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氷の滅慕  作者: SH
五章 絶愛
118/251

算数苦手



 胸を張ったルゥは、見下すような目でディモス将軍を見上げていた。彼は体も大きく、ずいぶんと偉そうな態度ではあるが、この天幕内においては弱い部類の個体だ。ウドの大木である。

 そして、かなり強そうなヨシュアという口ヒゲの男も、アルフラには及ばない。さきほどから、何やら難しいことをぺらぺらと喋ってはいたが、結局のところ、アルフラは強いということが言いたかったらしい。


 人間はほんとうにおバカさんだね、とルゥは思う。


 だいたい、アルフラが普通でないことくらい、理屈抜きに一目でわかる。

 初めて遭遇する相手の危険度を量れない者は、自然淘汰の対象だ。まず生き残れない。

 ウドとヒゲはいい大人なのに、これまでどうやって生き延びてきたのか不思議でならない。


 きっと、人間は石の街で暮らすから、大切なことを学べなかったのだろう。そういった意味で、この二人は格下だ。


 初対面時に、アルフラをおちびちゃん呼ばわりしたルゥは、自分のことなど棚に上げ、


――ボクがめんどうを見てあげないとね


 そんなことを考えていた。

 だが、今はとりあえず、


「ねぇ、お姉ちゃん。ボク、お腹へった」


 シグナムの背をつついた。


「ん? ああ、まだ話の途中だからちょっと待ってな」


 シグナムは、ルゥの頭に手を置き苦笑する。


「こいつは獣人族のルゥだ。難癖つけられる前に言っとくが、並の兵士なんかよりずっと役に立つ。ナリは小さいけど心配いらない」


「獣人族、ですか?」


 ロマリア人達は、物珍しそうな顔をする。

 ルゥの真っ白な髪と深紅の瞳は、人族ではめったに見ない色合いだ。白子でもない限り、通常では有り得ない。


「このロマリアにも数種の獣人族が存在しいてます……けれど彼らは皆、他種族との交流を避け野山で暮らしています」


 あまりじろじろと観察するのも不躾かと思ったエレナは、視線をシグナムへ移す。


「レギウスではこうやって、人間と行動を共にする獣人族も多いのですか?」


「いや、レギウスでも同じだ。ルゥが特別変わり者なんだと思う」


 えへへ、とルゥが笑う。


「ルゥ、“変わり者”は褒め言葉ではありませんわ」


 軽いツッコミを入れたジャンヌへ、シグナムが声をかける。


「お前もとりあえず、自己紹介くらいしときな」


 だが、ジャンヌはぷいっとそっぽを向く。


「異教徒に名乗る名など、持ち合わせて――」


「こちらはジャンヌ・アルストロメリア様です」


 素早くフレインが割って入った。


「名前でお分かりかと思いますが、武神ダレスの司祭枢機卿、アルストロメリア侯爵のご息女であらせられます」


「それは、また……」


 エレナが何とも言えない微妙な表情をする。

 アルストロメリア侯爵は、レギウス南部に広大な領土を有する大貴族だ。国は違えど、王族であるエレナとアルストロメリア侯爵とでは、もちろんエレナの方が家柄は上だ。しかし、治める領地の広さや保有する私兵の数、そして国への影響力といった総合的な政治力では、おうおうにして一介の王族よりも権勢を誇る貴族も存在する。アルストロメリア侯爵も、そういった大貴族の一人だ。レギウス教王やロマリア女王ですら、幾分かは機嫌を伺わなければならない相手である。そのアルストロメリア侯爵を父に持つジャンヌへ向き直り、エレナは居住まいを正す。


「我がロマリアは、中立地帯を挟み国境を接するアルストロメリア侯とは、密接な関係にあります。互いの繁栄のためにも手を携え、末永く共存の道を歩んでゆきたい。それがロマリア王室の見解です」


 一旦言葉を切ったエレナは、深く頭を下げる。


「ロマリアの危局に際し、ご息女自らを遣わして頂いたアルストロメリア侯爵へ――そして、遠路はるばるこの地に参られ、お力添え下さるジャンヌ様へ、心よりの感謝を」


「あ、いえ……これはご丁寧にいたみいります……」


 根は素直なジャンヌも、釣られてお辞儀をしてしまう。そんな神官娘へ、エレナはにっこりと微笑む。


「武神を信仰する方々が、竜神を(まつ)る者をよくは思われて――」


「ダレス様の神官だけではありませんわ! 神王レギウスの信徒すべてが――」


「ジャンヌさん! この場では、信仰にまつわる軋轢はしまっておいて下さい」


 それでも何事かを口にしようとするジャンヌの背中に、ルゥが飛びつく。空腹待ちの狼少女は、早く話を終わらせたい一心で、ジャンヌの口を塞いだ。


「かつて、このロマリアの前身であった古代王国は、地母神信仰の中心地であったと伝えられています。ロマリア建国にたずさわった五人の巫女も、もとは地母神ダーナの神官だったのですよ。いわば神王レギウスの信徒と私達は、親を同じくする姉妹のようなもの……」


 ルゥを背負ったまま、もごもごと口を動かすジャンヌの目には、敵意しかない。神王レギウスへの信仰と竜神信仰を、姉妹に例えられたのが、ことのほかお気に召さなかったようだ。


「これまでに不幸な行き違いがあったとしても、同じく魔族を敵とする私達は、互いの手を取れるはずです。今は一刻も無駄に出来ない状況ですが、ジャンヌ様とは一度ゆっくりとお話をしてみたいと思っています」


 もう一度、ジャンヌへ頭を下げたエレナは、ディモス将軍に命じる。


「ジャンヌ様には警護をつけ、くれぐれも身の安全を計って下さい」


「はっ、かしこまりました」


 若干、思うとこがありげのディモス将軍だったが、とくに異論を唱えることはしなかった。

 本来であれば、警護に人員を()きたくはないのだが――


「回復魔法を使える者は貴重だ。後方で怪我人の手当に従事していただければ、命を落とす兵も減りましょう」


 神官だから回復魔法を使えるという先入観は、逆に死傷者を増やしますよ? と思ったフレインだったが、とりあえず黙っていた。

 気の立ったジャンヌが、拳の届く範囲内に居たからだ。


「そちらの若い方々は、隣の天幕に移り、旅の疲れを癒されてはいかがですか?」


 アラド子爵が提案した。


「隣接する指揮官用の天幕を提供いたします。食事なども運ばせましょう。この後は、行程に関するこまごまとした説明になりますので、全員が残る必要もありませんよ」


 エレナも頷く。


「そうですわね。アルフラ……さんも先程から退屈そうにしていらっしゃいますし」


 嬉しそうにするルゥを横目に、シグナムはアルフラへ尋ねる。


「どうする、アルフラちゃん?」


「あたし、お腹はへってないけど買い物がしたい」


「買い物? 何が欲しいんだ?」


「ええと、ね……」


 アルフラは懐紙(かいし)を取り出す。白蓮の髪を包んだものだ。


「これを入れて、首からぶら下げられるような小物がほしいの」


「ああ、そうか……なんかの弾みで中の髪が散らばるといけないしね」


「髪、ですか?」


 興味を惹かれたらしいエレナが、アルフラの手元をのぞき込む。


「もしかして、恋人の髪をお守り代わりにしているのですか?」


 アルフラが、頬を染めてはにかむ。


「うん」


 とても幸せそうにするアルフラを見て、エレナは目を細める。そして、ちらりと意味ありげにヨシュアへ視線を流す。


「うらやましいですわ……」


 自然な感じで目を逸らしたヨシュアへ、エレナは心の中で舌打ちする。


「ああ、ごめんなさい。アルフラさんは小物が欲しいのでしたわよね。――そうですね、でしたら隊商通りにゆけば、良い品が見つかるかもしれませんよ。案内の者を付けましょう」


「じゃあ、アルフラちゃんとルゥはゆっくり買い物でもして、隣の天幕で休んでな。……あっ、ジャンヌ。お前もだ」


 シグナムは小銭の詰まった革袋を取り出し、ジャンヌに渡す。


「食い物屋があっても、あんまりルゥに無駄遣いさせないでくれ」


「わかりました」


 天幕の外で待機していた騎士へ、アラド子爵が声をかける。

 エレナはにこやかな笑顔でアルフラを見つめながら、ひとりごちる。


「ほんとうに可愛らしい娘ですね。あんな子が爵位の魔族を倒しただなんて……」


「まったくです。ヨシュア殿の見立てを疑うわけではないが、この目で見るまではどうにも納得がいかん」


 ディモス将軍は、小柄で華奢(きゃしゃ)な体つきの少女へ、疑念まじりの視線を向けた。その顔立ちは可憐で、女戦士に頭を撫でられ、花のような微笑みが浮かべられている。


「同じ戦場に立てば、目にする機会もあるでしょう」


 憂鬱そうな声音で、フレインはディモス将軍へ告げる。



「アルフラさんの戦いぶりを見れば、味方であっても……たぶん胆を冷やしますよ」





 案内役の騎士二人が、アラド子爵に何事かを指示されているあいだ、シグナムもアルフラへ厳しく言い含める。


「もし絡まれたりしても、殺しちゃダメだからね。それと、人が多く集まる場所で、剣を抜くのもダメだ。短刀もね」


「うん、だいじょぶ」


 エレナの微笑ましげな視線の先では、こういった物騒なやり取りがなされていた。


「あっ、そうだ。あたし短刀もほしかったの」


「短刀? だったら予備が幾つかあるから――」


「ううん。両刃のやつじゃなくて、刃の薄い片刃のがほしいの」


「え? そういうのだとすぐ刃が欠けて、使い物にならなくなるよ?」


 二人の会話を聞いていたカダフィーが、口を挟む。


「嬢ちゃんが言ってんのはさ……狩りなんかで使う狩猟刀のことじゃないかい?」


「あ、うん。それ」


「それ、って……まさかアルフラちゃん……」


 眉をひそめたシグナムに代わり、カダフィーが尋ねる。


「あんた……獲物を解体(バラ)すつもりかい?」


 アルフラは答えることなく、じっとカダフィーを見つめる。その顔に、先程までの温もりはない。微笑みだけはそのままに、温度がスッと抜け落ちてしまっていた。


「……まったく。つくづく正気のさたじゃないね。なんでそこまで……」


「なあ、アルフラちゃん……」


 顔色を失ったシグナムが、心配そうにアルフラの目を覗き込む。


「べつに、魔族をばらばらにしようなんて思ってない」


 その声音は、普段と変わらず落ち着いていた。シグナムの表情に安堵が浮かびかけ――――つぎの一言で凍りつく。


「ちょっと腑分けすれば、いつもより多く血がとれるかなって……」


 愕然とするシグナムへ、アルフラは淡々と告げる。


「ほら、今度の相手は爵位の魔族だから、少しでも“無駄”にしたくないし」


 その意図を悟り、シグナムはがっくりと膝を落とす。


 アルフラは、効率化を計ろうとしているのだ。


 農村で育った子供なら、家畜や野鳥の腑分けが出来てもおかしくはない。

 おそらくアルフラにも、血抜きや(わた)取りの知識があるのだろう。

 だが、それを平然と人体に応用しようと考えるアルフラの思考は……


「嬢ちゃん。あんたさ、頭の中の大切なネジが、なん本か抜け落ちてるんじゃないか? そのうえ余計なものが混じっちまってるとしか思えない」


 呼吸を必要としないカダフィーが、器用にため息をついてみせる。確かに彼女も血を啜りはするが、夜の貴族とも呼ばれる吸血鬼は、アルフラがやろうとしていることはしない。食事に関するマナーも貴族的なのだ。


「でもね。あんたがやろうとしてるのは、素人がおいそれと出来るような仕事じゃないよ。人の体ってのはね、家畜と比べて内臓の位置が違うし、大きさや形もまったく別物――」


「そんなの知ってる」


 そう。アルフラは知っている。

 家畜の腑分けだけではなく、人体の急所を事細かに知っているのだ。

 どの部分に多くの血が集まり、どこを刺せば短時間で失血死させられるのかを。そしてどこを壊せば致命傷になりうるのか。どの箇所なら瞬時に行動不能となるのか――それを、高城から教えられていた。


「たぶん、そんなに難しくはないと思うの」


 血流が止まると、臓器に溜まった血を啜り出すことは非常に困難だ。それをアルフラは、これまでの経験から学んでいた。

 ならば――



 摘出してしまえばよいのだ。



 胸骨と(あばら)に守られた五臓。腹膜に包まれた六腑。アルフラにとって大切なのは五臓の方だ。

 (しん)(はい)(かん)(じん)()。五つの臓。そこには常に多くの血液が供給されている。


 稀有な力を宿す、爵位の魔族の血は、一滴たりとも無駄には出来ない。すべて呑み尽くしてやるのだ。


「アルフラちゃん……」


 らしくない不安そうな顔をしたシグナムを、冷たい腕が抱きしめる。


「心配しないで。シグナムさんには迷惑かけないようにするから。絡まれても騎士の人が居れば平気でしょ?」


 アルフラの視線を受け、二人の騎士は飛びすさるようにして距離を取る。背中が壁に当たり、それ以上さがれないと悟り、恐怖に顔を引き攣らせる。


 今のアルフラは、女吸血鬼をも凌ぐ禍々(まがまが)しい気配を発していた。


「いや、アルフラちゃん。そうじゃなく……」


 膝をついたシグナムは、頭の位置がほぼアルフラと同じだ。

 頬と頬を合わせ、アルフラは歌うように告げる。


「だいじょうぶ。だいじょうぶ」


 すっかりと冷たくなってしまったシグナムの首筋から腕を離し、アルフラは騎士へ声をかける。


「早く案内して」


「はっ、はい。ただいまっ!」


 二人の騎士は、逃げ出すように入口へと駆け寄った。そのあとをアルフラが追う。ぎくしゃくとした動きのルゥをともなって。


「ジャンヌ。アルフラちゃんを頼む」


 凍えたような声でシグナムが言った。


「ええ……」


 やはり表情を硬くしたジャンヌが、戸口に消える。


 アルフラ達三人が去ったあとの天幕では、しばらく口を開く者はいなかった。

 冷たい沈黙が落ちる中、呆然と身を竦ませるロマリア人達へ、フレインが声をかける。


「理解して、いただけましたか?」


 応える者もなく、フレインは言葉をつづける。


「トスカナ砦を占拠した者達には、ご愁傷様としか言いようがありませんね……」


 魔族の血を捧げるため、このロマリアへとアルフラを(いざな)った魔導士は、暗い目で戸口を見つめていた。


咬焼(こうしょう)という魔族……あまり楽な死に方は出来なそうだ」



 蒸し暑い夏のロマリアであるにも関わらず、天幕内にはまるで、朝靄(あさもや)のような白い冷気が漂っていた。





 街の城門へとつづく街道の両脇には、いくつもの出店や屋台が立ち並んでいた。

 騎士団に随伴し、上都から行軍して来た隊商である。

 そこかしこから売り子達の大きな声が聞こえ、人の流れを呼び止めようとしていた。戦時中であっても、利益の追求を忘れない商魂逞さが、あたりに活気を振り撒いている。


 アルフラは騎士の一人に付き添われ、出店のひとつを覗いていた。

 横長の板を、地べたに直接並べただけの商品棚。いくつもの銀細工が、きらきらと陽光を跳ね返している。店構えは貧相だが、揃えてある商品の質は良い。


 やはり白蓮のイメージは、色なら白、金属なら銀。そんなことを考えながら、アルフラはにこにこと笑う。

 シンプルな円筒形のペンダントを手に取り、太陽の光へかざしてみる。少し悩んでから、こんどは菱形のものを手にする。

 あまりべたべた触ると、くすみの元になるのだが――普段は口うるさい店主も、アルフラの背後に立つ騎士に気を遣って、無言で様子を見ている。


「うん。これにしようかな」


 あまり時間をかけることなく、アルフラは最初に立ち寄った店で、気に入ったものを見つけたようだ。


 値段を告げた店主へ、アルフラは銀貨を渡す。


 短時間で購入を決めたうえ、値切ることもしない上客に、店主もほくほく顔だ。すぐに銀の鎖を金床(かなとこ)に乗せ、(のみ)と木槌で長さを調整する。


 出来上がった品物を受けとったアルフラは、白蓮の髪をペンダントに入れ、首からかける。


「うん」


 満足げにひとつ頷いて、ペンダントを革鎧の中へと仕舞った。

 ご機嫌なアルフラが辺りを見回すと、近くの屋台でルゥとジャンヌがなにやら話し込んでいた。

 近づいてみると、二人の背後に立った騎士が苦笑しているのが見てとれた。

 ルゥの口の端には、白いクリームが付着している。すでにどこかで買い食いをして来たらしい。おそらく結構な量を食べたのではないだろうか。この店で最後ですわよ、というジャンヌの声が聞こえてくる。


 ルゥがねだっているのは、パイ生地に鹿肉と香草を包んで焼いた料理だった。

 屋台の奥には、煉瓦(れんが)を積み重ねた急造の釜が二つ並んでいる。そちらからとても香ばしくよい匂いが漂って来ていた。


 少し空腹を感じたアルフラは、屋台に立てかけられたお品書きの板をのぞき込む。


「あら、アルフラは字が読めますの?」


「うん、ちょっとだけ」


 声をかけたジャンヌは、アルフラの答えに少し感心したような顔をする。

 レギウス教国の識字率は、周辺国と比べれば高めである。だがそれも都市部に限った話だ。


「ん~……あたし、川魚と茸の包み焼きが食べたい」


「ボクはお肉っ!」


 はいはい、と呟いたジャンヌが店主を呼ぶ。そして注文を伝えると、


「両方とも銅貨七枚だよ」


「え、えと……銅貨……ななまい……ふたつだと……」


 ジャンヌは頭上をにらんで長考に入った。


「……ねぇ。もしかして足し算出来ないの?」


 アルフラの問いかけに、ジャンヌの頬が赤くなった。


「そ、そんなわけございませんでしょ!! ダレス速算術を極めたわたしにかかれば……」


 ジャンヌはすさまじい速さで、指を折り曲げていく。

 ぼうっと様子を見ていたルゥは、なんかダメな流れっぽい、と察した。


「うぅぅ……ゆびの数が足りませんわ……」


 両手を駆使して計算にはげむジャンヌだったが、もちろん指は十本しかない。


「なな、足すことの、なな……ですから……」


 どうやら、二桁の繰り上げが出来ないようだ。

 ジャンヌの後ろでは、順番待ちの行列が出来ていた。よほど美味い店なのかと、道行く人も歩みを止め、神官娘の周囲に集まってくる。


 ええと、ええと、とジャンヌはしばらく唸り…………ぽむっと手をたたいた。


「銅貨七枚、足す、銅貨七枚で――銅貨七十七枚ですわ!! 間違いありま――」


「十四枚だよッッ!!!!」



 その場に居合わせたルゥ以外の全員から、鋭いツッコミが入った。

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