月下雷鳴
「どうした? 口が聞けないのか?」
樹木の枝に、片膝を立て座った雷鴉は、四人の人間を見下ろして笑う。
「う……ああ……」
アベルの震える唇から漏れたのは、かすれた呻き声だけだった。
違うのだ。
どれほど強大な魔族であろうと、仲間達と一緒ならば打ち倒せる。ほんの数瞬前まで、真実アベルはそう思っていた。
しかし、違うのだ。
どれほど想いが強かろうと――樹上に佇む男は、乗り越えられる事象ではない。そう悟らざるえない。
力が違う。
格が違う。
存在自体があまりにも違い過ぎる。
人間の成し得る業ではどうにもならない。
御することも、抗することも不可能だ。
出遭ってしまったこと自体がまず不運。
出来ることといえば、逃げるか祈るか、諦める以外の選択はない。
まるで、この世の不条理を詰め込んだかのような男だった。
それはおそらく、魔王という突き抜けた存在を目にした者が、皆等しく感じる絶望だろう。
「に、逃げましょう」
小刻みに震えながら、フィオナが泣きそうな声を出した。
「ああ、それがいいな。構わないぜ。ケツを捲って逃げ出せ。そしたら見逃してやるよ。――ただし」
すっ、と雷鴉が目を細める。
「地図を置いていけ。こんな荒野を旅してるんだ。地図の一枚くらい持ってるだろ?」
「地図……?」
やっとの思いでアベルは声を絞り出した。
「言ったろ。俺は皇竜山脈に行きたいんだよ。竜神をおがみにな」
「な、なぜ竜神様に……?」
「魔族が会いたいっていえば、目的なんてひとつしかないだろ? 察しろよ」
「まさか……」
腰の宝剣に、アベルが手をかけた。その腕をフィオナが必死の形相で押さえつける。
「やめて! アベル!!」
アベルへ抱き着きくようにしてその両腕を封じながら、フィオナは掠れた声で雷鴉に尋ねる。
「地図を渡せば見逃してくれるの!?」
「ああ、お前らを殺す理由もないしな。そんなことをしても、俺にはなんの得もないだろ? ――で、地図はお前が持ってるのか?」
「……ほ、本当に? 魔族なのにあたし達を殺すつもりがないなんて、信じられないわ」
「別に魔族ってのはな、人間を殺すのが大好きってわけじゃないんだぜ? まあそういう奴もいるけどな。俺は違う」
だから、と囁き、雷鴉は手を差し出す。
「ほら、地図を出せよ」
契約を求める悪魔のように笑う。
「そうすりゃあ、お互い気分良くこの場を離れられる」
フィオナは逡巡しながらもアベルへ絡めた腕をほどき、背嚢へと手を伸ばす。
「駄目だッ、フィオナ! こいつは竜神様と戦うつもりなんだ。絶対に渡しちゃいけない!!」
アベルは勢い宝剣を抜き放つ。その刀身から、金色の光が溢れ出た。
皇竜の宝剣に秘められた祝福の力だ。
竜神を信仰する者の戦意を昂揚させ、呪術的な加護が発現する魂魄の光。
アベル達の心胆を縛りつけていた畏怖と絶望とが、急速に薄らいでいく。薬物により恐怖心を喪失した特攻兵のように。
大楯を構えたダルカンがアベルの前へ出る。
宝珠を手にしたメイガスが呪文の詠唱を開始した。
「ねえアベル! お願い、やめて!!」
フィオナだけが、なんとかこの戦いをやめさせようとしていた。アベルへ縋りつき、その背に顔をうずめる。呪縛すらもよおす恐怖心は薄れたが、より強い、アベルを失うという虚無感がそうさせていた。
「フィオナ、さがってて」
「ははッ。俺とやろうってのか?」
雷鴉は木の枝に腰掛けたまま身じろぎもせず、余裕の面持ちでアベルを見下ろす。
「いいぜ。お前らを殺す理由はないが、生かしておく意味もとくにない」
「待って! 地図はあげる、あげるから!!」
「フィオナ、さがって!!」
「おい、女。お前だけは殺さないでやる。地図が焦げたら困るからな。おとなしく後ろで見物してろ」
雷鴉の全身から、ちりちりと青白い電光が散った。
辺りには濃密な魔力による重圧がかかり、恐ろしく剣呑な気配が立ち込めた。
「――クッ」
みずからの背にアベルを庇い、ダルカンが叫ぶ。
「おい、メイガス! 早くしてくれッ! 竜神様の楯でも生き残れる気がしねえ!!」
老魔導師の手にする宝珠が赫く煌めきたった。しかしまだ詠唱は途切れることなくつづいている。
アベルの宝剣からも加護の力が溢れ返り、その光度を増す。
「……ずいぶんと人間には見合わないもの持ってるな」
雷鴉は、アベル達が所持するそれぞれの宝具に視線を移していく。そのひとつひとつが、並の貴族が相手ならば、充分に渡り合えそうな魔力を発していた。
「もしかして、竜神の加護を受けた英雄ってのはお前らのことか?」
雷鴉がグラシェールの手前でその報告を受けてから、まださほど日は経っていない。
「……手出しは無用とか言ってたな……」
ロマリアへ来る直前に、南部の盟主からかけられた言葉だ。部下の訃報を聞かされた時の口無は、かなり取り乱していた。その激昂具合を思い出して、雷鴉は顔をしかめる。
「……予定変更だ。後がうるさそうだからな。死なない程度に加減してやる」
おそらく剣を構えた少年が、子爵位の魔族を殺した勇者なのだろうと見当をつける。だとすると、大楯の戦士と魔導師らしき老人は、最悪殺してしまっても構わないはずだ。
雷鴉の周囲で火花が弾けた。
降り注ぐ月光よりもなお仄青い電光が膨れ上がる。
「……ん?」
雷鴉の視線がメイガスの手元へ向けられた。
「なんだ、それは?」
虹竜の宝珠が、赫熱の輝きを放ち、膨大な熱量を伝えてきていた。
「お前がお喋りに興じておる間に、完成させたのだよ。二百五十六節からなる、長大な呪文の詠唱をな」
「へぇ、すごいな」
感心したような声でつぶやいた雷鴉の関心は、魔力を放つ宝珠ではなく、メイガスの頭の中身へ向けられていた。
「そんな長い呪文をそらで覚えてるのか。たいしたもんだ」
樹上の魔王は嘲るように肩をすくめる。
「人の魔術ごときと、侮るか? だがな、我ら魔術を志す者達は、太古の昔より研鑽を重ねて来た。お前達魔族が、持って生まれた力の上にあぐらをかいておる内にな」
「そうか。じゃあ、まずは爺さん、あんたからだな」
雷鴉の口許が酷薄に歪んだ。
「させるかよ!」
ダルカンが突進する。周囲に雷の結界を張り巡らせた雷鴉へと。
まばゆい紫電が、視界をおおわんばかりに広がる。
「うっぐああぁぁ――――!!」
雷光に絡み取られたダルカンは、その場に縫い付けらる。
「おいおい、無茶するなよ。なるべく殺さないでやろうと思ったのに。――加減するの結構むずかしいんだぞ」
「メイガス、早く!!」
「承知」
アベルの声にメイガスが応える。
「悉くを灼き尽くせ! 無限永劫火ッ!!」
赫熱の業火が、月下の魔王を呑み込もうと激しく燃え上がった。しかしその炎も、障壁に阻まれて雷鴉には届かない。
「はっ、この程度の炎……」
歯牙にもかけぬ、といった表情だった雷鴉が、ふと怪訝そうな顔をした。
メイガスは老いた顔に皺を刻み、会心の笑みを浮かべる。
「どうだ、驚いたか? それは――」
「魔力を糧として燃える炎、だよな? 知ってるぜ」
「な、なぜそれを!?」
「レギウスの魔導師から貰った本に書いてあった。――たしか、障壁を形成する魔力を灼き尽くすまでは、消えないんだったか?」
火の魔導書には一通り目を通していた。いつか地面に這いつくばらせてやろうと画策している女魔王が、炎の魔法を得意としているからだ。
「馬鹿な……この魔術は門外不出の……いや、しかしそれを知ったとて、無限永劫火は糧となる魔力が強ければ強いほど、より激しく燃え上がる! そしてお前は――」
突如、雷鴉を取り巻く炎が急速に膨れ上がる。そして、凄まじい破裂音を響かせ、爆散霧消してしまった。
「なん、だと……!?」
雷鴉が己の力を流し込んでやったのだ。
高圧な魔力により燃料過多となった炎自体が、爆発燃焼した勢いで発破の役割を果していた。
そしてその影響は、雷鴉を取り巻く電光にも現れる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――――――」
ダルカンの絶叫が響き渡った。
それは声帯を痙攣させるかのごとき、いびつな悲鳴であった。
著しく電圧を増した紫電に纏わりつかれ、ダルカンは目を剥いて悶える。
耳を覆いたくなるような叫びとともに、口から白い蒸気が吐き出される。
通電により内臓が灼かれ、体液が沸騰したのだ。
火花を散らす眼球が破裂して、両の眼窩から気化した血潮が噴き上がる。
ダルカンの肌が真っ黒に焼け焦げ、断末魔の叫びが消え去るまで――まばたき二つほどの時間しかかからなかった。
「あ……ダルカン……?」
「な?」
雷鴉が皮肉げに笑う。
「この世にはな、研鑽やら努力なんてもんが、莫迦らしくなってくる相手ってのが確実に存在するんだよ」
このとき雷鴉が思い浮かべたのは、グラシェール山頂部を一瞬で消し去った魔皇の姿だった。
「ダ、ダルカン? ダルカン――!?」
アベルは目を見開き、消し炭となった仲間の名を呼んだ。
「あ……あああぁぁぁァァァ――――!!!!」
アベルは縋りつくフィオナを振り払い、ダルカンの仇へと駆ける。
「やめてぇぇ――!!」
「いかん! アベルッ」
雷鴉を取り巻いていた電光の帯――電磁結界が瞬時に消え、かわりに細い雷火が地を迅った。
二条の紫閃がアベルとメイガスを捕らえる。
二人はまばゆい電光に頭頂まで貫かれ、ひとつ痙攣したあと声もなく崩れ落ちた。
「アベルッ、アベル!!」
駆け寄るフィオナに落ち着き払った雷鴉の声が投げられる。
「殺しちゃいないよ。いくら人間でも、その程度で死にはしないだろ」
フィオナは快癒の呪文を詠じながら、背嚢から木筒を取りだし雷鴉へ放った。
樹木の根本に転がった木筒は、長さにすれば約二握り半といった細長いものだった。
周囲の地面は、雷鴉の放った電熱により黒く焦げ、いたるところから白い煙が立ち上っている。
そこだけ戦いの痕跡の見られない樹木から、飛びおりた雷鴉が木筒を拾いあげた。
「お願い! それをあげるから行って! もうこれ以上アベルにひどいことしないで!!」
「酷いことって……先につっかかって来たのはそいつらだぞ」
愚痴をこぼしながらも木筒の中身を取り出す。そしてそれが、数枚に及ぶロマリアの地図であることを確認した。
「ずいぶんと詳細な地図だな。最初から素直に、こいつを渡しとけば怪我もせずに済んだものを……」
木筒をくるくると玩びながら、雷鴉は背を向ける。
「ま、お大事にな」
足音もなく歩み去った雷鴉へは目もくれず、フィオナは意識のないアベルの容態を確認する。
快癒の魔法をかけたにも関わらず、アベルは目を覚ます気配がない。
首筋に手を当て脈を計るが、その鼓動はおそろしく早かった。そして体温が異常に高い。
フィオナはもう一度、快癒の光を流し込む。すると、うっすらとではあるがアベルの瞳が開かれた。
「あ……ぼくより、ダルカンと……メイガスを……」
呼吸は荒く、発せられた言葉も切れ切れだ。いぜん体温も高く、意識が朦朧としているようで、視線は焦点を結ばない。
「なんで……」
快癒は治癒魔術の最高位である。にも関わらず、アベルの容態は回復のきざしを見せない。
「はや、く……ダルカンと、メイガスを……たす、けて……」
「アベル……ダルカンはもう……」
フィオナが向けた視線の先では、かろうじて人間の原形を留めた――ダルカンであった黒い物体が転がっていた。
「あ……メイガス。メイガス!」
フィオナは倒れ伏した老魔導師のもとへ走り、みたび快癒を唱える。
「目を覚まして、メイガス」
癒しの光に包まれたフィオナの腕が触れると、メイガスは程なくして意識を取り戻した。
「メイガス、助けて! アベルが快癒の魔法でも回復しないの。どうすればいい!?」
「……う……ああ……あの、魔族は……?」
「もういないわ、それよりもアベルが!」
「どのような……状態、なのだ?」
やや意識のはっきりしてきたメイガスが、苦心して体を起こす。
フィオナは早口で、なるべく事細かにアベルの容態を告げた。
「もしかすると、臓器に損傷を……受けておるのかもしれん」
「そんな……でもそれなら快癒で……」
「推測、ではあるが……さきほどの魔族の力があまりに強すぎ……銀竜の篭手がもたらす癒しを……」
「アベルの体内に強い魔力が残っていて、快癒の効果を疎外してるってこと?」
メイガスが苦しげに咳込みながら頷く。
「おそらくは、そうなのだと思う。でなければ……快癒でも回復しきれないほどの損傷を、臓器に負っているか……」
そう告げるメイガスも、毛細血管が破裂したことにより、顔中に紫のひびが入ったかのような酷い有様となっていた。
「どちらにせよ……急ぎ街へ戻り、しかるべき治療を……施さねば危険だ……」
「わかったわ! 立てる、メイガス? 二人でアベルを――」
差し延べられたフィオナの手を、メイガスが弱々しく押しとどめた。
「いや、すまぬがそれは無理そうだ」
「――え?」
「足を……儂の足を見てみよ」
メイガスの導衣からわずかに覗いた地肌は、赤黒く変色していた。電熱により灼かれた皮膚組織がやぶれ、爛れた皮膚から生焼けの肉がのぞいている。
「両足とも、感覚がないのじゃよ」
泣きそうに顔をゆがめたフィオナが口許をおおう。
「そんな……」
「儂はここに残る。難儀であろうが、姫様一人でアベルを街まで運んでもらうより仕方ない」
「待って、もう一度快癒をかけてみるわ」
「無駄じゃよ。重度の火傷はたとえ快癒であろうと治りはせん」
「あ……」
そう。どれほど高度な治癒魔法でも、火傷により完全に壊死してしまった細胞の再生は、出来ないのだ。
欠損した首の復元を可能とする多頭蛇ですら、傷口を焼けば二度と再生することはない。
「わかったであろう? いまは一刻も早くアベルを街へと運ばねばならん」
「……ええ。ごめんなさい、メイガス。街についたら急いで人をよこすわ。だからそれまで頑張って」
フィオナは、みずからが携帯している食糧と水が入った革の背嚢を、メイガスのかたわらに置いた。
「なあに、数日は大丈夫じゃよ。姫様はアベルのことだけを考えるとよかろう。くれぐれも、宜しくお頼み申しますぞ」
「メイガス……」
まるで、それが別れの言葉のように思えてしまい、フィオナは少し逡巡する。――しかし、すぐに迷いを振り払い、力強く頷いた。
「任せておいて。アベルを街まで運んだら、すぐに助けを呼んで来るわ」
「出来れば、酒を持たせて人をよこして下され」
呵々と笑った老魔導師に微笑みを返し、フィオナはアベルを助け起こしにかかった。
一夜明けた朝のトスカナ砦。
玉座に腰掛けた氷膨の正面には、全裸のアウラがひざまずいてた。
武骨な砦には似つかわしくないその玉座は、咬焼により運び込まれたものである。元はエルテフォンヌ伯爵の居城に据えられていた、ある意味アウラにとっては、亡き夫の形見に等しい品でもあった。
しかし玉座の主も、今では夫を殺した咬焼から目の前の女、氷膨へと取って代わられている。
玉座に腰掛けた氷膨もまた、アウラと同じく一切の衣服をまとっていない。そして室内には、他にも六人の女とアウラの娘であるオクタヴィアの姿もあった。彼女達も着衣は許されておらず、氷膨の目を愉しませるために裸身を晒している。
まだ幼さの残る、未熟な体つきをしたオクタヴィアの全身には、無数の痣が浮いていた。
氷膨によりつけられたものである。彼女はみずからの意に沿わぬことがあると、オクタヴィアを責めるのだ。その苦痛に悶える姿と、我が子をあんじて顔を歪めるアウラを同時に楽しむことが、氷膨にとっての至福の時間であった。
氷膨がこのトスカナ砦を訪れてからの三日間、そういった過酷な時が流れていた。
東から戻るはずの斥候が、遅々として帰還しないことも、氷膨の仕打ちに拍車をかけたといえるだろう。
オクタヴィアも、トスカナ砦へ連れて来られた当初は、怯えたり涙を流したりもしていた。しかし最近では、感情を失ったかのようにやつれた表情は動かず、目も虚ろとなっていた。健康的であった体はすっかりと細り、肉付きのよかった胸元には浮き出た肋が目立つ。
元来、オクタヴィアはとても気の強い娘であった。しかし、そのあまりの変貌に、アウラは心を掻きむしられるような焦燥感に苛まれていた。
「どうした? 動きが止まっているぞ」
氷膨の冷たい声音に、アウラは慌て奉仕を再開する。機嫌を損ねれば、責められるのはアウラではなくオクタヴィアなのだ。
幾対もの視線の中で、みじめにも四つん這いの姿勢のまま、氷膨への奉仕をつづける。
深く玉座に腰掛け、大きく膝を割った氷膨の秘所を、たんねんに舐めあげる。
かつてはエルテフォンヌ伯爵夫人として、多くの女官達にかしずかれていたアウラも、いまや奴隷以下――家畜や愛玩動物並の扱いを受けていた。
「ん……アウラ、お前はずいぶんと……はぁ……舌使いが巧みだな」
艶めいた吐息をもらし、氷膨はアウラの髪をまさぐる。
「……あ……よほど咬焼に……んぅ……仕込まれたとみえる……」
飼い主は咬焼から氷膨に変わりはしたが、受ける屈辱はいや増していた。
だが、我が子の前で同性への奉仕を強いられる屈辱よりも、そんな母の姿を茫然と、眉ひとつ動かすことなく眺めるオクタヴィアが心配だった。
――ああ……ここは、地獄だわ……
――誰か……誰かたすけて……
己ですら叶うとは思っていないその願いが――
「……なんなの、これは……?」
不意に背後から、困惑に満ちた声が響いた。
振り返るとそこには、砦内では見かけない顔の人物がいた。扉に手をかけた姿勢のまま、とても訝しげな顔で硬直している。
無理もなからぬ話だろう。
扉を開けてみれば、室内には全裸の女性が十人ほど。
玉座に腰掛けた氷膨も全裸なら、その足元に這いつくばったアウラもまた素っ裸。そしてアウラは氷膨の股間に顔をうずめ、舌と唇を使ったご奉仕の真っ最中だったのだから。
いかな白蓮といえど、情況把握に窮することは必然といえた。