第二一話 私を突き落とした君の願い
更新遅くなってごめんなさい(T^T)
風邪引いたっぽいです。皆さんも気をつけて下さいね。
自分の役目(?)について驚いていたら、急に力が抜けて目の前が真っ暗になった。
「大丈夫か!?リコ………」
最後にラグの声が聞こえたけれど、なんか引っかかるものがあったのに思い出せない。
ーーー何か大切なことなのに………。
閉じていた瞼を押し上げて体を起こした後、目にした光景に声が出なかった。
一言で言い表すなら、“天国”。そのくらい綺麗な庭のような所、それもかなりの広さがある場所が映ったのだから。
「目が覚めた?」
懐かしい声がして、私は振り返った。
案の定、声の主が立っていた。
「遥………」
「久しぶりね。元気だった?」
声の主、東条遥はばつの悪そうな顔をして私を見ていた。当たり前か。だって、何も言わずに私を異世界に突き落としたのだから。
「えっとね…その………」
「もう、怒ってないよ。遥も何かあったんでしょ?」
「ごめんね、ありがとう」
遥はそっと笑うと未だに座り込んでいた私を引っ張り起こした。立ち上がった私は遥と顔を見合わせて、あの私の世界にいた時の日常みたいに二人で笑いあった。
笑いを収めた遥が話してくれた。
「まずはあの世界の事について。あの世界はテスラっていう名前で私達のいた世界の平行世界なの。私達の世界とテスラを移動できるのは、私が認めた人だけ。今は…あなたを入れて五人かな?」
「私の他にも四人…」
私は考え込んだ。兄とルキアの他にあと二人来ている事になる。
私の考えてる事が分かったみたいで遥は真面目顔で答えてくれた。
「一人はもう既に会ってると思うけど、『氷刃』天城ルキア。あと、あなたのお兄さんの『賢帝』高梨紫苑。それと去年交換留学で来てた『聖騎士』ディムナ・グラジオラス。あとは私の小学校時代の友人の『天使』藍染悠里。そしてあなたよ」
私を指されて言われた言葉でパズルのピースがはまった。
「『巫女姫』高梨利子」
ようやく分かった私の名前。兄さんが大好きだった名前。そっか、私は高梨利子なんだ。
なんとなく呼ばれても違和感がなかった。当たり前か、だって私の本来の名前だもん。
「ねぇ、遥。何で私は自分の名前を忘れてたの?」
遥に率直に聞いた。テスラへ来てから抱いていた疑問をぶつけてみる。遥はものすごく悲しそうな申し訳なさそうな顔をした。
「利子は忘れてたんじゃない。私が消したの」
「そうなの!?」
遥はゆっくりと首を縦に振った。私は何も言えなかったけどきっとものすごい顔をしてると思う。遥がまたばつの悪そうな顔してるから。
「本当にごめんね、利子。でもそうしなくちゃいけなかったの」
「どうして?」
「利子の名前はテスラでは強い力があるの、テスラを変えてしまうくらいの。だから…」
「だから私の記憶から名前を消したのね」
遥は今にも泣き出してしまいそうだった。そんなことで遥が泣かなくてもいいと思うのに…。遥は凄く優しいから、人の為なら泣くことだってできる。今だって多分、私の為に…。
あれ?でも何であの時あんな憎しみに満ちた笑みを見せたんだろう?
私があの時の事を考えていたら一気に景色が一変して真っ暗になった。
「もう、時間が無いみたい。いい?絶対レストから出てリーゼアの紫苑君の所へ行って!それから、精神が向こうに戻ったらまた名前だけ忘れると思うけど私がさっき言った事を忘れないで!」
いつの間にか私の足元にできていた大穴に吸い込まれていく。
落ちて行く中で確かに遥の声が聞こえた。
「お願い!!レスト王国を止めてテスラを救って!!利子おぉぉぉぉぉ…」
「ーーリス、リコリス」
誰かに揺すぶらされて私は覚醒した。私の顔を覗き込むように翠の瞳が見下ろす。って、ヤダ!顔近い!!顔が一気に熱くなって心音が何時もよりも早く大きく鼓動する。
そんな私の表情を見たラグは心配そうな顔をした。
「リコリス、大丈夫なのか?もしかして具合悪い?」
「そんなこと無い、そんなこと無いから!」
慌ててラグから離れて立ち上がった。そのまま正面にいたシルフィーユさんを見る。先に話したのはシルフィーユさんの方だった。
「ハルディリカ様にお会いになったのですね」
「はい、会って私が名前を忘れた理由……ううん、遥が私の記憶から名前を消した理由を知りました」
シルフィーユさんはそっと微笑んだ。
「………そうですか」
そして、私はラグの方を向いた。
「ラグ、私、遥に…友達に頼まれたの『レスト王国を止めてこの世界を救って』って。だから、リーゼアの兄さんの所に行くよ!兄さんにこの事を伝えに」
「分かった」
ラグはその一言だけだった。でもすぐぽかんとした。
「そういえば、リコリスのその友達って何者なんだ?」
「あ!!聞くの忘れてたあぁぁぁ!」
失念してました。
2013/01/11 ディムナの苗字をリアトリスからグラジオラスに変更しました。