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第十話 トリッパーに魔法はお馴染みのようです。

後半はシリアス&残酷描写があります。

 ラグが魔物に向かって行く…と思ったら、ダラリと長剣を下げている。アレ?攻撃するんじゃないの!?


「リコリス、お前一人でやってみろよ。どうせ、LV.1スライムだし。実践には持ってこいだろ?」


 や、ラグくーん、それはないと思うよー。

 LVで言うなら私も1だよ!いきなり一人でやれとか無理だから!


「兎に角やってみろよ!無理そうだったら俺がやるから」


 そうやって背中を押されて一歩前へ出る。

 ラグの様子を見ると私が攻撃するまで何もしてくれないらしい。何だよ!どこの鬼教官だよ!私は誉められて伸びるタイプであっていきなり無茶苦茶しても身に付かないのに。

 何もしないといくらスライムでもやられてしまうので仕方無くやる事にした。

 えっと、イメージイメージ。雷の球を放つ感じで……。


「サンダーシュート!!」


 イメージ通りの雷の球が正面に出現、発射してスライムに当たる。魔法に当たったスライムはそのまま気絶してしまっていた。


「初めてにしては上出来だと思うぜ。後は魔力のコントロールだけだと思う」


 そう言われて頭を撫でられる。剣ダコのできているその手に頭を撫でられるのはとても心地良かった。兄にされる時とは違う感じがしていたけれど、気にしない事にしていた。


「さて、そろそろ行くか。出るのが遅くなるとできるモノもできなくなるんだろ?」

「それ私のセリフ!!」


 私とラグはじゃれあい(?)ながら王都へと向かった。




=================



「リコリス、下がれ!」


 ラグは私を背後に隠すと自分は長剣を抜いた。

 王都へ向かう途中にある森で私達の前に飛び出して来たのはゴブリンで、人型に近い姿をしているブサイクでチビな魔物だった。

 ラグは相手の攻撃をステップで華麗に避けては相手の隙を狙って一閃する。

 ゴブリンはその辺の魔物と違ってある程度(と言ってもサル程度)の知能が有るから攻撃がクリーンヒットし難いみたい。

 それにラグ一人対ゴブリン三体は流石にキツいのではないかと心配でしょうがなかった。


『私にできる事はないかな?』


 そう思った瞬間、私は行動をとっていた。一瞬、昔からそうしていたかのような錯覚に捕らわれそうになった。


「闇よ、彼の者を縛れ『バインド』!!」


 私が唱えた後、ゴブリンの足下に黒い魔法陣が浮かんでそこから出てきた黒い触手状の物がゴブリン達を絡めて縛る。

 ラグは驚いて私の方を見ていたけれど、折角のチャンスを逃すまいとゴブリン達を目掛けて駆ける。

 ゴブリン達の間を縫って行きながら横凪に長剣を振っていく。ラグが通り過ぎた傍から鮮血が飛ぶ。次々とゴブリン達の奇怪な断末魔が上がる。

 近くで見ていて吐き気がした。私にとっての非日常が今、目の前で起こっていて、これからこの光景が日常になるんだと思うと少し悲しくなった。

 私が向こうの世界で生きていることになっているのかどうかも分からないし、その前にこの世界から帰れるかも分からない。だとしたら、私は……。

 向こうにいたときの自分にサヨナラをするつもりも含めて、一つの魔法を詠唱する。


「燃え盛る槍よ、彼の者を貫き焼き尽くせ『フレイムランス』!!」


 空中に出現した赤い魔法陣から槍の形をした炎がラグに切られて倒れているゴブリンに向かって降り注いだ。さっきのような断末魔は聞こえ無かったけど、肉の焼ける気持ち悪い匂いが鼻を刺激した。

 さっきまで戦っていた敵と共に昔の私が燃えているような気がした。

 長剣についた血を振り払って鞘に収めたラグがこちらに向かって歩いてくる。ラグは凄く難しい顔をしていた。多分、『フレイムランス』を使った意味を理解したのかもしれない。あるいは、私が凄く打かない顔をしていたのかもしれない。


「……行けるか?」


 ラグはただ一言言っただけだった。


「うん………」


 どこか暗い返事をしたときだった。


ガバッ!!


 ラグが私の腕を掴んだかと思ったら、気づいた時には視界が真っ暗だった。少し経ってラグに抱きしめられているのを理解する。


「泣きたい時は我慢しねぇで泣けよ。全部、俺が受け止めてやるから」


 その言葉が嬉しかったのか、私の目から涙が一筋零れる。それが引き金になって涙はどっと溢れてきた。

 ラグは私が泣き止むまでずっと抱きしめていてくれた。



 



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