第二話 赤毛の傭兵に出会いました。
11/14 一文足しました。
名前を忘れたことにかなりのショックを受けて花が咲いた丘に立ちすくんでた。
秋生まれの私に父がつけてくれた名前。母や兄が愛情を込めて呼んでくれた大好きな自分の名前をいとも簡単に忘れてしまったことに凄くショックを受けた。
『父さん、母さん、兄さん………ごめんね………ごめんなさい………』
視界が一気に滲んでいった。目尻から私の体温と同じくらいの水が頬を濡らしていった。
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一体どれだけ泣いていたんだろう?落ち着いた時には辺りは薄暗くなってた。
とりあえず、街の方まで出ようと思った。こんな所にいても何も始まらないし飢え死にしちゃいそう!
決断からの行動は案外早いもので、道のある方へ歩き出した……………かったのにぃ。
すっかり異世界だってこと忘れてた!
私の前に魔物が飛び出して来たんです。
狼みたいだけど…何か少し小さい?でも口から見える牙は見た目に合わず鋭い。
狙いはもちろん………どう見ても私のようです。orz
一方の私は当然丸腰。そもそも、武器とか持ってたら銃刀法違反で今頃刑務所だよ!私だって平凡な日本人女子校生だからね!
オロオロしてると狼君(可愛いし、名前なんて知らないので。)がこちらに向かって飛び出して来た。
トリップ早々殺されるなんて思ってなかった。もう駄目と思ってぎゅっと目を瞑った。
ーーーザシュッ!!
何かが切れる音がして、思わず目を開けてしまった。
飛びかかって来ていた筈の狼君は鮮やかな赤い液体を撒き散らしながら倒れていて、その後ろにその原因と思われる
「大丈夫か?怪我は…?」
綺麗な赤毛の青年が立っていた。
青年は、私より頭一つ分くらい背が高い。腰ぐらいまで伸ばしていると思われる赤毛の髪はうなじの所で一つに結ってある。瞳は……エメラルドを思わせるような深い翠。感じはまんま西洋系で………。
「本当に大丈夫か?もしかして具合悪いのか?」
「大丈夫です!ごめんなさい」
つい、彼の容姿に見とれてしまった。あぁ、恥ずかしい!
彼のテノールの優しそうな声に我に返って慌ててしまって、やっと返事をした有り様だ。
「何故こんな所に一人で居るんだ?それはさておき、きっと家は近くだからそこまで送ってやるよ」
「……………」
彼から少し視線を外した。
申し出は嬉しかったけれど、今の私に帰る場所なんてない。そんなことを言ったら、此処にいる理由を絶対聞かれると思う。それに名前も…。
正直、この人に言って良いのか不安だった。
「どうしたんだ?家が分からないのか?」
彼の声からして少し焦っているみたい。
話さない事には何にも始まらないので、とりあえず馬鹿にされるの前提でぶっちゃける事にした。
「帰る家は無いんです」
彼を真っ直ぐに見て言う。案の定、彼は不思議そうな顔をした。
そんなのお構いなしとでも言うように私はそのまま話し続ける。
「今から言う事は事実ですが、信じる信じないは貴方次第です。私はこの世界の人間ではありません。事故に遭遇して、気を失ってる間にこの世界に来ました。なので、此処が何処なのかとか、この世界での常識とか、その外色々な事を私は知りません。なので私に帰る所なんて……無いんです」
本当は事故じゃなくて遥に落とされたんだけどね。
自分で言っておきながら何だか悲しくなってきた。
恐る恐る彼の表情を見ると、凄く悩んでいるような顔をしてた。
しばらく考えて彼が口を開く。
「確認するけど、帰る場所がねーんだよな?」
「は、はい…」
「なら、安定した生活ができるようになるまで俺と来ねえか?」
私は目を見開いた。だって馬鹿にされると思ってたんだもん!
「あーやっぱり、俺みたいな傭兵といるのは嫌か?」
「そんなことありません!宜しくお願いします!!」
嬉しくてとびっきりのの笑顔で笑うと彼は少し視線をずらしたような気がした。
やっとキーキャラクター出て来ました。
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