表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

観測開始

砦の中央、拳志とガルドの前に黒装束の兵がずらりと立ちはだかっていた。


「──数が多すぎるな」


ガルドが苦く唸る。拳志も唇を歪め、歯を鳴らした。


「チッ……こっちは2人しかおらんのに、どんだけ湧いてくるねん……!」


周囲を囲む黒装束の兵たちは、まるで感情のない人形のように、無言で刃を構えて迫ってくる。

その向こう、砦の屋根上。黒いフードの男が仮面越しに冷ややかな視線を投げ下ろしていた。


「排除、継続」


その一言で、兵たちが一斉に動く。


「来るぞ!!」


ガルドの叫びと同時に、再び戦闘が始まった。


拳志は拳で、ガルドは爪で、次々に敵をなぎ倒す。

だが、いくら倒しても数は減らない。倒れた傀儡の身体がピクリとも動かない一方で、次から次へと新たな兵が現れては包囲を狭めてくる。


「ラチがあかん……!」


拳志が一瞬、後退しながらガルドに叫んだ。


「おい、ガルド!」


「なんだ!」


「本丸を狙え! 上で操っとるヤツを!」


ガルドは咄嗟に屋根の上を見上げる。

仮面の男は淡々と魔力を発し続けていた。


「俺が行ったらお前が──!」


「ええから行け!! 道は俺が作ったる!!」


拳志の怒鳴り声が、砦中に響き渡った。


ガルドが迷いを振り払うように叫んだ。


「……借りるぞ、道!」


その言葉とともに、ガルドは地を蹴った。


拳志はすでに、敵の群れに正面から飛び込んでいた。


「オラァァ!! こっち来いッ!!」


咆哮とともに、拳志が左右から迫る兵を殴り飛ばす。

振るった拳が、鎧ごと敵を吹き飛ばし、砦の柱を叩き割る。


「どいつもこいつも、まとめてこいやぁあ!!」


拳志は暴れる獣のように、あえて敵の中央へと突っ込んでいく。

敵兵たちがガルドに向けていた視線が、次第に拳志へと集中していく。


「この先は通さん……!」


敵の進路を塞ぐように、拳志が両腕を広げて立ちふさがる。


周囲の敵が一斉に襲いかかり、拳志の体はついに地面に叩きつけられた。土煙が舞い上がり、骨が軋む音が響く。


「……っがはっ……」


だが、拳志は倒れたままでは終わらない。


地を踏みしめ、軋む腕に力を込める。


「へばってられるか……!」


血が滲む唇を吊り上げるように笑みを浮かべ、拳志はふらつきながらも立ち上がる。


「ガルドが通る道は……俺が繋ぐ……!」


再び拳を構え、今度は踏み込むように前へ──


だが、彼の身体にも確実に疲労は積もりつつあった。


「……クソ……しんどい……でも、止まったら終いや……!」


歯を食いしばり、息を吐くたびに立ち止まりそうになる足を前へ。


「立て……動け……まだ終われるか……!」


拳志は自分に言い聞かせるように、血まみれの拳をもう一度、振るい上げる。


その姿は、まるで一人で戦場を裂く獣だった。


その間に──


ガルドは屋根の端まで駆け上がり、操る者と対峙していた。


「……お前が、今回の誘拐事件の元凶か」


「抵抗、無意味。排除開始」


仮面の男が片手を上げると、空間がきしむ。

無数の魔法陣が空中に展開され、無数の魔弾がガルドを襲った。


「チッ、うっとうしい!」


ガルドが跳ねる。足元を光の魔弾がえぐり、背後からも追尾弾が殺到する。

鋭い閃光の雨を、ガルドは本能で読み、紙一重で回避する。


「回避パターン──解析完了。次段階へ移行」


仮面の男は、感情のない声で淡々と告げた。


再び魔法陣が増幅。空中に巨大な矢のような術式が現れ、雷光を帯びてガルドに襲いかかる。


「──くっそ!!」


咄嗟に防御するが、衝撃が全身を貫き、屋根瓦を削りながら数メートル吹き飛ばされた。

肩口から血が吹き出し、皮膚が焼け爛れていた。


「一撃……でこの威力か……!」


ガルドがよろめきながらも、屋根に爪を突き立てて踏みとどまる。


(こいつ……ただの操者じゃねぇ。個としても、強ぇ……!)


肩を焼かれた痛みが走る。

仮面の奥の無機質な瞳と、静かに睨み合う。


ガルドはふと、砦の中央で一人、敵の大軍と拳を交える男に目を向けた。


(……それでも、あいつの拳ほどじゃねえ)


瞬き一つ。再び、前を見据える。


「……やるしかねぇだろ、こんなもんよ」


「お前らだけは許さねぇ!!」


ガルドの身体が獣のようにしなり、爪が煌めく。


「うぉおおおッ!!」


真横からの回り込み。仮面の男の背後に回り、横薙ぎに斬りつける──が、空間が滑る。


「重力魔術……!? 攻撃が届かねぇ!?」


男の周囲には、目に見えないバリアのような力場が張られていた。

ガルドの攻撃は寸前で軌道を逸らされ、皮膚を掠めるだけに終わる。


「防御領域、正常稼働。反撃、開始」



風が止まった。世界の音が、一瞬で消えた。

仮面の奥で、誰かの声が重なった気がした。──『観測開始。外れた因子、確認』


次の瞬間、砦そのものがうねりを上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ