第五話 新しい名前をもらいました。
区切ろうかと思ったのですが、切れ目が無さそうなので結構長くなりました………orz
彼は何かを思い出したように私に向き直って話しをきりだした。
「そういえば、まだ名乗って無かったな。俺はラグ。今此処にいるアグシリア大陸の王国レストの傭兵だ。で、お前は?」
やっぱり聞かれました!私、自分の名前が思い出せそうにないです。本当に困りました。orz
私が困っているのを見て、彼…ラグさんはまた心配そうな顔をした。
「どうしたんだ?本名名乗るのが嫌なら偽名名乗ったって良いんだぜ?」
「えっと………」
本当に困った。「名前、忘れちゃいました♪てへっ☆」なんて言った矢先には、変な奴には近づくなって絶対見捨てられる……。
うわぁぁぁぁ!!嫌っ!!パス!!それだけは勘弁!!こんな所で飢え死にだけは御免よ!!
「クスッ…アハハハハハハ……!!」
自分のオーバーな考えに浸っていたらいきなりラグさんに笑われてしまった。それもかなり豪快に……。
「な、何笑ってるんですかラグさん!?」
怒った私は兄と喧嘩するときのように自分の顔をラグさんの顔に近づけた。
ラグさんは驚いたのと同時に顔を少し赤くして目を私から反らした。
『あ、あれ?勝っちゃった?』
兄と違う反応を示して少しやりすぎた事を反省する。
視線を反らしたままでラグさんが言った。
「あー、その…、笑って悪かったな。お前の百面相がスゲー面白くて…」
「こちらこそ、怒り方キツくてすみませんでした。…………私の顔が原因か。何か凹むなぁ」
最後の独り言は聞こえなかったらしく少し安心した。
「で、お前の名前は?」
どわぁぁぁ!!ラグさん、話しを戻さないで!!
これ以上は変な顔を見られたくないので結局白状する事にした。
「此処に来た衝撃か何かで名前忘れたんですけど………」
ラグさんは目を見開いていた。やっぱり変人扱いされるぅ!!
「そうか…。家や知り合いだけじゃなくて名前まで…」
「ほぇ?」
何だか知らないけど、同情を買ってしまいました。………うん、これを期にすぐネガティブになるの止めよう。
そんな事を考えていたらラグさんが口をきった。
「…………リコリス」
「えっ?」
「リコリス、お前の名前だよ。名前忘れたんだろ?だったら俺が付けたって構わないよな?名前無いと困る事も多いと思うし………駄目か?」
ラグさんは少し不安が混じった笑顔を向けてくるけど、私は凄く嬉しかった。
私の名前を考えてくれたし、リコリスは秋生まれの私にぴったりだったから。
リコリス…ヒガンバナ科ヒガンバナ属の総称のことでもちろん彼岸花もこの中に入る。そういえば、此処の花はなんとなく夏水仙に似てるような気がする。
私は笑って答える。
「いいえ!嫌じゃ無いです!むしろ凄く気に入りました」
「そうか、良かった」
そう言ってラグさんも笑ってくれた。今頃だけど、美男の笑顔って凶器だよ!!絶対!!
「それじゃあ改めて、宜しくな!リコリス。それと、これから長い付き合いになると思うから、さん付けも敬語も無しで」
「うん!!宜しくね、ラグ!」
その後、私はラグに連れられて、近くの街に向かった。






