第十四話 俺自身の変化(ラグside)
ファーランドに来てリコリスと別れた後、俺は情報屋に来ていた。調べたい事はもちろん
「城の状況を聞きたい」
「はいよ。んで、どのくらい聞きたいんだ?」
予めポケットの中に入れておいた金貨を出す。その数は三枚。
ギルドランクAの俺は、このくらいなら平気で出せる。それにあまり使わないから貯金額もかなりのものだ。
ちなみに、ギルドランクは下から順にG、F、E、D、C、B、A、SでAランクは俺を含め三人、Sランクは歴代で一人だ。“歴代で”というのは、Sランクだった“シオン・タカナシ”は隣の帝国リーゼアの皇帝で現在Sランクは空席の状態だからだ。
「今回も結構な金額だな。交渉成立と言うことで、それじゃあ、何から話そう?」
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あれから数時間経って、現在俺は街の中心部に来ていた。もちろん、リコリスと合流するためだ。
さっきの情報屋の話しによると、国王は現在も第一王子ラグナスを探しているらしい。まぁ、レスト王国の民の生活が良くなるか、反乱を起こせる程の力がつくまでは帰るつもりは無いと思うけどな。
情報を整理しながら先へ進む。俺はリコリスに早く会いたくて仕方がなかった。
やっぱりここ最近、俺は何か変だ。気がついたら何時も彼女の事を考えている。今は何してんのか、何処にいるのか、俺の事はどう思っているのか…。彼女の事が知りたくなる。
『他人に対しての興味が焼けてなくなっていたと思っていたんだけどな』
新しい自分の一面に思わず溜め息が出てしまっていた。
街を一人でぶらついていると、一つの喫茶店に目がついた。シンプルで静かな雰囲気のごく普通の喫茶店だが、窓側の席にリコリスがいた。
「リコリス、こんな所でなn」
「ラグ?どうしたの?」
入ってすぐ、リコリスの向かいにいる奴に驚いた。リコリスがいたのはいいけど何でテメーまでいんだよ!俺が探していた人物と一緒にいたのは、レスト王国騎士団団長ルキア・アマギだったからだ。しかも、リコリスと凄く楽しそうに話していやがった。
リコリスが何時もは俺に見せてくれない表情を他の奴が見ているのが凄く悔しくて、腹が立っていて、心臓が締め付けられたように苦しかった。
俺の目線を追って後ろを向いたリコリスが固まった。
「こんな所に何の用だ?『紅蓮』のラグ」
「それはこっちの台詞だ。俺んとこのリコリス連れて何してんだ?『氷刃』ルキア」
ルキアが現れた二年前から中が悪かったためか、喧嘩ごときで剣を抜いてしまうのは言うまでもないと思う。
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結局、リコリスの魔法によって俺達の喧嘩は止められてしまった。
リコリスのお説教を食らい、反省した後別の店で話していた時、あの阿呆騎士は爆弾発言を投下してくれた。
「それにしても、高梨の魔法は凄いな。流石、賢帝シオンの妹だな。兄貴も兄貴なら、妹も妹だな」
嘘だろ!?リコリスがあの賢帝シオン・タカナシの妹だなんて!!確かにいとも簡単に上級魔法を発動させるから、きっと特別なヤツだと思っていたけど、まさか元Sランク傭兵現皇帝の妹だとは思いもしなかった。
溜め息をついたリコリスが最初に口を開いた。何か苦虫を噛んだような表情しているけど、大丈夫か?
「ねぇルキア、あの駄目兄貴が一体何処にいるか教えてくれる?」
リコリスの発言から、賢帝と呼ばれているシオンが実家ではかなりの駄目っぷりを発揮していたことがわかる。何か意外だった。
「隣の帝国リーゼアにいる。良かったら、妹姫扱いで騎士団が安全に連れて行ってやることできるけど、どうするんだ?」
阿呆騎士の誘いに動揺しているリコリスが、俺の方を見てきた。「どうした?」って聞くと彼女は
「私はルキアのお言葉に甘えようと思うけど、ラグはどうする?」
って言ってきた。俺の心配をしていたらしい。凄く嬉しかった。だから答えは…
「もちろん、一緒に行くぜ!」
俺の答えに嬉しかったのか、リコリスが笑顔で俺に飛びついて来た。俺の顔が一気に熱くなってリコリスに聞こえるんじゃないかというくらい胸が高鳴った。
そんな様子を見ていた阿呆騎士が一言呟いた。
「あの『紅蓮』が、なぁ……」
俺はアイツの言った意味を理解することができなかった。
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