強奪の貸借対照表、あるいは神の監査
全次元を統べる俺の指先に、絹の滑らかさと、それを奪うために振るわれた剣の血生臭さ、そして「利益」として計上された数千万人の飢えが伝わってきた。
17世紀、東インド会社。彼らは商人でありながら、城を築き、軍隊を雇い、王を傀儡に変えた。プラッシーの戦いを経て彼らが手に入れたのは、貿易の権利ではなく、他国の民から税を絞り上げる「システム」だった。商社の利益のために農地は荒らされ、伝統的な産業は破壊される。彼らにとってインドは市場ではなく、無限に金を産む「肉の鉱山」に過ぎなかった。
「……天秤の片方に商品を、もう片方に大砲を載せて富を量ったか。契約書の裏に銃剣を隠し、一国の命運を『経費』として処理した罪、その魂で払い落とさせよう」
俺の隣で、エルゼが瞳に絶対的な審判の静寂を宿し、ロンドンの豪華な東インド館でシャンパンを酌み交わす役員たちの幻影を見つめている。
生命の根源であり、正当な対価と誠実な交流を司る俺にとって、商売を隠れ蓑にした軍事侵略は、文明の摂理に対する最も卑劣な詐欺行為だ。
「エルゼ、行くぞ。……『国家を経営する』快楽に浸った者たちに、奪った富の真の重さを教えてやる」
俺は時空を穿ち、かつて「ベンガルの富は我々のものだ」と宣言したクライブら歴代総督の私邸と、強奪した税金で配当金に明け暮れる株主たちのサロンへ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Universal Audit of Karma}$$
$$Effect: \text{Fiscal Retribution / Eternal Liquidation of the Soul}$$
「な、なんだ……!? 金貨が、黄金が……溶けて泥に変わっていく! 帳簿の数字が増えるたびに、身体が削り取られる!」
かつて他国の徴税権を「投資の成果」と呼び、現地の飢饉を無視して配当を維持した者たちが叫ぶ。彼らの肉体は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『負債の器』へと変貌し、彼らが不当に吸い上げた全財産の『呪いの質量』が、物理的な激痛となって心臓を直撃し始めた。
「君たちは、商人の皮を被って他者の未来を買い叩いた。……ならば、君たち自身の魂を、君たちが搾取した数千万人の『奪われた食卓』を埋め合わせるまで、永遠に自分の存在を切り売りして支払い続ける、黄金の破産者へと変えてやろう」
俺が掌をかざすと、会社の軍事組織化を主導した者たちの魂に、物理的な「強制清算」が刻まれた。彼らはどれほど金を欲しても、触れるものはすべて砂に変わり、逆に自らの生命力が「未払いの配当」として虚空へと吸い出され続ける。
彼らは倒産することも、無一文で逃げ出すこともできない。
ただ永遠に、自分が「資産」と呼んだものの正体――犠牲者たちの血と涙――を、自らの肉として食らい続ける『生きた負債』として、無限の監査に晒される。
一方で、俺は掌を広げ、会社の横暴によって生活を破壊され、沈黙の中で果てた無数の人々へ、生命の光を降り注いだ。
奪い取られた徴税権はアルカディアの「不滅の主権」へと返還され、彼らが流した汗の一滴一滴は、黄金の稲穂となって大地を埋め尽くす。
「世界最強の企業」が築いた歪な秩序はすべて黄金の塵となって消え去り、大地には「略奪による富を許さない」という神聖なる公正取引の法が刻まれた。
「主……。軍事力で歪められた天秤が、今、貴方様の力で『正当なる価値の回帰』へと導かれましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、黄金の帳簿に自分の命を吸い取られ、絶望の赤字を垂れ流し続ける「略奪商合した亡者たち」の残滓を見捨て、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、武力による独占は通用しない。
俺の庭において、商売を隠れ蓑に他者の国を盗む不遜な者には、ただ永劫に続く「自らの清算」こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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