第十七話 初の依頼です。
受付で登録を終えた後、ラグが奥の方へ歩いて行くのを私も後に続いて奥の方へ行った。
ギルドの奥には大きなコルクボードが八つあって、一つだけ除いてどのコルクボードにも沢山の紙が貼ってあった。多分あの紙に依頼が書かれているんだと思う。さっきから気になっていたコルクボードを見ていると、私の視線を辿ったらしいラグが説明してくれた。
「あのボードにはSランクの依頼が貼ってあったんだけど、今はSランクだけは空席だから何も貼って無いんだ」
「どうして今は空席なの?」
「前にも話したと思うけど、Sランク傭兵はギルド設立以来一人だけ。そのSランクだった人は現在は別の仕事をやっているから…だな」
そう言って、ラグは何も貼って無いコルクボードを見ていたけど暫くして何かを納得したように頷いて別のボードの方へ行ってしまった。慌てて追いかけようとして思いっきりつまずいてしまった。
「どわぁぁぁ!!」
私は衝撃を予想して目を閉じたけど一向になくかった。それにお腹あたりに固い棒のようなモノが支えていた。
私が顔を上げるとそこには
「大丈夫か?」
ラグの顔がありました。しかも、ち、近い!もう、ショート寸前です。思考停止しそう…。
「だ、大丈夫だから!」
「本当か?」
「本当だもん!」
私はラグから離れると、依頼が貼ってあるボードの一つに行こうとした。…………うん、行こうとしたんだよ。
Gランクの依頼があるボードを見ようとしたらいきなり(もちろんラグに)掴まれて引っ張っていかれた。
「俺も一緒に依頼受けるから、ランクDあたりから選ぼうぜ!」
「や、私ランクG…」
「実力がありゃ、問題ねぇって!」
「大ありですから〜〜〜〜!」
周りの人達は何か微笑ましいものを見るように笑っていた。ラグが他人に興味を示すどころか世話を焼く事すら今まで無かったかららしい。
後になって他の傭兵の人に聞くまで私は知ることは無かった。
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そのまま引っ張られて私は今、ランクDの依頼があるボードの前に来ています。
当然のことDランクの依頼を受けるつもりは無かった私は、適等に依頼を見てたけど、隣の青年ラグはファージの武器屋の時同様目を輝かせて依頼を選んでいるのでした。
思わず「子どもかっ!!」って突っ込んでやりたい所だけど、私自身どういう依頼がいいのかさっぱりで、馴れてるラグに任せているような状態だから突っ込もうと思っても突っ込めない。
暫くすると、ラグはボードに貼ってあった紙を一枚選んで私に差し出してきた。
「こんなのはどうだ?」
「ん?何々…」
ラグから紙を受け取って内容を確認する。確認した瞬間、叫びたくなったけど、なんとか押し止めた。
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依頼難易度:D
依頼内容:“精霊の森”でエレメントの討伐
報酬:銅貨五十四枚、一人あたり七十ギルドポイント
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現代日本人の私には無理そうな依頼内容だった。でも、他の依頼内容に比べて報酬が結構お高い。日本円にするとざっと五千四百円くらいだった。
ラグに面倒を見て貰っている身だから、本人はいいと言っていても返した方が絶対良いに決まってる。ならば背に腹は代えられない。
「ラグ、私この依頼受ける!」
「分かった。無理するなよ」
微笑んだラグは私の頭をそっと撫でると依頼受託の受付をしに行った。その彼の背中がやけに広く見えた。
ちなみにギルドポイントは、ランクを上げるための点数で
G→F 100ポイント
F→E 500ポイント
E→D 1000ポイント
D→C 2500ポイント
C→B 5000ポイント+Bランククエストクリア
B→A 10000ポイント+Aランククエストクリア
A→S 100000ポイント+Sランククエストクリア+オーナーズクエストクリア
という条件でランクが上がる設定になっています。(本編にもそのうち記載予定)
そう考えると馬鹿兄紫苑はすごかったんですね…。