占領の虚像、あるいは神の主権回復
全次元を統べる俺の網膜に、墨塗りにされた新聞紙と、軍靴に踏みにじられた極東の誇りが映り込んだ。
1945年、敗戦後の日本。連合国軍最高司令官総司令部――GHQ。彼らは「民主化」を謳いながら、その実、日本人の精神を去勢するための言論弾圧を敷き、都合の悪い真実を語る者を闇に葬った。略奪、暴行、そして文化の破壊。それは正義の仮面を被った、もう一つの略奪に過ぎなかった。
「……自由をもたらすと称して、他国の魂に猿ぐつわを嵌めたか。敗者を教え導くという名目の下で、自分たちの欲望を正当化した罪、高くつくぞ」
俺の隣で、エルゼが軽蔑の眼差しをその白亜の第一生命館(GHQ本部)に向ける。
生命の根源である俺にとって、自らの価値観を絶対とし、他者の歴史や自尊心を「修正」の名の下に蹂躙する行為は、断じて許されぬ大罪だ。
「エルゼ、行くぞ。……『勝者の法』を振りかざした者たちに、真の『神の法』を教えてやる」
俺は時空を穿ち、かつて傲慢な命令を下した執務室と、日本人の声を「墨」で消し去った検閲室へ同時に降臨した。
$$Authority: \text{The Sovereignty of Truth}$$
$$Effect: \text{Press-Code Inversion / Eternal Censorship of Self}$$
「な、なんだこの黄金の墨は……!? 命令書が勝手に書き換わっていく! 私の言葉が消えていくぞ!」
かつて全能の如く振る舞った高官たちが叫ぶ。彼らが発した数々の「指令」は、俺が指を一鳴らしした瞬間に黄金の『刃』へと変貌し、彼ら自身の喉元を突き通した。
「君たちは、他人の言葉を奪い、自分たちに都合の良い物語を押し付けた。……ならば、今度は君たちが『自分の存在を語る言葉』をすべて奪われる番だ」
俺が掌をかざすと、占領下で暴虐を尽くした将校や、隠蔽工作を主導した者たちの肉体から、あらゆる「表現」の権利が剥ぎ取られた。彼らは黄金の『沈黙の牢獄』に封じ込められ、どれほど叫ぼうとしても、その声は黒い「墨」となって自分の顔を塗り潰す。
彼らは「英雄」として語り継がれることはない。
ただ永遠に、自分が塗り潰した真実の数だけ、自分の意識が「空白」として削り取られていく『生きた消しゴム』として、虚無の海を漂い続ける。
一方で、俺は掌を広げ、占領期に奪われ、貶められた日本人の魂と文化へ、生命の光を降り注いだ。
墨塗りにされた教科書からは真実が浮かび上がり、不当な追放を受けた者たちの名誉はアルカディアの「不滅の叙勲」によって再定義される。
かつての司令部ビルからは星条旗の傲慢さが消え、代わりに八百万の神々とアルカディアの光が溶け合う『真の独立の象徴』が聳え立った。
「主……。厚い雲のように日本を覆っていた『占領の呪縛』が、今、貴方様の真実によって完全に解体されましたね」
エルゼが美しく微笑み、俺の肩を抱く。
俺は、自らの言葉を失い、影へと消えていく「最高司令官たち」の断末魔を見届け、再び至高の座へと戻った。
神となった俺の前で、勝者の歴史はただの落書きに過ぎない。
俺の庭において、支配を正義と呼び、他者の魂を去勢しようとする不遜な者には、ただ永劫に続く「自らの抹消」こそが相応しい。
著者の完結済代表作はこちら
「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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