96発目 彼の心はまだとらえられている
このごろ、ちょっと表現が過激化してきたので残酷な描写あり入れます。
「このっ!」
バンッ!
銃弾が自走車両を撃ち抜いた。しかし、今日はすでに5発くらってる。体力的には大丈夫だが、食らいすぎて集中力が弱くなると共感覚が追いつかなくなる。
「絶対に、身につける!」
パンッ!
なんとか私は今日も帰ってこれた。しかし、タイムは最初のころなみに遅い。
「どうする?ご褒美は明日でも……」
「今日で十分よ!」
晩飯を食べながら見ようとする。みんなの過去は思った以上に重かった。あれを朝に見せられたら、確実に集中力を欠く。
「わかった。」
大和は晩御飯を用意するとすぐに映像をつけた。
『どうしてだよ!』
画面に突然現れたのはオレンジ髪の少年。望だ。前の試験で見たときとそんなに変化はないみたいだし、たぶんまだ小1、もしくはそれより前だろう。表情は怒り以外の感情が見えないくらいになっている。
『うるさいぞ。』
それを聞いているのは壮年の男性。髪は沖川と同じオレンジ。しかし、顔は望の軽いイメージとは違い、厳格そうな顔をしている。体つきもかなりがっしりしている。
「あれは?」
「沖川の親父さんだ。」
髪の色からそうかもしれないと思ったが、髪の色以外はほとんど似てない。どうやら、望は母親似らしい。
『なんで母さんをあんなにした奴らを追わないんだよ!?』
『病院では静かにしなさい。』
望たちの話しているところは真っ白な廊下。看護師や医者がたまに通ることから何となくわかっていたけど、やっぱり病院だ。規模はかなりでかいと思う。
『父さんはこのまま黙って見過ごす気なのかよ!?』
『子供が大人の事情に口出しするんじゃない。』
『なんだよ!父さんは何もできないんじゃないか!警視総監なんてただの肩書だけじゃないか!』
警視総監?
「沖川の父親は若くして警視総監まで上り詰めたエリートだ。前の京都で取り調べが異常に短かったろ。あれは沖川の親父さんが便宜を図ってくれたかららしい。」
なるほど。抄華はどうしようもなかったけど、私たちだけでも開放されたのはそういうわけか。
『国民を守るためだ。』
『国民を守るため?……家族も守れないのに国民を守る?』
沖川の表情が怒りからまるで小馬鹿にしたような表情に変わった。
『父さんは馬鹿だよ。あり得ないほどの馬鹿だ。国民よりも少ない家族を守れないのに国民を守る?』
『実の父親に馬鹿とは……』
『大丈夫だよ、父さん。父さんは何もしなくていい。犯人は、僕がちゃんと殺してあげるから。』
バチンッ!
望ははたかれた。それで軽く空を飛び地面にたたきつけられた。
『復讐のために殺すなどと言うな!』
『じゃあ、父さんが先に捕まえて保護すればいいよ。僕が殺すのが先か、父さんが捕まえるのが先か。競争だね。』
望はそう言って病室の中に入った。そして、そこで寝ていたのは髪の色が青色なところ以外は望にそっくりな女性。言われなくてもわかった。これが沖川の母親だ。
『大丈夫だよ、母さん。僕が母さんの仇をとってあげる。あんな何もしようとしない男と僕は違うよ。絶対に見つけて、殺してあげるからね。』
そこで映像が途切れた。
「……」
「これが沖川の過去だ。」
「望の母親はなんでこうなったの?」
この映像からではなんでこうなったのか分からない。わかったのは、何者かによって望の母親があんな状態にされたということだけだ。
「謎の侵入者に撃たれてだ。そのせいで沖川の母親は植物人間状態。今も意識を回復してはいない。」
「望はまだ……」
「ああ。犯人を見つけて殺そうとしている。」
「……」
私は無言でベッドに入った。自分みたいなのは私だけじゃなかった。そう思いながら。