次元の境界、あるいは神の産声
天界の座さえも『庭の掃除係』に割り当てた俺の平穏は、突如として現れた「空の亀裂」によって破られた。
この世界の法が、外部からの巨大な圧力によって歪み、軋んでいる。
「……主よ。あれは、神々ですら踏み込めぬ『外宇宙』の門でございます」
エルゼが鋭い視線を空の裂け目に向ける。
そこから這い出してきたのは、これまで対峙した魔王や神々とは比較にならない、禍々しくも巨大な「概念の塊」だった。
『……生命の……源泉……見つけたぞ……』
それは、幾千もの世界を食い荒らし、すべての命を枯渇させてきた『次元喰らいの邪神』。
奴は、俺から溢れ出す無限の生命エネルギーを嗅ぎつけ、別の宇宙から次元を食い破ってやってきたのだ。
だが、奴がこの世界に一歩踏み出した瞬間、その異形の身体が激しく痙攣した。
「――お前、入る場所を間違えたな」
俺が指を一振りする。
俺の庭であるこの世界は、今や俺の生命力によって密度が極限まで高められた『高重力生命域』と化している。
$$Environmental \ Pressure: \text{Infinite Life (10,000\%)}$$
$$Target \ Status: \text{Overload / Root Absorption}$$
『な、なんだ……!? この世界の「空気」が、我の霊格を上書きしていく!? 吸い込むだけで、我という存在が「肥料」へと変質していく……ッ!』
邪神は驚愕した。
他世界では捕食者であった奴も、俺という根源の前では、単なる『未加工の有機資材』に過ぎない。
奴が奪ってきた数多の世界の絶望すら、俺の生命オーラに触れた瞬間に「豊かな腐葉土」へと強制変換されていく。
「主よ。この者、なかなか質の良い土になりそうですね。東方の砂漠化した領地の基盤に再利用いたしますか?」
「ああ。……少し、騒がしすぎた罰だ」
俺が軽く拳を握ると、空を覆っていた巨大な邪神の姿が、一瞬にして凝縮され、一粒の『黄金の種』へと姿を変えた。
次元を越える脅威すら、俺にとっては庭の土壌を改良するための「肥料」を補充する手間に過ぎない。
俺は空の亀裂を、自らの魔力で縫い合わせるように塞いだ。
その向こう側で、俺の力を目撃した他の世界の支配者たちが、恐怖で次元の向こう側へと逃げ惑う気配がした。
「……これで、少しは静かになるだろう」
俺はエルゼにその『黄金の種』を手渡し、玉座へと戻った。
かつてのパーティが俺を「寿命切れ」と嘲笑っていたあの頃、彼らが捨てたのが、全宇宙の運命を指先一つで剪定する『庭師』だったとは、今や誰も想像すらできないだろう。
俺の歩みは、もはや一つの宇宙に収まるものではない。
俺が呼吸するたび、新たな宇宙が芽生え、俺が歩くたび、絶望が希望へと塗り替えられる。
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「シャルンホルストとグナイゼナウ」
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