98発目 彼女は少しずつ少しずつ
がはっ!
今日だけで10発くらった。私は滑り込むようにゴールを抜けた。時間も最初のころより遅くなってる。完全に体がついてきてない。
そして、分かったことがあった。銃弾に何発当たったところでスタン弾だから死にはしない。そしてゴールすれば問題ない。しかし、スタン弾をくらった場所は筋肉にダメージがいってるらしく、次の日の負荷になる。
今日だけで四肢に8発。体にも2発くらった。これが明日の朝にダメージとなってくるのか。
「この特訓のめんどくささがわかったみたいだな。当たれば次の日の負荷になる。そして、その負荷は3日は抜けない。そして、重くなった体はうまく動いてくれず次の日はさらにダメージを受ける。最悪のスパイラルだろ」
つまり、1発ぐらいならくらっても大丈夫じゃない。ゴールできても1発が致命傷になる。ここは、本物の実戦と同じだった。撃たれればその傷は残る。死ななくても。
「さて、さすがに今日は……」
「見せなさい。」
「……今日のはぶっちゃけ、おまえは見なくていいやつだ。それでも見るのか?」
見なくていい?
「なんでもいいから見せなさい」
大和は無言のままプロジェクターを起動させた。
『あんたなんかにやられると思った!?』
画面に映ったのはどこかの一室。窓から見える景色は見晴らしがいいのでおそらく高層の建物。そこには2人の人間がいた。
1人は女性は金髪の長髪で身長は170近くある。拳銃を構えてる先にはもう1人、覆面の人間。身長的にはかなり小さい。まだ子供だろう。
そして、この場所や女性を私は知っていた。
「かあ、さま?」
画面に映ってるのは母様。そして、ここは私の前住んでたマンションに間違いない。
「そうだ。これはお前の過去だ」
「なんでこんなものを!?」
私が見るのに、なぜ私の過去を見せるの!?
「これ自体、あのメンバー全員で見る予定だったんだ」
大和が一時停止を押して話し始める。
「情報収集をする段階で俺はメンバーの過去を知ってしまった。本来なら俺が心の中に閉まっておけばよかったんだが、国連警察との戦闘激化。さらに、俺らがマークされたことを考えると、俺だけが核心を知っているわけにはいかなくなったんだ」
「核心?」
意味を聞きたかったが、大和は教えてくれそうになかったので質問をやめておく。
「これ以上見るか?」
「……ここには私の知らないことがはいってるかもしれないわ。だから、流して」
そういうと、大和は再生を押した。
『子供を襲う趣味はないわ。逃げなさい。そうすればなかったことにしてあげる』
母様の拳銃は覆面の子供から動かなかった。こんな絶体絶命の状況にもかかわらず、子供は無表情のまま母様を見たまま動かない。
『……しょうがないわね。すぐに警察に……』
パリーン!
そう言って携帯電話を取り出した母様の後ろの窓が割れた。そして、そこから入ってきたのは屈強な男。そして、そいつは拳銃を撃たれる前に頭を母様の撃ち抜いた。
「っ!」
そして、すぐに2人は窓から逃げ出した。
「この後はお前のほうが知ってるはずだ。騒ぎを聞きつけた近所の人間が様子を見に来て警察に通報。しかし、犯人は見つからなかった」
そう。そして、母様は即死。私は母様を守ってくれなかった父様を恨んで、そして自分でどうにかしたくて強くなった。いや、なった気でいた。
しかし、本当に強くなんてなってなかった。結局は井の中の蛙。私より強い人間なんていくらでもいた。
だから、今度こそ私は本当の強さを見つけてみせる。
「寝るわ」
「ああ。残り2日だ。クリアしてみせろよ」
「当然よ」
本当の強さを絶対に手に入れてみせる。