神罰と、かつての残滓
常闇に沈んだ北の王国『アイゼン』へ向かう途上、俺たちの前に、ボロボロの馬車を引いた一団が現れた。
かつて俺が「奴隷以下」として扱われ、泥水を啜らされていた旧王国の、生き残りの貴族たちだ。
「……あ、ああ。あれは……」
馬車の中から這い出してきたのは、旧王国の宰相だった男だ。
アルカディアの「生命の選別」によって全てを失い、今はただ、死に損ないの獣のように命を繋いでいる。
彼は、銀竜に乗って空から降り立つ俺の姿を見て、濁った瞳を大きく見開いた。
「アル……!? 本当に、あの『役立たず』のアルなのか!? その若さは、その輝きはなんだ……! まさか、我々から奪った寿命で、自分だけが神にでもなったというのか!」
彼は逆恨みの叫びを上げ、震える手で錆びた短剣を突き出した。
周囲にいた元貴族たちも、飢えと絶望から理性を失い、「その命を分けろ!」と獣のように襲いかかってくる。
エルゼが剣を抜こうとしたが、俺は手制止した。
「エルゼ、下がっていろ。……汚らわしい『負債者』たちが、俺の風に触れる必要はない」
俺が一歩、前に踏み出す。
その瞬間、俺から放たれる生命のプレッシャーが、物理的な衝撃波となって周囲を薙ぎ払った。
$$Force: \text{Aura of the World Tree}$$
$$Output: \text{God-King Pressure (100\%)}$$
「ぎ、ぎああああッ! 熱い、身体が焼ける……!」
彼らが俺に近づこうとするだけで、その身体は「あまりにも純粋すぎる生命力」に耐えきれず、内側から発火し始めた。
闇に慣れすぎた深海魚が、太陽の光を浴びて焼き尽くされるのと同じだ。
「奪った……? 勘違いするな。俺はただ、君たちに『貸していたもの』を返してもらっただけだ。利息も含めてな」
俺の言葉は、彼らの魂に直接刻まれる神託となった。
宰相だった男は、自分の腕が灰になっていくのを見つめながら、絶望の中で笑った。
「ああ……そうか。我々は、太陽を追放して……暗闇で凍えることを選んだのか……」
次の瞬間、彼らは叫ぶ暇もなく、一筋の光の粒子となって霧散した。
かつて俺を罵倒し、俺の優しさを「当然の権利」として踏みにじった連中の、これが最後の末路だった。
「主よ。あのような塵に、言葉をかける必要などございませんでしたのに」
エルゼが静かに跪く。
俺は、彼らが消えた後の荒地を見つめ、静かに答えた。
「いや、これで最後だ。……旧王国の亡霊は、すべて土に還った」
俺が右手を空にかざすと、立ち込めていた暗雲が割れ、そこから眩いばかりの陽光が降り注いだ。
常闇の国『アイゼン』に、数十年ぶりの「朝」が訪れる。
「さあ、行こうか。世界はまだ、俺という『心臓』を求めている」
俺は銀竜を走らせ、さらなる高みへと昇っていく。
背後には、俺の足跡から咲き乱れる、枯れることのない黄金の花園だけが残されていた。
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