第十八話 紫苑という名の男について
依頼を受けた後、早速私達は精霊の森へ向けて出発した。
精霊の森は王都の北門を出てすぐの所にある小さな森で、依頼はすぐ終わるんだって。精霊や霊獣が生息しているから“精霊の森”と言うらしい。
とても幻想的な所なんだけど、最近は瘴気の影響で魔物化した精霊“エレメント”が増えてきているから立ち入り禁止になってしまっているんだとか。
王都の北門へ向かう途中でラグが私に話しかけてきた。
「今、空席になってるSランク傭兵ってさ、シオンだったんだよな」
「えっ!?」
あまりにも唐突な言葉に私はラグの方を見てしまった。今までどうしようもないと思っていた兄が、こちらでは伝説に匹敵するような武勇伝を更新し続けているのだから。
隣の国の皇帝陛下って言うだけでも度肝を抜かれたのに(本人いないけど)
ただ一人のSランクというケタ外れなランクまで持っていたと聞いて腰を抜かさない人がいたら、今すぐにでもこの話しを聞かせてやりたい。
そういえば、こっちでの兄について私は何も知らない。『シオン』と呼んでる時点でラグは兄と仲が良いと判断した私は思い切って兄のことを聞いてみることにした。
「ねぇラグ、こっちでの兄さんってどんな感じだったの?」
「こっちでのシオン?えーっと一言で言えば掟破りなヤツだな」
ただ一言『掟破り』と言われてもピンと来なかった。私の様子を見てたラグは悪戯が成功したかのようなにやついた顔をした。
「道すがら、アイツのことについて教えてやるよ」
「ありがとう!」
笑ったラグに私も笑って返す。
二人してニコニコしてたから端から見ればどこぞのバカップルだよね。そんな関係じゃないのに…。
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森へ続く街道を歩きながらラグは兄のことを話してくれた。
「傭兵シオンは、剣の腕も魔法の腕も凄くて頭の切れる傭兵だったんだ。パーティーを組んだ時的確な指示を出していたのはシオンだったし、必要ならば援護にも回った。兎に角何でもできるヤツだったよ」
自慢気に言うラグの方をまじまじと見てしまった。家にいる時の兄とは全くの別人のよう…ううん、全くの別人だった。
「仕事しか頭に入ってなかったみたいに動き回ってたな。あ、一回だけ働きすぎでぶっ倒れたんだっけか?」
やっぱりそうだ。私の知ってる兄とは違うんだ。
なんとなく道の脇を見たらこの世界の紫苑の花が咲いていたけど、部屋の窓辺に飾ってたのとどこか違って見えたのに対してなんか寂しかった。
「特異点だったみたいで、見たこともない生き物を出したりしてたり、再生能力とかあったり…」
「ちょっと待った!」
「ん?どうした?」
「一体何の話しをしてるの?」
「シオンの話しだけど」
何ですか!?ウチの馬鹿兄貴は人外化け物ですか!?って、『掟破り』はそこか!召喚術?再生能力?どういう違法ソフトウェアを使ってくれたんですか!?何ですかそのチート設定。よっぽどのことが無い限り無敵じゃないですか!
他人どころか人ですら無いような錯覚を覚えたのは私だけだろうか。うん、今度ルキアに聞いてみよう。
目を白黒させたり百面相をしてる私を不思議に思っていたラグは今度は質問をしてきた。
「そういえば、リコリスのいた世界でのシオンってどんな感じのヤツだったんだ?」
私は一言だけ答えた。
「駄目人間」
「えっ?」
私の一言に驚きを隠せないラグの顔が可笑しくて笑ってしまった。
私のいた世界での兄の話しをしようと思ったけど、その前に精霊の森へついてしまった。
実は、この小説を読んでくれた友人からアドバイスをもらって十七話からちょっと改善してみた(あくまでも作者はそのつもり)のですが、正直のところどういういうふうにしたら読んで下さっている皆様に楽しんで頂けるか自分だけだとよく分からないんですよね…。
ということで、
「ここをもう少しこういうふうにしたほうが良い!」
とか
「こうしたらきっと面白い!」
などのご意見ご感想をお待ちしております!
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