまい。
なにより、雷鴉が中央の盟主として、各方面の魔王を従えるという彼の思惑も困難となる。
「……」
雷鴉は、無駄な努力とも思える蘇生を行う人間たちに、じいと視線を向ける。
――みな殺しに、しちまうか……
物騒な目つきで、そんな考えを巡らせる。
雷鴉が、アルフラを殺したと知る者さえいなくなれば、問題は解決だ。その方向で思考を突き詰め、様々な可能性を考慮した結果……
「……無理か」
小さく首を振る。
たとえこの場で、死体を残さず全員を行方知れずにしたとしても、おそらくは無駄だ。そう雷鴉は考える。
アルフラという娘がロマリアにいる理由は、魔術士ギルドにより派遣されたからだろう。
もしもアルフラたちがロマリア北部でその消息を絶てば、同じくロマリアを訪れている雷鴉との関連を、疑う者がいないとは限らない。白蓮と灰塚は、魔術士ギルドとも繋がりを持っているのだから。
そこで、時を同じくしてロマリアの地を踏んだ、侯爵位の魔族のことを思い出す。
魔王口無の配下である氷膨が、すでに斃れたことを雷鴉は知らない。
なんとか彼女を言いくるめて、すべての責任を転嫁出来ぬかと考えてみる。しかしすぐに、氷膨といくらか言葉を交わし、彼女の性格をある程度把握している雷鴉は、頭をかかえる。
――あの女は、洗いざらい口無に話しちまうだろうな……
そしてその口無は、灰塚にぞっこんだ。以前、酒宴の席で、灰塚の機嫌を取るため、これみよがしに白蓮を持ち上げていた口無の姿が、ありありと脳裏に蘇る。
むしろ下手に隠蔽を画策すれば、より状況は悪化しかねない。
「あああ……くそッ!!」
八方塞がりすぎて、思わずその場にしゃがみ込みたくなる。
「おい! 魔導士」
ふるえながらアルフラを見下ろす、導衣姿の背を呼びつける。
びくりと肩を竦ませて、フレインは振り返った。
「お前、俺が誰だか分かるか? 中央の盟主、魔王雷鴉だ」
「は、はい。存じ上げております……」
雷鴉へと向き直ったフレインは、気圧されたように後ずさる。
生身の魔王は、召喚の儀で目にした時とは比べるべくもないほどの魔力を溢れさせていた。その当時とは雷鴉の口調もだいぶ異なるが、違和感を覚える余裕すらない。
「いいか、これはちょっとした手違いだ。俺は元々、その娘を殺すつもりはなかった」
無力に立ち尽くす魔導士へ、分かるよな、と身振りを交えて雷鴉は語る。
「それを留意した上で、今日ここで見たことは決して他言するな。そうすればお前らに危害を加えることはしない」
「……か、かしこまりました」
「もしこの命令を違えれば、お前らを生かしてはおかねえ。そしてレギウスとの休戦協定も、御破算だ」
深く頷いたフレインへ、雷鴉は満足げに笑う。
「よし、くれぐれも忘れるな。事はお前らの命だけじゃなく、レギウスの命運にも関わる話だってことをな」
そう告げて、雷鴉は人間たちへ背を向ける。
こうなった以上、手早くロマリアでの用件を済ませ、直接戦禍へと話を通そうと雷鴉は考えていた。
戦禍にしても、自分が懸想する女が、人間などに執心しているのを、よくは思っていないはずだ。アルフラという娘を殺したこと自体は、戦禍も咎めはすまい。その死が、止むに止まれぬ経緯であったことを話せば、戦禍みずから白蓮を宥めるだろう。
雷鴉自身は、なにも魔王として問題のある行動をとったわけではない。筋さえ通せば、それほどまずいことにはならないはずだ、と希望的観測を抱く。
気をつけなければならないのは、外堀を埋める前に、白蓮へと話が伝わることだ。そうなれば、灰塚や魅月などが絡んできて、収集がつかなくなるだろう。
そのための口止めを済ませた雷鴉は、一路、竜神の住まう皇竜山脈へと向かった。
シグナムは大きく息を吸い、のけ反った顎を抱えて息を吹き込む。
片方の腕はアルフラの首と地面との間に差し込み、しっかりと気道を開かせる。肺にまで届くように深く息をはき、唇を合わせたまま暫時待つ。そして顔を離すと、拡がった肺が呼気を押し出す音に耳を澄ます。その後、自発的な呼吸音がないことを確認し、ふたたび大きく息を吹き込む。
繰り返すこと、幾度目か――シグナムの額に浮いた汗が玉となり、顎を伝う。滴った雫が、煤けたアルフラの肌に滲む。
「あっ……」
ごろごろと不快な音がシグナムの耳を打った。アルフラの喉から響いたものだ。カダフィーはシグナムと目を見交わし、胸に強い圧力を加える。するとアルフラの口から、大量のどす黒い血が吐き出された。
シグナムは慌ててアルフラの体を抱き上げる。そして腰に腕を回したまま、上体を下へ向ける。血液が気道を逆流して、肺へと流れ込む可能性を考慮した行動だった。
夥しい量の吐血をしたのち、弱々しくはあるが、はっきりとした呼吸音が聴こえ始めた。
「息が……!」
シグナムはアルフラの胸部に耳を当てる。かすかに、命の鼓動がその胸を打つのが感じられた。
「あ、あぁ……」
小さく呻いて、シグナムは安堵のあまり、アルフラを抱いたまま地に座り込む。
「体を横にしておいた方がいい。地面に寝かせてやりなよ」
カダフィーの言葉に従い、シグナムはほそい体を大地に横たえる。
「私は一旦戻って、下僕どもに馬車をここまで走らせるよう伝えて来るよ。たぶんこの支道は、もう少し先で街道と交わっているはずだ」
「ああ、頼む。火傷にも効く軟膏が、積み荷の中にあったはずだ。一足先に、そいつを持って来てくれ」
カダフィーは、ちらりとアルフラへ目をやり、
「わかった……」
それまで生きているかはかなり怪しいけどね、という言葉を飲み込む。
さきほどの雷鴉とフレインの会話は、彼女にも聞こえていた。すでにアルフラは死んでいると雷鴉が思っている以上、カダフィーにとって、その生死はあまり重要ではない。ただ、ギルドのことを考えれば、魔王に対しなんらかの札となりえるアルフラは、生きているに越したことはない。
「フレイン。いつまでもぼうっとしてないで、嬢ちゃんを見ててやんな」
「あっ、はい」
その頼りない返答に嘆息しつつ、女吸血鬼は森の中へと駆け戻っていく。
フレインは、アルフラの傍らに膝をつき、自身にも扱える初歩の治癒魔法を詠じる。月明かりに淡く照らされたアルフラは、虫の息といった状態であった。
全身に広がる火傷は、細剣を握っていた右半身が特に酷い。
腕の皮膚はぐずぐずに爛れ、熟れすぎた果実のごとく、肉が露出している。
顔もやはり右側の火傷が酷く、頬や額の傷口は黒く凝血していた。また、右のまぶたは血で固まり、破裂した眼球の残骸らしきものが、視神経と共にこびりついていた。
素肌の露出した範囲は言うに及ばず、臓器にも深刻な損傷が予想される。
かろうじて息はあるものの、その呼吸は不規則だ。
カダフィーが戻るまで、その命を保たせるのは、至難の業だとフレインにも感じられた。
「アルフラちゃん……」
シグナムが、いまだ細剣の柄を握って離さないアルフラの手を、なんとか開かせようとしていた。
「魔族はどっか行っちまったからさ……離してくれよ……」
涙混じりの湿った声音が、フレインの胸を締めつける。
「もういいんだ。アルフラちゃん……だから……」
「シグナムさん。もしかすると火傷により皮膚が熔解し、細剣の柄と癒着しているのかもしれません」
アルフラの手に取り縋るシグナムは、茫然とその言葉を聞いていた。
「無理に手を開かせようとすれば、掌の肉ごと剥げてしまいます」
「……じゃあ、どうすりゃいいんだよ……」
「カモロアの街まで戻り、腕の良い医者に見てもらうしかありません」
「こんな状態で、馬車に乗せるのか?」
シグナムは、地面に両手をついてうなだれる。
「そんなことしたら、今度こそアルフラちゃんが死んじまうよ……」
「ですが、ここではまともな治療も出来ません。早く街へ運ばないと、それこそ手遅れに……」
「くっ……」
苦悶にも似た声を上げたシグナムへ、沈んだ口調でフレインは告げる。
「私達の旅も、ここで終わりです。一刻も早く街へ戻り、アルフラさんの治療に専念しないと」
二人の重苦しいやり取りを、ジャンヌはすこし離れた場所で聞いていた。地に腰をつき、意識を失っているルゥを腕に抱いて。
落雷の瞬間、狼少女はジャンヌを押し倒し、その凄まじい衝撃からかばったのだ。満月の夜なので大事はないと思いつつも、ぐったりとしたルゥの体を、心配気にきつく抱きしめる。
もとより治癒魔法の使えないジャンヌには、何も出来ることがない。
ただただ己の無力さを噛み締めながら――
アルフラの無事を願い、レギウス神への祈りを捧げていた。
魔族の領域中北部。
白蓮は古い城館の地下で、一組の男女と会見していた。
もっぱら口を開くのは、小さな木卓を前に腰掛けた二人、白蓮と男だった。もう一人の人物は、部屋の隅で不機嫌そうにしている。
「ほら、今はグラシェールも陥落して、軽い緊張状態なのは、白蓮だって知ってるだろ?」
その軽やかな口は、白蓮が言葉を発さずとも、延々とさえずることをやめない。
「だから、さ。白蓮の行動を逐一縛り付けようなんて、オレだって思っちゃいない。ただ、あまり勝手に動き回ってほしくないだけなんだ」
口無にも劣らぬよく回る舌で、男は話しつづける。
白蓮の知る限り、彼が饒舌になるのは女性に対してだけという事実が、口無との相違点であった。
「ええっと……話、聞いてる? もし喉が渇いてるなら、なにか持ってこようか?」
白蓮の機嫌を取るように、その口調は穏やかだ。
「酒のたぐいだったら、香草を漬け込んだ火酒しか置いてないけど……それとも果実水のほうがいいかな?」
あまり調度品の置かれていない室内を見渡した男へ、白蓮は短く答える。
「結構です」
「あー……いや、怒ってるのは分かるんだけどさ。その綺麗な顔でまばたきもせずに睨まれると、ちょっぴり恐いんだけど……」
「心にも無いことを」
さらりと白蓮の容姿を褒めつつ苦言を呈する男へ、険しい顔で応じる。
「早く本題に入って下さい。独断で皇城を空けた件で、あなたは私を責めたいのでしょ?」
「いや、まぁそうなんだけど……それにしても、ほら……こう再会を祝して旧交を暖めつつ、おたがい気持ちをなごませる、的な? そういう様式美も必要なんじゃないかなぁ、て気をつかってみたり……」
「不要です」
「……そう?」
にべもない返答に、男は鼻につく悲しみの表情をよそおい、大袈裟に肩を落とす。
白蓮が相手でもなければ、彼のいかにも柔和で優しげな顔立ちは、万人に好感を抱かせるものであった。顔で得をしている類いの男である。
「んー……あのさあ。白蓮がこの前レギウスに行っちゃった件で、すぐにここへ顔をだすようにってのは、高城から聞いてたよね?」
「……ええ」
「それを無視して、今度はロマリアへ行っちゃうってのは……ちょっとひどくない?」
「事情がありましたので」
男は飾り気のない椅子に腰掛けたまま、じっとりとした目で白蓮の顔を見つめる。そして沈黙を待つことなく、すぐに口を開く。
「アルフラっていう人間の女の子と会うのが、そんなに大事?」
「……高城や松嶋から話はお聞きでしょう?」
「あー、質問を質問で返すのは、あまりよくないよ。たまにすごい勢いでキレちゃう人もいるし。――あっ、もちろんオレはそんなことはしないけどねっ」
よく分からないアピールをする男を、白蓮は冷めた目で見る。
「そうやって腹を探るような会話がしたいのであれば、つき合いかねます」
男はおどけた態度を、やや改める。そして真摯な表情を作りつつ、声質を落とす。
「出来れば白蓮には、しばらく皇城に留まってほしい、て話は……前にしたよね?」
「ええ」
「なのに二度も、人間の領域にまで足を運んだ。――オレはともかく、戦禍だっていい顔はしないと思うけど?」
「でしたら――」
白蓮は、音も起てずに席から立つ。迂遠な批難の言葉に、ほとほとつき合いきれなくなってきたのだ。
「皇城へ戻り、戦禍と話をしてみます」
「ああぁぁ、ごめん、ちょっと待ちなって」
立ち上がった男は慌てたような仕草を見せ、早口でまくし立てる。
「白蓮には、しばらくこの館に逗留してもらう。以前に使っていた部屋も綺麗に掃除しておいたんだ」
「なんですって?」
硬い表情で振り返った白蓮から、男はたじろぐように一歩身を引く。
「ほら、それだ。いつも冷静だった白蓮が、そんな感情的になるのなんて滅多にないことだろ? これも全部、アルフラって子のせいだってオレは思ってる」
「それで……?」
「だから白蓮には、しばらくこの館で頭を冷やしてもらう。自室謹慎? てやつだ」
鋭い眼差しで、白蓮は何事かを言いかけた。が――
「まてまて。オレは最悪、そのアルフラって子を、始末しなきゃならない。どう考えても、その子は白蓮にいい影響は与えないからね」
「アルフラを……殺すと?」
聞く者を凍えさせるような響きが、白蓮の声音には宿っていた。
剣呑な雰囲気に反応して、それまで無言であった人物が、じっと白蓮を見つめる。それとは対照的に、男はすっと目を逸らした。
「いや、本当はそんなことしたくはない。したくないさ。でも、白蓮がどうしてもオレの言葉に従えないってなら、そういう手段を取らざるえなくなる……ていうか、ね」
白蓮は緊張の面持ちで、あらわにした怒りを押し殺す。そんな彼女に視線を戻し、男はうそぶく。
「うちの執事軍団は有能だからさ、そのアルフラって子がいくら強くても、確実に仕事をこなしてくれると思うよ?」
視線を合わせたまま黙する白蓮は、小考し、ため息を落とす。
「あなたの目的は、神族との戦いに私の力を利用することなのですよね?」
「まあ……そうだね。白蓮はきっと力を貸してくれるって信じてるよ」
「グラシェールの神域は、戦禍が落としたのでしょう? でしたら神族との戦いなど、すでに結果は見えているのでは?」
「ああ、このまま何事もなく終わればね」
その言葉を受け、白蓮はさらに黙考する。彼はとても狡猾で慎重だ。何事においても十重二十重に保険を掛け、あらゆる可能性を考慮した上で、幾多の代案を用意するような男である。見せかけの道化ぶりも、その悪辣さを隠すためのものだと白蓮は踏んでいる。
「このままでは終わらないと予想しているのですね? 神族がなんらかの手を打ってくると?」
「それが分からないから、白蓮には目の届く場所に居てほしいんだ」
「ようするに、私もいくつかある保険のひとつだと考えているのですね?」
「念には念を入れとく主義なんだ」
男は軽く肩をすくめる。
「白蓮さえおとなしくしててくれれば、アルフラって子には何の危害も及ばない」
それが決してただの脅しではないことを、白蓮は長年のつき合いから理解していた。搦手を好むこの男は、相手の弱みにつけ込んで意に従わせることに長けている。ここで従わなければ、彼は手練の刺客にあっさりと命令を出すだろう。それも、いきなり殺すよう命じるのではなく、アルフラを拘束し、体の一部なりを持ち帰らせるはずだ。
そこまで考えて、折れる以外に選択肢はないのだと、白蓮は結論づけた。
「……今日は、ここに泊まります。あまり長居するつもりもありませんが」
「よかった。わかってくれて嬉しいよ、白蓮」
満面の笑顔で応えた男へ、瞳に軽蔑の色を浮かばせて、白蓮は問いかける。
「……あなたは、自分の行いが卑劣だと感じたことは?」
息を吐くように嘘をつくその男は、
「さあ……ずっとこんな事ばっかりやってきたからね。考えたこともないよ」
どういった感情を顕すものなのか、白蓮にも判別のつかない笑みを、その口許に貼付けていた。